真っ青な湖に落ちたと思った。
けれど、気づけば、夜と朝のあわいにあるインディゴブルーの中にいた。
自分は
恵御納 夏朝なのか、それとも自分の中のもう一人の自分――
夏夜なのか、良く分からなかった。
だた、もう一人の自分が、自分の目の前にいる。
そのことだけが分かった。
(どうして……?)
彼女は思った。その心に、もう一人の自分が語り掛けてきた。
――私は絶神のしもべとなった瞬間に分かたれたクローネの魂……。
北極の湖に横たわっていた
四十九院 鸞に瓜二つの女性が脳裏に浮かぶ。
絶神に仕えるのに不要なものとして弾かれ、忘れ去られていた、と彼女は言った。
絶神から未来を守るのに助けとなるものを渡したいが、そのまえに知ってほしいことがある、とも。
――零神たちは今、絶神と戦っています。あなたたちがいた未来につながる歴史では、
零神たちはこの戦いに勝利し、絶神を月に封じることとなります。
(知ってほしいこと、ってそのこと……?)
そうです、しかし……と声は続く。
――今、未来からの干渉により、歴史が変わろうとしています。
落ち続ける身体が昏く分厚い雲に飛び込む。
もう一人の自分の姿が見えなくなる。
強い風と霧の粒が顔に当たり、思わずきつく目を閉じる。
しばらくすると、雲を抜けた。
真下には海。真上には、巨大な黒い雲の渦。
その雲の渦の中心から、世界を覆いつくすのではないかというほど大きな黒い手が伸びてきている。
よく目を凝らしてみれば、大きな手は、何千万羽もの烏の群れだ。
――あれは、あなたがいた未来の月に封じられている絶神による、歴史への干渉。
もう姿は見えないが、声だけは聞こえる。
(何が……起こっているの……?)
そのとき夏朝/夏夜は見た。
鈴島を囲むように並ぶ舟たちを。
鈴島へ向かう小舟船団の最後方の舟の上で天を見据える黒き狼のごとき絶神の姿を。
天から現れた黒い手の如き烏の群れに向かって飛ぶ、矢に傷ついた烏の姿を。
そして聞いた。その烏の声を。
「あっはは~ん! どこから来たか知らないけれど、なんて素敵な援軍!」
(……! あれは、クローネ!?)
憎しみが、胸の内に湧き上がる。
その炎をなだめるように、声が聞こえた。
――落ち着いて。あれは過去のクローネ。烏を従える程度の力しかない。
力はすでに
四十九院 鸞に授けました。
発動の鍵は『いちご』……必ずあなたたちの力になるはず。
(苺……、持ってる!)
ああそうだ。四十九院先生のご機嫌取りのために、高級苺を持ってきていたのだ。
――私の力であなたたちの姿を変えます。歴史を、守って――!
気づけば自分の姿が形を変えようとしている。
海が迫る。
夜が明ける。
歴史的な一日がはじまる。
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
恵御納 夏朝さん(夏夜さん)、ガイドにご登場いただきありがとうございます。
ご参加いただける場合は、ガイドの内容に囚われずご自由にアクションをおかけください。
<零神探訪>(ぜろかみ・たんぼう)シリーズ第5話。
このシリーズは、冒険やバトルや旅をしながら、
寝子暦ゼロ年の落神や伝説、零神の宝について調査するシリーズです。
こちらのおしらせにある
<ホワイトシナリオかんたんまとめ(関連シナリオ、ミラちゃん情報も含む)>も
ぜひご覧くださいませ。
ここまであらすじ(ホワイトシナリオ情報含む)
盗まれた零神像の行方を求め、神魂の影響(?)で中国へ飛ばされた一行。
紅燈火街、青の幽玄と冒険を重ね、零神像の左半身を入手したのち、
またまた神魂に飛ばされて今度はユチェンもいっしょに寝子島に戻ってきた。
寝子島では四十九院先生が片腕の黒衣の男に連れ去られる事件が起こる。
さまざまな調査の末、一行は鈴島にある緑の茨に包まれた『千年茨の遺跡』へ向かう。
絶神のもれいびであったクロードを倒し、零神像を取り戻して落神神社に戻した一行。
しかし、月に封印されていた絶神は力を取り戻しつつあり、
地球へ魔界の悪魔、魔物、モンスターなど危険な連中を送り込みはじめた。
一方、一行は時の特異点だという北極の湖に沈む謎の女性の調査に向かった。
千年以上前のクローネが残した善き魂の残滓であった女性は、
一行を時の彼方へと誘う。
◇第1話「<零神探訪>紅燈火街(レッドランタン・タウン)」
◇第2話「<零神探訪>青の幽玄(ブルー・アルカディア)」
◇第3話「<零神探訪>千年茨の遺跡(グリーン・ルインズ)」
◇第4話「<零神探訪>白の獄(ホワイト・プリズン)」
◇第5話 このシナリオです。
概要
北極の湖に沈んでいたクローネの善き魂の導きにより、過去の世界へタイムスリップした一行。
時は、寝子暦零年。
絶神と零神の最終決戦当日。
この日の夜、
月が天のてっぺんに昇る時刻、
零神と仲間たちは、
時の神殿(=千年茨の遺跡)を作動させて、
月へ絶神を封印する。
しかし、寝子暦1370年の月に封じられている絶神は、
この歴史を覆そうと、
北極の特異点から過去へ干渉しようとしている。
絶神の干渉から、過去の歴史を守れ!
