ファンタジーDay★｜リアクション

ファンタジーDay★

～旧市街地にて～

「ふぅ～～～～～」
　呼吸を整えて気を練り上げ、体全体に巡らせて身体を強化し、戦闘モードに切り替える。
「いくわよぉ～～～！」
　裂帛の気合いと共に回し蹴りを放つ、尾鎌蛇那伊。
　青色のスライムが勢いよく吹き飛び、電柱に当たる。
「あら、こちらからも？」
　こちらに這ってくるスライム。
　なぎ払うような前掃腿ではじき飛ばす。
「ふぅ……まったく可愛くないぶよぶよだわ～」
　可愛い物をこよなく愛する蛇那伊だったが……どうやらスライムはお気に召さなかったようだ。―ここいらのスライムは一掃出来たみたいだけど……問題の原因をさがさなくっちゃね―

「あらあら……大変なことになっていますわ」
　おっとりとした声音でレティシア・ル・テリエが呟く。
　黄色や青色のスライムが道路に張り付き、街路樹からぶら下がっている。
　怯えた犬がキャンキャンと吠えている。

　金糸銀糸で縁取られた白のローブをまとい、華美に装飾されたマジックロッドを持っているレティシア。
　朝日に輝く金色の髪と相まって、高貴さを醸し出している。
　その金色の髪を掻き上げ、耳に触れる。
　白く透き通るような肌と長く尖った耳その姿はおとぎ話に出てくる、エルフそのものだった。

―色とりどりのスライムといい、私の体に起こった変化といい……これは神魂の影響なのかしら……―

「ん、そこにいるのはレティシアさんじゃねべか？　変った格好してるべさ」
　ほわんとした声が聞こえる。
「え？　あらら、お侍さんはどちら様ですか？」
　黒漆の甲冑に身を包んだ人物が立っている。兜の額部分には、大きな金色の細い月形……戦国一の伊達男の甲冑だ。
「あはは、オラだっちゃよ！」
　顔を隠している面頬を外すと、鈴野海斗の童顔が現れた。
「あら、鈴野さんじゃありませんか。変った格好をされてますね～」
「いやいや、レテシィアさんも凄いっちゃよ？」
　ほんわかと笑う二人。こんな状況でもマイペースだ。

「鈴野さん、この街の状態ですけど……」
「うん、オラも急にこんなになって、驚いてるっちゃよ。今、そこのお二人さんと一緒に、街を探索してるんだけど……ってあれ、落神さん、マウルさんは？」

　さっきまでそこにいたはずのマウル・赤城・スティックの姿は無く、落神れみがたたずんでいるだけだった。
「マウルさんは偵察に出掛けましたわ。なんでも高いところから見てみれば、状況がわかるとかで」
　ガンベルトには先込め式のフリントロック・ピストル。
　西部劇から飛び出してきたような乗馬服に身を包んでいる。
「さて、この異常事態ですけど……電気を使う物は一切駄目みたいですね」
　胸に手を当てて話すれみ。
　豊満な胸がぎゅっと強調される。
「そ、そうだっちゃね！　オマケに格好も変っちゃってるし……」
―し、刺激的だっちゃ～……―
　頬を染めて目を反らす海斗。
　その先に立つ、大柄な男性が目に入った。

「あらあらあら、海斗ちゃんじゃない！　相変らず、プリティ～～！　あたしもお仲間にいれてちょーだい★」
くねくねと体をくねらせながら、尾鎌が近づいてくる。
「んな！　……なんていうか、個性的な方ですわね」
　タラリと汗を垂らすれみ。
「あらあら、鈴野さん、モテますね～～」
くすくすと笑うレティシア。
「あ、あはは……尾鎌さん、無事だったちゃね。うん、纏まって行動した方がよさそうだっちゃ」

　しばらくして偵察から帰って来たマウルから報告を受ける四人。
「火の見櫓や屋根の上から見てみたが……結構愉快なことになってるぜ」
　こざっぱりとした、ボタンダウンのシャツと綿のズボン。旅人の様な服装に身を包んだマウル。
「街のあちらこちらにスライムが居やがる。今のところデカイ損害は出てないようだが、かといって安全って訳でも無い」
　マウルの話によると、スライムには色、形状によって行動パターン、性格などが異なるとの事らしい。
　例えば、赤は打撃による攻撃を好み、青はやや知性を持つ。
　ピンクは酸や熱などによる攻撃をし、黄色はトリッキーな行動をする……といった感じだ。

「それにしても、この街の住人はみんなすげーよな。こんなになっても、やってる店も有るし……慣れてんのかね、あはは」
　爽やかに笑うマウル。

「もう少し状況をさぐりましょう！　あ、マウルさん、今度は一緒に行動しますよ！」
　ピッと指を立てて言い放つれみ。
「情報を収集し状況を把握。そのあと、敵を倒していけば、きっと元の世界に戻れるはずです」

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