＜零神探訪・後日談＞紅き街にて｜リアクション

＜零神探訪・後日談＞紅き街にて

●トワの大冒険

「デハー、相応の納得をしていただけたところで」
　小さくて見た目フワッとしてるくせにやたらテンション高い金髪の女の子――トワ・E・ライトフェロゥは、街の中心部の、とあるオフィスの一室で高級そうな黒革のソファにゆったりと座り、二人の護衛を従えたスーツの男に微笑みかけた。
「Business のお話をしましょうか」

　どうしてこんなことになっているのか、すこし時計の針を戻して説明せねばなるまい。
　紅燈火街に着いて早々、持ち前の迷子癖を発動させてお目付け役である夜海霧楓とはぐれたトワ・E・ライトフェロゥであったが、夕刻頃ようやく楓に確保された。
　点心の夕食を楽しみつつ紅火楼跡地のことを聞いたトワは言った。
「今後の経験にもなるし、そーゆーことなら任すのデス。カエデ、護衛するのデス！」
「はぁ？　一体何をする気だお嬢」
「とつげきお宅のバンゴハン！」
　ビシリっとレンゲを天に向ける。
「あぁ？　何だそりゃ？」
「もーう、カエデ、日本の有名なTVショーを知らないデス？　ちょっとしたジョーダンってヤツなのデス！」

　トワはすぐさま、本名のエミリア・トワイライト・フェルグリッドを名乗っていくつか電話をかけ、やってきたのは紅火楼跡地の所有権を持つ者の――ややヤクザ的な――オフィスであった。
「ガキが来るとこじゃねえ。帰ってしょんべんして寝ろ」
　はじめはそんなふうに言っていた豹柄のシャツの見張りの男も、トワがフェルグリッドの代理人を名乗ると、「フェルグリット！？」と声をひっくり返して奥の部屋へと通してくれた。
「それなりの収支を当てにしていたあの土地が浮いたままなのでは何かとお困りではないのデス？」
　トワは落ち着いた様子でそう切り出した。
「しかし原因不明の災難があり継続しようにも踏ん切りがつかず……。それはあの土地がほしい他の有権者も同じであろうと予想しマス。長く空ければそれだけ目につくであろう冷戦の空白地帯に一石を投じる手段を持って提供させていただきに来た……それだけなのデス」
　そして台詞は冒頭へ戻る。
「Business のお話をしましょうか」

　◇

　数十分後。トワと楓は、指の一本無くすことなくオフィスから出てきた。
　豹柄のシャツの男は、来た時と打って変わって、最敬礼で二人を見送る。
「上手くいったな。こういうときのお嬢、マジですげえと思うわ」
「これで土地の権利については心配無用一件落着なのデス。パワーバランスがどうとかは繋がりの利点をちらつかせてまた何か騒動あったら尻尾切り、で済ませれると。まーナニカがあるとも思えないんデスケド」
　トワは夜空を見上げて伸びをした。清々しい気分だった。