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今立つ参道では、先程の人の集まりが嘘のように消えていた。しかし、
御庭 凪糸
に伝わる胸の苦しさは変わらない。
実際に、歩けない程ではないけれども、同じような人混みを何度も抜けるには厳しくて。
「大変、神嶋ちゃん。ちょっと人酔いしてきたかもー?」
嘘も本当も半々に。凪糸は申し訳なさそうな色を添えて
神嶋 征一郎
へと告げた。
「……どおりで。てめぇの様子がおかしいと思った」
「あそこの石段、座れそうだから少し休んでるよー」
「チッ……そこに座って少し待ってろ」
少し歩いて振り返れば征一郎は既にいなかった。
綺麗な石段まで辿りついて座り待つ。やはり少し足が覚束ない。
遠くにこちらへ戻ってくる征一郎の姿を見付けて、隣の石段にハンカチを敷いて、こちらへと手招きをした。
それからふわりと、意識が祭りの灯りの方へ向く。その祭りの橙を反射する萌黄の瞳に何処を映すでもなく。
「……やっちゃったかなー……」
ぼんやりと呟いた凪糸の頬に、ふいに冷たい飲み物の缶が当てられた。
「わ、冷た……!」
「これが熱かったらそれこそ病院行きだろうが」
そこに──いつの間にか、征一郎が立っていた。
凪糸の呟きを聞いた──慌ててそれを誤魔化すように笑って見せた凪糸に、聞かなかった素振りで征一郎は屋台で買ってきた飲み物の一つをそのまま渡して、ハンカチが敷かれていた隣へと腰掛けた。
「神嶋ちゃんは大丈夫ー?」
凪糸からの気遣いと感謝が伝わって来る。飲み物の蓋を開けながら、心配そうに征一郎へと尋ね掛けてくるその言葉。
──もっと早くに、自分が気付けたかも知れないのに。
「……自分の心配よりてめぇの心配してろ」
そのような、自己嫌悪のため息交じりに返した征一郎の言葉。それに、
「そっか……なら、良かった」
凪糸が、心から安心した様子で眼を細めるのを見てしまったから。
征一郎は、しばし今掛ける言葉に何の意味も理由も探し出せず、ただ透き通った先にある空の星々に目をやった。
しばらく会話のない時間が落ちた。しかし、体調の優れない凪糸には、それが丁度良く感じられる。
遠くに真っ赤なほおずきが見えた。
夜風が心地良い暑い時期。それは凪糸の心に一つの事柄を喚起した。
それは凪糸から征一郎へ……しっかりと言う機会を定めていた訳では無いけれども、いつかは告げたいと思っていたこと。
今なら言える気がした。ゆっくり話せるような気がした。
「──オレ、4年くらい前すっごいスランプでさー?」
祭りから僅かに外れた、静かな空間の中で。
凪糸は、脈絡はないけれどもほんの話の一端とした軽い口調で、そっと征一郎の前へ言葉を置き始めた。
「お前にもスランプな時期があったとは、何となく意外だな」
「神嶋ちゃん、オレのことなんだと思ってるの。
──でさ、その時本当に。デッサンも服作りも好きなのに思うように作れなくて」
飲み物の中身を回すように、凪糸が缶を指で揺らす。
「作った端から壊すみたいなバカなこともやったけど、それでもダメで………だから、全部手放そうって決めたんだよね」
そこまで聞いた時、征一郎はそのスランプの重みを知った。
今聞いているのは、凪糸が一心に傾けている装飾への道を諦めかけた時の話なのだと。
技術の世界にとって道具は自分の手指の延長であり、デッサン帳は永遠に発想が詰まり続ける宝物。
「大事にしてた道具もデッサン帳も、捨てようと思ったんだ。全部全部一つにまとめて」
それを破棄するという事は、同じ道へは二度と戻ることはないという意志と同義。
「それを、後は捨てるだけって時に、
──聞こえたんだ、惹きこまれずにはいられない音楽が、さ。
とっさに、もう捨てるはずだった道具を持ったまま、音のする方へ走ってた」
凪糸のその視線は過去を追うように、その言葉は鮮明さを伴って語り置かれた。
