緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

　突如乱入した美咲紀や、ウツボカズラが燃やされるというハプニングにより戦場は混乱していた。
「それでも……やる事は１つ」
　マウル・赤城・スティックはさらに慌ただしくなった中でもブーメランやろっこんによってブーメランに生えた手で蔦を払っていた。彼と櫻のお陰で陣を描く天野達は被害に遭わずに済んでいた。塩玉投入作戦が一時中断したその中でも、彼は黙々と戦っていたのだ。
　彼がふと裏庭菜園の方を見ると、消化器をもった真央と解理が駆け寄ってくる。２人は巨大化の勢いが鈍ってきたウツボカズラがスピードを挙げて向かってくる事に気がついた。
「にゃにゃっ？！　超絶ピンチなのだ！？」
　手早くピンを抜き、消火器のレバーを握り込む真央。真っ白い本流がウツボカズラを襲うも勢いは止まらない。それに危機を覚えた解理の脳裏に浮かんだは……同じ寮に住まう、『気になる男の子』の影。
（僕にとって大事な場所だから頑張るんであって、別に『彼』がいるからとかそういうんじゃないけど……っ！）
　真っ白になりながらも迫るウツボカズラ。解理は勇気を振り絞って踏み込み、手を伸ばした。まさにゼロ距離という所まで迫った途端、それは発現する。

　――　真っ白い閃光が、音と共に迸る。

　解理のろっこん『代理告白』は恋愛的な意味で好きな相手の事を考える事でビームを発する事ができる。また出力は『その相手への好感度に応じる』らしい。
　それはさておき、それによって飛んだウツボカズラは上手い具合に書き上がったばかりの陣へと飛び込んだ。空音と零葉は櫻と共に退避し、天野が念じる。
（うまくいってくれ……っ！）

「これが、ウツボカズラ……？」
　散歩の休憩に立ち寄った旅鴉月詠は、目の前に広がる展開に目を見開いた。うねうね苦しみながら身をよじらせる巨大ウツボカズラ。どうやら天野のろっこん『裏切りテリトリー』が効果を発揮したらしく、身動きをやめる。巨大化を落ち着かせる事や退化に対しての作用ではないが、これが大きなチャンスとなったらしい。
「今だ！」
　修の掛け声と共に再び入れられる『塩玉』。そして、庚が『蒼穹』を発動させた右手を根元に振るい、きつい一撃を与える。こうしてダメージが重なった結果、僅かに光ったかと思うと音もなく小さくなっていき……淡く輝く小さな光を１つ吐き出した。
（神魂は……っ？）
　それを神魂だと直感で思った天野と刀、士はそれをじっと見たが、やがて蜃気楼のように揺らいだかと思うと消えてしまった。喰らおうと考えていた士や飛び出た神魂がどこに行くのか観察したかった刀は少し首をかしげた。