ねこの消えた日｜リアクション

ねこの消えた日

「おっ!?」
頭を低くして進むジニー・劉は、どすんと大きなものにぶつかった。
「……なんて探し方をしてるんだ、情報屋」
見上げれば本田宗次がそこに立っていた。図らずも、成果がないままの二人が合流した形となる。
「なんだ、本田かよ……どうだそっちは」
「■の辺だろうと思って、写真を見せて回っているが、手がかりはないな」
「俺も何も……って、何だよ■■はよぉ!?」
ここはどこかと問われれば、昼間からネオンカラーの看板がどぎつく輝く建物――要するにラブホテルが立ち並ぶ場所であった。ラブホ『街』というには数が少ないが、それでも独特のいかがわしい雰囲気が漂う。いつもと違った刺激を求めるカップルや、人には言えない熱い関係の男女がひっそりと訪れる場所。あろうことかそこにジニーと本田は、白昼堂々、男二人で並んで立っているのであった。
「おおおおおいぃ！　■んなピンクな場所、男二人で真昼間とか頭おかしいだろ!?　誤解されんぞ」
「やめろ情報屋、大声出すな！　よけい俺たちの関係を怪しまれるだけだ」
顔を赤くして慌てふためくジニーに、青ざめた顔でなだめる本田。奇妙な男二人の取り合わせは黙っていても目立つ。後ろめたさを抱えて歩く他人の視線がちくり、ちくりと注がれた。
「やべえな……さすがに他当たるか、ってぇ!?」
「なんだなんだ。落ち着けって言ってるだろ」
ジニーはこれ以上開けないくらいに目を見開き、本田の肩をがくがくと激しく揺さぶった。
「落ち着いてられっか！　あれ、白いの！　■■だろ！」
指差す先には、白いもさもさとした動物。尾が長い。ひときわド派手な看板がきらめく一件のラブホテルの門をのたのたとくぐっていくところだった。
「あそ■に入ってった。よし、本田。ラブホ行くぞ」
なんとも語弊のある会話。ジニーは宗次の腕を引っつかみ、有無を言わさずピンクな館に駆け込む。まことに失礼ながら『しなびた』という表現がぴったりの老女が受付から顔を出し、二人を眺め回してしゃがれ声で言った。
「ご休憩？　ご宿泊？　男性二人かい」
「ちげーよ！」
「うちはそういうのOKだよ。支払いは前金で」
「だー！　俺たちはゲイじゃ……」
受付の老女につかみかかろうとするジニーの首根っこを、今度は宗次がつかむ。
「また次の機会に。では失礼」
目を白黒させるジニーに宗次は告げる。心なしか彼も冷や汗をかいているように見えた。
「ババアに弁解しても仕方■えだろ。非常階段から行■う」
「おう、恥のかきすて上等だぜ……あの悪ガキ■■の先回りだ！」