緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

転：寮に帰るまでが戦闘です！

　ウツボカズラ出現から、既に２５分が経過していた。みるみる間に大きくなり、猫鳴館の高さに近づきつつある。それでも、猫鳴館を守ろうと邪衣士をはじめとする寝子高生達は奮戦していた。
　服がぼろぼろになってしまった雨寺凛であったか彼女は藤堂月乃から体操服を借りて着替え、草刈りで援護に入る。また同じように衣服の損傷が激しい哀坂零葉と桃原空音も別の女子生徒から体操服を借りており、陣の用意をしていた逆巻天野の手助けをする。
　休め、と言われていた御剣刀と如月庚もまた再び参戦する。刀が木刀で凌げば八神修の考えを理解した庚がろっこん『蒼穹』をつかって根の部分へきつい一撃を放つ。そうしながらもウツボカズラを燃やさんと灯油をかけようとする骨削瓢と花風冴来を牽制する事も忘れなかった。

（まぁ、大きいウツボカズラちゃん……っていやいやいや、育ちすぎでしょ、どうみても）
　いつの間にかやって来た椿美咲紀はハサミを取り出しながら考える。周りではあれこれ大暴走していたり、これまたいつの間にか援軍として駆けつけていた草薙龍八と大田原いいなが修達と連携してウツボカズラ相手に奮戦していたり、とかなり慌ただしいのだがマイペースにハサミを握り締める。
　因みにちょっと離れた所では何故か神出鬼没が御座を引いてお茶を飲んでくつろいでいたので、除草していた真辺伸幸やら天馬ひびきに突っ込まれて「？」と愛らしく首をかしげていた。取り敢えず、天野が図形を書いているのでそっちを手伝う事に。
　ひとである彼女はろっこんについて知る由もない。というより、目の前でウツボカズラが荒ぶっているというのに動じず、ある結論に達する。
「そういう事なのね。この子はちゃんとしかるべき時期に剪定しなかったのが増長の原因だったのね！」
これは、美化委員として許しがたい事態ですっ！　と駆け出す美咲紀の前に、奈良橋博美が駆け寄った。
「こっから先は危ないよ！　避難した方がいい！」
「行かせて！　ウツボカズラちゃんをどうにかしたいの！」
　博美が止めるのも聞かず、ポニーテイルを揺らして騒動の中へと飛び込む美咲紀。
「一旦下がれ！　今は危ない！」
　士もまた止めようと駆け寄り、他のメンバーもそっちへ反応する。その隙をついて瓢と冴来がウツボカズラを燃やさんと突撃する。
「！？　ちょ、ちょっと待て！！」
　声を上げたのは未だ蔓に囚われている民谷鋭二だった。振りまかれる消化液の所為で衣服の所々には穴があいており、しかもカメラは捕虫器の中に落ちて使えなくなっていた。SDカードに関しては行方不明になっていてわからないが……。
　そんな彼を救出しようと奮闘していた庚と月乃、草を刈っていた美崎岬も灯油の臭いに反応し、焦りを覚える。また、灯油の臭いに反応し、ウツボカズラがより激しく消化液を振りまいた。青白い光をまとった右手で根っこあたりを抉った庚がそれを避けながら舌打ちする。
「くそっ、マジかよ！」
「燃やさせるか！」
　クロウディア・Wが庚のそばを通り抜け、瓢へと立ち向かう。が、瓢は軽いフットワークでそれを交わす。
（燃やすのも確かにいい手だが、枯れていない植物は燃えにくいぞ。それに下手したらここだけじゃなく……）
　龍八は内心で舌打ちしつつ、鉄パイプを振るう。けれども蔦は弾けても冴来の動きまでは止める事ができない。いいながタイミングを合わせて妨害に動いたのだが、それでも避けられてしまう。
「今度こそ……！」
　月乃が斧で蔓を叩く。そのタイミングに合わせて、刀が脳裏に撃鉄が落ちる瞬間をイメージする。瞬間、彼の周りは時が止まったようにみえた。否、刀がより素早く動けるようになった。彼のろっこん『加速』が発動した瞬間だ。
　刀は落ちてきた鋭二を受け止め、木刀で蔓を穿つ。そして冴来の手を取って戦線を離脱する。そこで漸く『加速』を止めた。