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ぎゃああ、バリッ、バリッ……というのは、映画の中でグチャロドロゾンビーがなにやら喰らう音ですが、映画館から南に二百メートルほどいった屋外でも、バリッ、バリッという音が立っていました。
でもこっちは明るく健康的なバリッ、バリッです。
ゾンビーたちは肉食で、野菜は多分お嫌いでしょう。だからまるで正反対。
滋養たっぷりに育った小松菜を、
小松 菜摘
がおいしく食する音なのでした。
ここは緑地公園、都会のオアシスといったところです。街の喧騒が嘘のよう、静かでおだやかな場所なのでした。散歩中の親子連れ、木の下のベンチで憩うお年寄り、レジャーシートをひろげお弁当を食べる姿も見られます。
そんななかベンチの一つに両脚を揃えて腰を下ろし、菜摘は人を待っているのです。
――龘ヶ原さん……。
うっとりと、眼を細めて菜摘は、
龘ヶ原 鑨儱郎
のことを想いました。
同じ寝子島高校の生徒ですけれど、彼女が鑨儱郎と出会ったのは学校ではなく街中、運命的な偶然が二人を引き合わせたのです。
そのとき、
「ああ……ひもじい……不幸だ……」
シェイクスピア悲劇の台詞のような嘆きとともに、まさに息も絶えそうな様子で鑨儱郎は街をさまよっていました。行き倒れ寸前と言っても過言ではありません。黒一色のシャツとズボンに白い手袋という、なんともモノトーンな装いが不幸感を高めていました。
「ああ、これはいけません」
ちょうどそこに通りかかった菜摘が、いつも持ち歩いている元気の素、つまり小松菜を鑨儱郎に与えるたことで、彼女は息を吹き返したのでした。
やがて二人は寝子高の先輩後輩の間柄であることを知り、学校の内外で交流するような友誼を結ぶことになったのです。
鑨儱郎が小松菜を食べていた姿が、いまでもありありと思い出せる菜摘です。あんなに美味しそうに、嬉しそうに小松菜を食べてくれる人を、菜摘は他に知りません。
菜摘にとって小松菜は、計り知れぬ愛の対象であり、自分の分身のようなもの。
だから鑨儱郎は……どうして、あんなところで行き倒れそうになっていたのか、どうして、いつもあんなに白黒映画みたいな格好をしているのか、そしてどうして、すぐに『不幸』という言葉を使いたがるのか、などなど、よくわからないところは多々あるのですけれど……菜摘にとってはかけがえのない友達なのです。
回想に浸っていた菜摘が、はっと我に返りました。
「菜っ葉先輩」
鑨儱郎が姿を見せたのです。
やはり今日も黒ずくめ、そして手袋だけ鮮やかな純白、肌の白さもあいまって、どこか不思議な彼女の姿です。
といっても菜摘だって、そんじょそこらでは見かけない姿だから気になりません。死に装束みたいな白の和服ですが、ほんのり桃色がかっているのが女の子らしいといえば、らしい。けれど頭には白い鉄輪をはめ、丑の刻参り風ながらそこにはまるのはロウソクではなく小松菜、初対面の人ならまず間違いなく、ちょっとギョッとする扮装といえましょう。もっとも菜摘自身は、訊かれれば「これ、地元の観光大使の衣装なんです」と説明しているようですが。
「よく来て下さいました。今日は、小松菜ピクニックです」
にっこり笑って、菜摘はレジャーシートを広げました。このシートまで、オリジナルの小松菜模様だったりするのですから素晴らしい。
「うん」
鑨儱郎は、ちょこんとシートに座ります。
もともと、「日曜日に新作スイーツを食べない?」と誘ってくれたのは菜摘でした。実は鑨儱郎は、菜摘の名前すら覚えていないのです(だから呼び名はいつだって『菜っ葉先輩』です)けれど、いつも親切なこの人は本能的に好きでした。
「小松菜はですねー、色がとってもきれいだし加工がしやすいから、実はとってもスイーツ向けの食材なんですよ」
「うん」
菜摘が持参のバスケットを開けると、色とりどりの……いえ、ほとんど全部が緑色ですけれど……ともかく、おいしそうな焼き菓子の数々が姿を見せたのです。
「どうでしょうか? 小松菜シフォンとマフィンを作ってみたのですが」
「うん。うん」
こくこくと鑨儱郎はうなずきました。
「今回のお料理はどれも自信作なんですよ。私は好きなのですが小松菜の青臭さが苦手な方もいるようなので、抹茶のようにならないかと試行錯誤したんです。もう少し小松菜そのままの味を生かしたいのですがそうなるとやはり苦手な方も出てきてしまいますよね?」
立て板に水。小松菜について語るときの菜摘はとっても雄弁です。
ところがこの菜摘のお言葉も、鑨儱郎にきちんと届いてはいませんでした。
