●水曜：夜

　八神 修は、後木 真央にも手伝ってもらおうとサンマさんのことを話した。
　話を聞いた真央は、サンマさんが関わっていると聞き興味津々。
「土曜にアイドルとステージなのだ？　さすがサンマさん、かっくいー！　ねこったーのサンマさん襲撃報は本当だったのだ！」
「そんな話があるのか」
　ねこったーで『サンマさん』を検索すると、ももシロファンに襲撃された、嫉妬されている等、様々なツイートが。
「サンマさんは、中身がみっちりまっちり生サンマなのは子供だって知ってるのだ。サンマさんはサンマの集合体的守護神とか、そーゆー存在なのだ。夕方におネコさまや主婦から胃袋誘惑殺意ビームを浴びちゃうのは仕方ないのだ、運命なのだ」
　真央にとっての犯人像は、腹ペコな野良猫か、夕飯のおかずに悩む主婦のようだ。
「手伝ってくれるな？」
「もちろんなのだ！　月詠ちゃんにも、お手伝いをお願いするのだ！」

　その後、真央は月詠に修から聞いた話をした。
「サンマ氏が狙われている？　猫に、ではなく？」
「修ちゃんの話だと、違うみたいなのだ」
「着ぐるみとはいえ、サンマはどうあがいても魚。ヒエラスキーが低い位置にあるので、猫や鳥に襲われるのは致し方ないと思うが」
　ももシロライブに出演すると聞いたので、ファン、あるいはももシロの誰かに狙われているのかと推理。
「何故、ももシロとサンマさんがコラボすることに？　サンマ氏が寝子島観光大使キャラクターだからか？」
「多分、そうなのだ。調査は明日の夕方からなのだ。お手伝い、お願いするのだ」
「わかった」
　人手がいるな、と、星ヶ丘寮所属のメイドの檜扇 舞華にも手伝ってもらうことに。
「土曜日にお仕事ですか？　月詠さんの御指名でしたら、断るわけにはいきませんね」
「ももシロのライブに出演する、サンマさんに関するものなんだけど」
　ライブに行くために休むつもりであったが、それに関するものと聞くなり、舞華は二つ返事でＯＫした。
「土曜は特別業務ですね」
「そういうことだ、よろしく頼むよ」

　サンマさんが依頼した鋭い視線を送る人物の調査をするには、ある程度の協力者が必要だ。
　そう判断した芽守 健作は、知り合いに声をかけた。真っ先に連絡したのは、情報のやり取りをしている間柄のジニー・劉。
　裏で情報屋の仕事をしているジニーの情報網は、調査の役に立つだろう。
「芽守か。何か情報がいるのか？」
「それもありますが、手伝ってもらいたいことがありまして」
　サンマさんが鋭い視線を送る何者かに命を狙われている、ももシロのライブに出演すること等、事細かく説明した。
「サンマさんのストーカーね。被害妄想じゃねーのか？」
　んな物好きがいるたあ思えねえ、と笑うジニーだったが、世話になっている健作が言うのなら本当のことかもしれないと協力に応じた。
「あんたの頼みだ。だりーが、手伝ってやるよ」
　成功報酬にも惹かれるし、と言うのは聞こえないようボソリ。
「ありがとうございます。ひとつお訊ねしますが、大浄神魂党、というのをご存知でしょうか？」
「聞いたことないな。そいつも調べるのか？」
「それもお願いしたいのですが、今は、サンマさんの依頼が先です。調査ですが、景貴にも手伝ってもらいますのでサポートをお願いします」
「あいよ。何かわかったら連絡してくれ。ケーキ屋によろしくと、チョコチップマフィン食わせろと伝えてくれ」
　電話を切ろうとしたが、確認したいことが。
「それ、シスターにも手伝ってもらうのか？」
「シスター・ホーエンハイムですか？　協力してもらうつもりですが」
「いや、何でもない。依頼の主旨は、あんたが説明してくれ。じゃあな」
　苦手意識もあり、ジニーはシスターに係わりたくなかった。
　ジニーとの交渉後、健作は荒井 景貴に連絡しようとしたが、彼がオーナー兼店長の洋菓子店『Raton』はまだ営業時間中だ。

　次に連絡したのは、星ヶ丘教会でシスターを務めるゼシカ・ホーエンハイム。
「夜分遅くに申し訳ありません。手伝ってほしいことがあってお電話したのですが、お話しても大丈夫でしょうか」
「ええ、大丈夫ですわ」
　心優しいシスターが引き受けてくれるだろうかと心配だったが、手伝いに応じてくれた。
「ストーカーとは、穏やかではありませんね。そのような方は、シスターの使命に賭して改心させねばなりません。神の慈悲を説かなければ。暗殺はいけないことですわ」
「まだ、そういう人物と断定されたわけでは……」
「そうであっても、殺生は神がお許しになりません！　私も、調査のお手伝いをします」
　教会でのお勤めがあるので協力するのは夜間になるが、サンマさんを救うべく、ゼシカも調査することに。
「ご協力、感謝します。では、明日の夕方からお願いします」
「わかりました。助手さんに神のご加護があらんことを」
　調査に関わるだろう蜘蛛さんにも、と、ジニーにもお祈りを。
「へくしっ！　誰か噂してるのか？」
　それを察知したかのように、ジニーはくしゃみをした。

　そろそろ連絡しても大丈夫だろうと、景貴に連絡することに。
「遅くに悪い、大丈夫か？」
「ああ。健作が電話してくるということは、調査を手伝ってほしいんだね」
「ボクだけじゃ解決に苦労しそうなんで、景貴にも手伝ってほしいんだ」
　実は……と、サンマさんが話してくれた依頼内容をすべて話した。
「うーん、サンマさんに鋭い視線を送る謎の人物かぁ……。他の着ぐるみキャラにライバル視されているとか、サンマさんに恋してるとか、かなぁ？」
　ぱっと思いつく人物像といえば、このようなものだろう。
「何はともあれ、人手がいるなら手伝うよ。劉さんも手伝うのかな？」
「彼も手伝ってくれるよ。調査に必要なものは、こっちで用意するから」
「わかった。土曜は臨時休業にしておくよ。１日くらい、休みにしても大丈夫だし」
「ありがとう。調査が無事終わったら、何か奢るよ」

　健作との話が終ったと同時に、景貴の従妹の宮島 メグが「いちごない？」と店にやって来た。
「そういうだろうと思って、メグちゃんの分、ちゃんと取ってあるよ」
「ありがとう。さっき、電話してたみたいだけど……」
「健作からだよ。サンマさんが関わる調査を手伝ってほしいって」
　それを聞くなり、メグは興味を示し、どんな調査か詳しく話してとせがむ。
　話すと、手伝うと言い出すに決まっているので話したくなかったが、ジニーと健作がついているから大丈夫だと調査内容を話した。
「殺気？　……さんまさんが秋の味覚だからじゃないのかな……」
「秋の味覚というのは早いんじゃないかな。何にせよ、サンマさんが危ないから何とかしないと」
「かげちゃんや、めもめもさんとなら、調査が楽しくなりそう。私もてつだうー」
　サンマさんがどうなるか、調査がどうなるかとワクワクするメグだった。