【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！

●寝子島マイバッグコレクション・その１

　ところは寝子島シーサイドアウトレット。
　有名人のトークショーなども行われたりするイベントスペースの端に、雨崎楓香は佇んでいた。
　スタッフに紛れて、主催者用のイヤホンマイクを付けた楓香は、緊張を鎮めるために目を閉じる。
　さざめく人々の声は、思いの外、心地良い。
　副会長に立候補した楓香が企画したのは、マイバッグを持って、ファッションショーのようにアピールする『寝子島マイバッグコレクション』――略称ＮＭＣ。今日はその本番の日である。
（はじめは寝子高の講堂か体育館を会場として借りたい、って校長先生と理事長に交渉したのよね。でも、参加自由でメディアも招致したいって言ったら、良い企画だし学生だけじゃなく買い物をする大人世代にこそアピールしてみたらどうか、ってアウトレットに一筆書いてくださって……）
　校長先生と理事長連盟の書類と楓香の熱意で、アウトレットの店長さんも即オーケー。
　副会長候補らしく、人を動かし、補佐する力を見せたい。
　やることは多かったけれど、大人たちへ訴えるチャンスと捉えて、落ち着いて着実に準備を進め、今日という日を迎えることができたのは感無量である。
「楓香君、大丈夫かい？」
　先輩の卵城秘月に肩をたたかれ、楓香は瞼を開けた。
　眩い光とたくさんの観客の姿が飛び込んでくる。
「はい、大丈夫です」
「応援してるから頑張ってね」
「はい」
　ステージ上にポップなフォントで掲げられているショーのスローガンは、美化委員長である本条小萩発案の『ポイ捨て禁止！　ゴミは持ち帰りましょう』。もちろんスタッフもトングとゴミ袋を常備。いつでも清掃できるような心がけも大切にしている。
「小萩先輩、いろいろありがとうございます」
「なんのなんの。全人類の夢と希望と美と永遠とその他の諸々を代表する小萩です。本来なら小萩という完璧超人が世のため人のため学校のため生徒会長に名乗り出るべきであったかもしれません。ですが小萩はすでに美化委員長の重責を負っている身です。美の権化として職務に専念するためにはやむを得ない措置でした。なんということでしょう！」
　ひと息にまくし立て、よろろ、と嘆いてみせる小萩に、
「そ、そうですね」
　と楓香は曖昧に相槌をうつ。なかなかクセのある先輩だが、寝子高はそんな人ばっかりだ！　この程度でビビッて副会長が務まるものか（反語）！
「雨崎さんそろそろ時間です」
　会場スタッフから声をかけられ、楓香は表情を引き締め、音響と照明スタッフさんに合図する。
　照明が落ち、待ち時間の間流れていたＢＧＭの音量が絞られる。
　ランダムに動いていた赤と青と緑のライトがステージの袖で交差し、登壇した楓香を照らす。
　楓香はステージの真ん中に置いてあった瓶詰めのボトルメールを拾った。
　
「今日はお越しくださってありがとうございます。楽しいショーの前に、真面目な話をさせてください。このボトルメールは、過去の私からの手紙です。読ませていただきますね」

　楓香は『寝子島マイバッグ・コレクション』を思い立つにいたった切欠ともいえる、レジ袋の問題や、近年深刻化する海洋プラスチックごみのことを簡潔に語った。
「ゴミ問題にストップをかけ、次の世代に美しい寝子島を残すためにも、私は積極的に個性的で素敵なマイバッグを推進したい！　以上でおわります」
　一礼すると大きな拍手。
　楓香が古着のデニム生地で補強したマイバッグにボトルメールを入れると同時に、閑話休題とばかりにビートの効いた音楽が会場を満たす。

　♪ Mic Controller？　Master of Celemony？　気にしないさどっちでもいい
　♪ 司会進行M.C.440Reしっかり浸透しようエコなファッション

　ＭＣのラップは楓香の先輩、吉住志桜里こと、M.C.440Reだ。
　志桜里は、帆布リサイクルトートバッグにグラフィティアート風のMCネーム『M.C.440Re』をペンキで描き入れて肩に提げ、武術の鍛錬で鍛えた脚をスマートに交差させて、ラップをステージの中央まで歩いてくる。

　♪ ポイ捨て禁止　ゴミ持ち帰り　当たり前　でも不徹底
　♪ だったらCheck it out!　my men, my bag　最初はコイツ、Hitsuki Ranjo!