せんせいといっしょ：鷲尾先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：鷲尾先生編

●方向性を変えるべき？

　オリガ・ドラグノーヴァが鷲尾先生と話している時、貧弱すぎる身体ゆえ、いつもの如く些細なことで負傷した屍骸が保健室へ。
　痛めた足を診てもらうついでに、良い機会だと、最近の悩み事を鷲尾先生に相談することに。
「先生、俺の足、診てもらえませんかねえ」
　痩せ細った体、血色の悪い肌。常に寝不足気味なので、目の下には深いクマ。
　不健康男児な骸を見て、鷲尾先生は、今にも倒れてしまいそうだと心配に。
（こう思うのは悪いような気がするけど、この子、シューティングゲームに出てくるゾンビみたい……）
　不謹慎だとわかっていても、そう思わずにはいられない。
　参考書片手にウトウトしていた八神修だったが、鷲尾先生と骸の話し声で目が覚めた。
「悩み相談……か。誰かがいると話し辛いだろうから、静かにしているか」
　気付かれないよう、誰かがカーテンを開け、ベッドを覗いたらバツが悪いと苦笑しながら、参考書を読む。

「俺、そろそろゾンビキャラは潮時かなぁって思うんすよね」
　足の手当てをしてもらいながら、骸は相談を持ちかけた。
　痩せ細った足に触れ、痛い箇所を確認した鷲尾先生はシップを貼り、剥がれないようテープで固定。
「自分のキャラに限界を感じたの？」
「いやぁ、俺って、見た目的にはなかなかインパクトつえー方だと思うんすけど。しかしまあ、今年入って来た１年は濃いーのばっかってーか、個性的なのばっかっつーか」
　このままでは後輩にキャラ的に食われてしまうと不安がっているが、外見のインパクトでは、骸に敵う１年はいないだろう。
「先輩として、立つ瀬がねぇというか、なんつーか。外面的な個性はそこそこだとしても、こっから先は、内面的なインパクトってーのが必要になってくるかなって」
　不健康な外見に頼ることを捨て『脱・ゾンビ』を果たし、新天地的に新しいキャラを目指した方が良いんじゃないかと思い始めたようだ。
「鷲尾先生よ、どう思います？　俺ぁ、どうしたらいいんでしょうねえ？」　
「そうねえ……」
　これは、すぐに答えるのは難しい悩みである。

　骸の全身をじっくり見て、どこか良い箇所が無いか、鷲尾先生は、じっくりと見定める。
　不健康そのものな骸だが、ひとつだけ健康そうな部分があった。
「キミ、歯、すごく綺麗ね」
「毎日磨いているからねえ」
「感心ね。新天地を目指したいというのなら、歯の綺麗さを活かした爽やか系に転身してみるのはどう？」
　そうアドバイスするものの、私生活では食事を怠り気味、休日は部屋に篭りがち。歩く時は猫背。
　非健康的な生活を改めるべく、規則正しく健康的に過ごそうとすれば体調を崩し、寝込んでしまう不思議な体質。
　そんな彼が健康的な身体になるのは、かなりの時間を要するだろう。
「外見は、キミの心がけと努力次第で改善するしかないとしか言えないけど、その歯を活かして爽やかをアピールすれば、少しはイメージが変わると私は思うの」
「外見を変えなきゃ、新キャラになれないもんですかねえ？」
　良い案だと思ったのだが、落ち込んでしまったようなので逆効果だったかと、鷲尾先生は反省した。
「ごめんなさい、落ち込ませてしまったようね。でも、人間、すぐに変わるものではないわ。少しずつでも良いから、健康になるよう努力してみたら？」
「先生が謝ることないっすよ」
　新天地に達するのは、人一倍、いや、百倍以上の努力を要する苦行と悟った骸は、今のままでいたほうが自分らしいと考え直した。
「健康になるには、睡眠を十分にとること。心身をリラックスさせる効果があるカモミールティーを飲むと良く眠れるようになるから、試してみることを勧めるわ」

（面白い相談でしたねえ。サボった甲斐がありました。クフフ♪）
　オリガは、２人の遣り取りを見てクスリと笑い、次はどんな相談者が来るのか楽しみになってきた。