＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング｜リアクション

＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング

朝・グルグル寝子島支部

　事務室のドアを開けてすぐ、逆巻天野はその場に崩れた。
「ど、どうした？　少し横になるかい？」
「いえ、大丈夫です。ちょっと立ちくらみしただけです。座り仕事ならできます」
「そうか？　なら、手順を説明するから……」
「いえ、“彼”に教えてもらうので平気です」
　社員の介抱を手で制し、無理やり外へ追い出す。ドアを閉じると、大きくため息を吐いた。
（今日はブレーキ役もいないし、一人で自由にやれると思って「やっほおおおおお！」な気分だったのに）
　振り返り、何台ものパソコンに囲まれた男を見る。
「なんでいるの？」
「あまくんお疲れー」
　天野にVサインして迎えるのは、真辺伸幸。
「いやー明日はバイトだなーとか思ってたらいつの間にか朝でさー。寝ないで集合場所行ったら、即効貧血起こしちゃって」
　バイトの説明が始まる前に、事務所へ運ばれてきたらしい。
「眠たいけどーちゃんとデータ整理してるんだよー」
　あくびをしつつも、パソコンをカチカチ動かす。
「大丈夫だよあまくん。何か狙いがあって事務を選んだんでしょ？　止めないよ」
　伸幸に促され、隣のイスに座る天野。
「俺もちょっとにおうんだ、今回のバイト」
「グルグルはもしかしたら、寝子島で最近起きているフツウじゃないことに気づいているかもしれない」
　画面にはすでに何枚かの画像が送られている。
「ろっこんやもれいび関連のものは、俺たちで消しとかないとねー」
　２人同時にうなずく。
「これは……ろっこんなのか？」
　画面の中の一枚は、アウトレットの広場全体を高いところから写している。
「いやー誰かが登ったみたいだよ？」
「ろっこんだったとしても……問題はないか」
「あれーこっちのはなんだろーね」
　伸幸が指差した一枚。

　そこに写るのは猫、猫、猫。そして、猫だった。