◇あなたの立場
R&Rエージェントの場合…アクション冒頭に【R&R】とお書きください。
一定の報酬が支払われます。
とくにアクションに書かなくても支給されたイヤホン型通信機器と、
エージェント間ホットラインで個別&グループで連絡を取り合えます。
そのほか………………………エージェントと連携をとってもよし、とらなくてもよし。
R&Rと対等な関係で協力しあうグループや個人。
今回からご参加の方…………気づけばここにいた。
桜 月さん(ご参加いただける場合)
…………気づけばここにいたものとして千年前の世界で行動するか、
元の世界の寝子島にいるかお選びいただけます。
※このシリーズを通して、言葉は(神魂の影響で)だいたい通じます。
※このシリーズに参加していても、(神魂の影響で時空が歪んでいるので)
他のシナリオに問題なくご参加いただけます。
※R&R Agencyはシーサイドタウンにあるオカルト調査会社で、
超常現象に理解があるひと・もれいび・ほしびとさんたちを
エージェントとして雇って事件の調査・解決をしています。
より詳しい情報はこちら
冒険の舞台「過去の鈴島近海」について
今回の冒険の舞台は、寝子暦ゼロ年、鈴島近海。
時刻は朝~月が天のてっぺんに昇る時刻まで。
上空には暗雲の渦が立ち込めている。波は荒れている。雨はまだない。
天から落ちた衝撃でいくらか神魂を失った零神は、このとき、
自らを癒すべく九夜山の中腹の岩屋戸に籠っている。
寝子暦1370年の絶神の干渉により、
本来の歴史にはない烏の大群が上空から迫っている。
もしも歴史が変わることがあれば、
絶神が月に封じられず、零神が月に封じられた未来に変わってしまう。
見知った寝子暦1370年の寝子島には戻れないかもしれない。
日が暮れ、月が出る時刻まで時の祭殿を守り切れば歴史は守られる。
<零神陣営>
零神船団……絶神から寝子島を守ろうという
もれいび島民数十名と、鈴島海賊の混合軍が乗る船。
舟の最前部・最後部が木製の和船。
ひとつの船に10人程度が乗っています。
庶民が多く、装備は麻の貫頭衣に簡素な胴当て程度。
数名のこぎ手と槍や長弓で戦う者がいる。
時の祭殿……絶神を月に封じるための装置を配した
3つの塔をもつ建造物。
テオと数名の技師が、
月が天のてっぺんに昇る時刻とともに時の祭殿を作動させようと調整中。
祭殿の周りには十名程度の護衛。
長弓で烏たちを近づけまいと奮闘中。
過去の島民たちの反応は、
あやかしの姿をしたPCたちの登場に驚く者、
仲間として受け入れる者など、
皆さんのかかわり方によってさまざまとなります。
<絶神陣営>
絶神船団……絶神を崇めるクロードたち一派の乗る船。
舟の形、舟の数、戦闘員の数は零神船団とほぼ互角。
このときはまだ、クロードやその一派は、ただの人間である。
クロード(千年前)……糸目で黒髪の青年。
この時点では死を超越したいと願い、絶神に与するただの人間。
不思議な力は持たないが、両船団の中で唯一の剣遣い。鉄の直刀を帯び、腕は立つ。
船団の最前の舟に乗船しており人間たちを指揮。
絶神……邪悪に牙を剥く黒い狼。
絶神船団の最後尾の舟に乗船し、海の魔物を呼び出す。
海入道……海面から出没する黒い坊主頭の高さ二十メートルほどの怪物。
舟に向かって倒れて来る。
その体は海水が寄り集まったものだが、ぶつかれば舟は無事ではない。
怪魚……人間の子どもほどの大きさで、牙が鋭い奇妙な姿の魚たち。
トビウオのように海から跳ねて噛みついてくる。
クローネ(千年前)……まだ若い。
矢などの攻撃で傷ついてはいるが、空を飛んで絶神船団を援護している。
烏を指揮する程度のことはできるが、ろっこん暴走の力はもたない。
幾千万羽の烏の群れ……天頂付近から巨大な黒い手の形に群れて現れた烏たち。
一羽一羽は普通の烏だが数が多い。絶神に加勢して鈴島海賊や時の祭殿を襲う。
クローネの命令を聞く。
アクションについて
歴史を守りに来た『未来人』だとバレないように、
過去の世界では人間ではない姿に変化します。
