せんせいといっしょ：鷲尾先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：鷲尾先生編

●二次元恋愛少年の悩み

　そんな八十八旗信彦と入れ替わるように保健室にやって来たのは、自分の顔を覚えてもらい、鷲尾先生との恋愛フラグを立てたいと思っている佐久間堂鉄。
（一目見たときから好きでした！　と告白しても「若いわね」と言われ、軽くいなされて終わりです）
　リアル恋愛は、恋愛シミュレーションゲームにようにうまくいかない。エロゲーをこよなく愛する堂鉄は、そのことを十分わかっている。
（教師キャラを堕とすには、自分を磨き、告白しても攻略できる可能性は極めて低いです。……となると、相手の弱みを握るか、実力行使の２択しかありません）
　鷲尾先生が複数に生徒と関係を持っている女教師であるようなら、堂鉄にも可能性がある。
　だが、鷲尾先生はそのようなタイプではないので、地道に、まずは知り合いから始めるしかないと考えた。
（長期計画になりそうですが、３年生の修学旅行＆卒業式で告白するメインイベントとして目標を見立てるしかありません。鷲尾先生と両想いになるには、それくらいの月日をかけないと成功しません！）
　恋愛シミュレーションような甘い展開のエンディングを想像しながら、これも鷲尾先生と親密になるため、と恋愛相談を持ちかける。

「失礼します。相談に乗ってくれるというので、お言葉に甘えて相談に来ました」
「キミの相談は、どのようなものかしら？」
「恋愛相談なんですけど、乗ってくれますか？」
　それは、あくまでも建前。
　真の目的は、鷲尾先生とのフラグを立て、告白イベントを発生させ、自分の思いを伝えることだ。
　鷲尾先生にドキドキしつつ、相手の名前を明かさず、年上の女性が想い人であること、その相手が不沈であることを告げた。
「キミ、年上の女性が好みなのね。ガードが堅い女性と考えて良いのかしら？」
「まあ、そんなところです」
　目の前にいるあなたです！　とは、本人を前にして言えず。
「想いを伝えるには、相当手強い相手のようね。告白するのは、かなり難しいんじゃないのかしら？　まずは、その人がどんな人か知ることから始めたらどうかしら」
　だから、目の前のあなたなんです！　と、心の中で叫ぶ。

　このままでは埒が明かないので、一枚一枚、要塞の外壁を砲撃で撃ち崩していくしかないと思う堂鉄だが、鷲尾先生相手では、その方法は通用しないだろう。
（だとしたら、一発で中枢部分にダメージの行くような痺れるアプローチしかありません！）
　形勢逆転ホームランのような展開は攻略困難なキャラクターとのフラグ立て並み、いや、それ以上に難しい。
「わかりました。まずは、先生の仰るとおり、相手がどんな人物か見極めます。話は変わりますが、不沈要塞のような人を一発で痺れさせるアプローチ方法を知りませんか？　知っていたら、是非、教えてください！」
「そういうのはちょっと……。恋愛に詳しい人に聞いてみてくれないかしら？　お役に立てなくてごめんなさい……」
　恋愛ゲームとリアル恋愛を混同しているのがわかるので、鷲尾先生も返答に困る。
（私、ゲームは好きだけど、恋愛ものは対象外なのよね……）