＜零神探訪・後日談＞紅き街にて｜リアクション

＜零神探訪・後日談＞紅き街にて

●サキリ

　一旦区切りのついた紅火楼跡地を出てサキリが向かったのは、ハボ爺のところだった。
「ふうむ、紅火楼跡地で劇場をね……それで紅燈火街で良識があり経営力を持っている人物のアテはないかと」
　海波は顎を擦ってサキリを見つめ返す。
「もしコネがあるならその人の元へ行き紅火楼の建て直しを持ちかけてみようと思う」
　サキリが言うと、海波の隣で話を聞いていたリンコが言った。
「やりたいことは劇場なのよね。それならあなたがよく知っている人の伝手を頼るというのはどうかしら？」
「よく知っている人？」
「寝子島にそういうことにうってつけの人がいるじゃない。マタタビック演劇フェスティバルなんていう島を挙げてのイベントを成功させた実績のある、あなた方の先生が」
「そうか、富士山先生か！」
　１時間後。
　リンコは寝子島で留守番中の梨香を通じて、寝子島高校の演劇教師であり、かつて寝子島で短い活動期間ながら輝かしい実績を残した伝説の演劇集団『野良猫座』の座長でもあった富士山権蔵――フジコ先生をインターネット通話の画面の向こうに呼び出していた。

『話は聞いたわよ～ん。そういうことなら心当たりあるから任せてちょーだい！』

　自分たちは２泊３日の旅程でこの街に長くはいられないことを伝えると、画面の向こうのフジコ先生は、腰をくねくねさせて言った。
『超特急でなんとかするわ～ん！　なんてったって可愛い男の子の頼みだもの』

「さて。経営者の件はフジコ先生に任せることにして、と」

　次にサキリが向かったのは、女性達にたかるタチの悪いロクデナシ共のところであった。
「この際きっちりシバキ倒して掃除しようか」
　昔ストリートギャングだった頃はこういった仕事もよくやっていた。なに、難しいコトじゃあない。

「これを足がかりとして良い男捕まえるなり幸せになれるかは彼女達の頑張り次第。せめてその準備を手伝う事が出来れば嬉しく思うよ」

　ナイフを抜く。サキリは夜闇を駆ける鋭い光となって、爛れた裏通りの中に溶けて行った。