行動と、変化した姿を1つずつ選んでアクション冒頭にお書きください。
◇行動の選択肢
【A】鈴島海賊とともに、絶神の船団と戦う
【B】上空から烏の援軍が鈴島海賊を襲うのを止める
【C】時の祭殿を烏から守る/テオや過去もれいびたちの手助けをする
【D】九夜山の中腹・岩屋戸にいる零神に会いに行く/守る
◇変化した姿の選択肢
変化した姿は【怪】【巨】【小】【幽】いずれかひとつを選んでください。
それぞれのカテゴリの中で、具体的にどんな姿に変化するかは自由に設定できます。
変化の姿はセイレーンやケンタウロスなど、和風でなくてもかまいません。
【怪】人間と同サイズの生き物・妖怪など。
変化したものによって、空を飛べたり海を自在に泳げたりする。
例)烏天狗、人魚、鬼など
【巨】人間より大きな生き物・妖怪など。
力が強かったり、身体の大きさで敵を圧倒できたりする。
例)巨人、海坊主、大蛸など
【小】人間より小さな生き物・妖怪など。
狭い場所に潜り込めたり、敵に見つかりにくかったりする。
動物と話が出来る。
例)ねず(※身長20~30センチの小人)、蜘蛛、猫など
【幽】幽霊・蜃気楼のような幻など。
物理ダメージを受けない。こちらも物理ダメージを与えられない。
姿を現したり消したりを自在に出来る。驚かせたり、壁を通り抜けたりできる。
例)鬼火、巨大な妖怪の幻、海霧など
※ろっこんは、変化した体で条件を満たせれば発動できます。
<持ち物>
基本的には本人が持っていておかしくない持ち物・入手可能なもの。
これまでのシリーズで手に入れた武器・アイテムは使用可能です。
寝子島で、なにか入手しておいてもOKです。(マスタリングする場合もあります)
ただし、星幽塔産の武器は持ち込めません。
※前回ご参加の方は、個別あとがきにあるアイテムは所持しています。記載不要です。
使う際のみ記述してください。
<動物>
前回いっしょにいた動物たちが同行しています。
<ろっこん>
四十九院 鸞先生がろっこんに目覚めました。
四十九院 鸞先生のろっこん「ストロベリー・バーンナップ」
発動条件:苺や苺グッズを手に持って念じる
能力の内容:ろっこんを暴走させる力を苺やグッズに付与。食べたり身に付けたりした人が1回発動可
四十九院先生は、自分でも苺グッズを持ち歩いています。
頼めばグッズはもらえるので、もらったこととしてアクションを書いていただいても大丈夫です。
それにはろっこん暴走の力が付与されています。
通常通りの発動はもちろんのこと、
苺を食べたり、苺グッズを身に付けた人は、
任意のタイミングで1回のみ自分のろっこんを暴走させることができます。
【ろっこん暴走とは】
ろっこんが、条件を無視して発動したり、ふだんより強力になったりする。
今回は、ろっこん暴走のしかたに希望があればアクションにお書きください。
※普段より強くなる、普段より範囲が広くなる、
マスターにお任せでも可。
登場NPC情報
坂内 梨香:R&R Agencyのボスで鈴島海賊の子孫。
今回は、船霊(海の民が航海の安全を願う神)に変化。
目に見える霊体となって鈴島海賊の舟のまわりで偵察や助言などをする。
リンコ・ヘミングウェイ:R&R Agencyの調査員。
梨香の相棒。寝子島で留守番中ですが、梨香たちと連絡が取れなくなって困っています。
今回は、現代の寝子島との連絡手段はありません。
ユチェン:
チャイナ服で、黒く長い三つ編みを後ろに垂らした、11才の少年。
ナイフの腕上達中。糸の付いた投げナイフで戦います。
人間の身体に鷹のような羽根が生えた姿に変化。空を飛びながら烏の撃退にあたります。
四十九院 鸞:
人魚の姿で海の中を泳ぎ回っています。
基本的に戦闘に参加する気はゼロですが、呼べば来てくれます。
望めば、ろっこんも使ってくれます。
ミラ:
みんなのナビゲーター役。時の祭殿でテオの手助けをします。
しかし、未来に戻る方法はわかりません。
零神:
九夜山の中腹(落神神社のあるあたり)の岩屋戸に籠っている。
岩屋戸は巨大な岩で塞がれている。
それではご参加お待ちしております!