はっきり申し上げて鑨儱郎の耳には、上記発言はこの程度にしか聞こえていないのです。
「今回のお料理…………ですよ。……ですが……かと……です。もう少し……ですが…………やはり…………よね?」
つまり、ほとんど聞き流しているということ。
でも鑨儱郎は菜っ葉先輩が、一生懸命話していることはわかっていました。楽しそうということも理解できました。だから楽しそうにうなずきます。
「うん」
そしてお菓子をいただきます。ぱくぱくと。
とっても美味しい、それは本当です。いつも鑨儱郎の中にある不幸な気持ちが、溶けて消えていくような気がします。
「あ、おかわりいりますか? ふふ、どんどん食べてくださいね」
菜摘はかいがいしく世話を焼きながら、やはり小松菜についてたくさんの知識、自分の想い、その両方を熱く熱く語り続けました。
小松菜について読者の皆さんに学んでもらうのが本シナリオの本意はありませんので、菜摘にはお気の毒ですが、以下、鑨儱郎視点でお送りいたします。
「さらに……で……な……だから………」
「うん」
「小松菜スイーツ食べま」
「うん」(ここの返事は早い!)
「で小松菜は……で……で……」
「ん」
ぱくぱく、食べています。
「わかります!? で、小松菜は……」
「ん」
くっちゃくっちゃ、食べています。
「小松菜は…………小松菜は……小松菜は」
「うん」
「あ、おかわりいりま」
「うん」(ここの返事もとっても早いのです!)
そしてやっぱり、くっちゃくっちゃ、食べています。
やがて鑨儱郎は両手をついて、ふうとリラックスしていました。
満腹です。そんな鑨儱郎の食べっぷりに眼を細めていた菜摘は、どうぞ、と小松菜茶を魔法瓶から注ぎました。これは、小松菜やほうれん草を学校の屋上で天日干しにして彼女が作った健康茶です。
「このお茶、なかなか上手くいったんです。市街地の自室のベランダよりも学校の屋上の方が空気がきれいですし、あちらで作ってよかったです。うふふ」
このように菜摘は笑ったのですが、例によって鑨儱郎の耳には、
「この……です。市街地………よかったです。うふふ」
と、超簡略化されたものしか届きませんでした。
けれど鑨儱郎も笑顔です。幸せだからです。いいじゃあないですか、それで。ね?
自作の小松菜歌をほがらかに謡う菜摘を眺めつつ、鑨儱郎は思いました。
――かわいそうにに、先輩。
と。
どちらが正しい、という話ではないのですが、鑨儱郎にとって菜っ葉先輩は、とても気の毒な人なのでした。口を開けば小松菜、小松菜、それ以外の話題が……いや、生きていく上での興味の対象すら、彼女にはまるで感じられません。
自分だって幸せな半生ではありませんでしたが、きっとこの人にも、壮絶なまでに不幸な過去があるに違いないと思えるのです。
――だからこんな狂信じみた妄想にとりつかれて……。
許されるのであれば、菜っ葉先輩を抱きしめて、「もう大丈夫」だと言ってあげたい。あなたの不幸は、もう終わったのですと言ってあげたい。
けれどそうするかわりに、鑨儱郎は菜摘の頭に手を当てました。
このとき鑨儱郎は手袋を外しています。
「龘ヶ原さん?」
「しーっ」
――あたいがしっかりしないと。
鑨儱郎は己が『ろっこん』を解き放ちました。
それは素手で頭に触れた相手の、脳内麻薬分泌を促進し……多幸感をもたらす能力でした。
効果はてきめんでした。
菜摘はたちまち、夢見るような表情になったのです。
「あら……? なんだか小松菜に包まれるような……それとも私が小松菜……?」
緑色の小松菜の海を、泳いでいるような気持ち、小松菜と一体化したような快感が、菜摘の頭を満たしています。
「なんだか素敵な気分になってきました……」
恍惚の表情で半ば口を開けたまま、菜摘の心は夢幻と現実のはざまを行き交うのです。
いつまでもこうしていたい――菜摘は思いました。
いつまでもこうしてあげたい――鑨儱郎も思いました。
間違いなく、Sweetnessはこの場所にありました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2013年09月10日
参加申し込みの期限
2013年09月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2013年09月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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