せんせいといっしょ：鷲尾先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：鷲尾先生編

●思春期の悩み

　後木真央の相談が終わると、御鏡聖が恥ずかしそうに相談を持ちかけた。
「あの……アドバイスをいただきたいというか……何というか……。どうやったら、先生みたいに胸が大きくなるんですか？」
　鷲尾先生の胸を見て、聖は顔を赤らめ相談する。
「胸が大きいと、着物を着た時に苦しいし、どうしてもってわけじゃないんです！　でも、もっ、もう少しあっても良いのかな～って」
「センセーは、まばゆい妖艶巨乳なのだ。ちっぱいの真央ちゃんには目の毒なのだ。センセー、どうしたら胸だけお肉付く……じゃなく、胸が大きくなるのだ？」
　女子ならではの悩みを打ち明けるふたりを、可愛いと思う鷲尾先生だった。
「バストアップの方法、教えてあげても良いけど、男の子がいるから、いない時に教えてあげるわ。恥ずかしいでしょう？」
　男子生徒達、特に雨崎荒太郎は期待しているようだったが、それを見抜かれドキッとした。
「じゃあ、男子がいない時に相談するのだ」
「そうですね。男の子がいると、先生が仰るとおり、恥ずかしいですし……」

　女子トークの雰囲気を変えようと、宇佐見望月は、ダイエット面なら俺様アドバイスできると言い出した。
「筋トレとか、栄養面とかなら相談に乗れるぜ。俺様に、気軽に相談してくれよな？」
「ダイエットに困りましたら、ご相談しますね」
「もっちゃんセンパイは、そういうのに詳しいから信用できるのだ」
　胸に体重。年頃の女の子の悩みは、身体に関わるものが多い。

「さて、目の保養に行くとしようかな？」
　八十八旗信彦は、鷲尾先生はもちろんのこと、牡丹、聖といった本人いわく、保健委員の素敵なレディ達が集まる心のオアシスへと向かう。
　保健室に行く理由は、鷲尾先生の好みを探るための第一歩として映画デートに誘うため。
（俺は紳士として、より多くのレディを笑顔にしたいんだけど、学校という小さな世界で生きている以上、どうしても、同世代のレディとの接点が多いよね）
　今は問題ないが、後学のために、鷲尾先生のような大人のレディの趣向を知るのは良いことだと誘う決心を。
「ふたりっきりで行くことに難色を示されるようなら、保健委員のレディ達も誘って、複数であることをアピールするしかないね」
　大勢なら、鷲尾先生も一緒に行ってくれるかもしれない。
「鷲尾先生、俺と一緒に映画を観に行きませんか？　良かったら、ボタンちゃんと聖ちゃんも一緒に」
「良いですね……。先生も一緒に行きましょう……。ゾンビもの観に行きませんか……？　気になるんですけど……怖くて……」
　ゾンビものと聞いて、胸がときめく鷲尾先生だったが、それが好きなのは内緒なので「怖いわね……」とわざと怖がる。
「そうですか……残念でしゅ」
「お誘いは嬉しいですが、学校が終わってからだと、行けませんのでお断りします。せっかくのお誘いですが、申し訳ありません」
　いや、ホラーじゃないんだよ！　と言いたかったが、５限が始まるチャイムが鳴ったので、保健室での談話はお開きに。
（俺は諦めないよ！　時間を改めて、また誘いに来るからね！）

　真央が教室に戻ろうとした時、望月は引き止め、あるものを取り出した。
「真央ちゃん、これ。スイーツフェアに行った時に買ったものだ」
　そう言って、猫型マシュマロをこっそりと手渡した。
「何かこれ見たら、真央ちゃん思い出してさ。つい、買っちまった。ホットココアにのっけて、溶かして飲むんだって。溶かすなんて勿体ない感じするからさ、普通のマシュマロも買ってきたんだ」
「ありがとうなのだ！」
　食べるのが勿体無いのだ、と言いながらニッコリ笑う真央を見て、望月は、買ってきて良かったと喜ぶ。
「キミ達、早く行かないと授業に間に合わないわよ」
「……？！　れ、れみちゃんセンセー、今のは見なかったフリして下さいっ！」
　校則違反のお菓子を手渡したところを見られ、動揺する望月に「内緒にしてあげるわ」とウィンクし、悪戯な笑みを浮かべて言う鷲尾先生だった。