「お前を再び突き動かす切欠の音、か……初耳だな」
「あの時、演奏してた近くの視聴覚室の外に、音が洩れてたんだよね。
妖艶で蠱惑的で……でも、炎のような情念も渦巻いてて──
強く頭が揺さぶられた気がした。八月の熱い日で、外エアコン壊れてたのに、気がついたらその場でデッサン帳開いて、一心不乱に鉛筆走らせてて」
「──」
四年前というと凪糸が中三に在学している時。
話を聞いていた征一郎は、その情景と音に心当たりがあった。
同じ状況の暑い八月、凪糸が話した情念をただひたすらにぶつけた曲と演奏者を知っている──
曲名は『ツィゴイネルワイゼン』演奏者は、他でもない、自分だ──
征一郎が驚きにその息を呑んだ。
当時の自分は、他者までもを無駄と排除し、何処までもヴァイオリンの腕を高める事だけを目標としてきた。
全てを排斥してきた世界で、それが破滅へ辿る狂想曲を奏でている事を指摘してくれる存在もおらず。ただひたすらに、ヴァイオリンとの語り合いに存在意義の全てを注いだ。
(まさか、自分は気付いてなかったが──既に逢っていたのか?
──御庭、お前に)
驚愕を伴い向けられた征一郎の視線に、凪糸はわざと答えることなく語り続けた。
「気が付いたら出来上がってデザイン画もって部屋まで走ってたよ。
それからまた、昔みたいに服が作れるようになって……だから、さ。
感謝してるんだよね、オレのガラでもないけどさ」
──凪糸はその感謝だけを伝えたかった。それが征一郎だと明言してしまえば、この事実は、征一郎の負担になってしまうかも知れなかったから。
それを聞いた征一郎は、ただ当時の己を振り返る。
(あの狂想的な音もまさしく自分の一部で、
それが誰かの救いになっていたというのなら……)
意味が、あった。
あの頃の、全てに疎まれ、誰の益にならなくともあり続けた自分の存在に。
そこには、弾き続けた音には、確かに意味があったのだ──
(そして、今わかった。
だから、お前は
あの時自分を突き放さなかった
のか)
征一郎が驚愕から立ち返る。
そこには柔らかな碧の瞳を携えた凪糸が笑ってこちらを見ていた。
「だから、その子がしんどい時に手ぐらいは差し出したいし……笑ってて欲しいから」
──例え、相手からはどのように思われようとも、
「オレはオレが思うままに行動するよ」
その笑顔は、己への思いを確信に変えたかのような輝きに満ちていた。
「……何故。その話を自分にしたのかは聞かないでおいてやる」
ほんの少しの脅しに似た不問についても、凪糸は笑みを引き下げない。
「だが、お前に対して少し──誤解が解けた」
祭りに来た時に考えた……何を考えているのか分からないのではない。
凪糸は、本当に心のままに、裏など存在してはいないのだ。
「……てめぇは頭で考えるより本能のまま動くタイプだろ。
止めはしねぇ」
凪糸の顔が征一郎の言葉で、喜びに色めき立つ。
そして本当に、誰にも聞き取られたくないように小さく、
「……また作れ」
それでも、ただ一人の耳には届いて欲しくて呟いた征一郎の声は、確かに、満面に微笑む凪糸の元と届いていた。
「うん、休んだら今までの分も、大分良くなったかもー」
「人も大分捌けてきたな。祭りはどうするつもりだ」
「えっと……
神嶋ちゃんの無理のない時間の範囲でどうかなー? なんて。無理ならここで帰っても──」
「なら、とっとと行くぞ。
昼から出ている店なら、そろそろ店じまいする所が出てくる時間だ」
「!! ありがとー!」
人が大分退いてきた、祭りの終わりが聞こえてくる夜。
それでも、二人の祭りはこれからだ──
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シルバーシナリオ(150)
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3人まで
シナリオジャンル
ホラー
バトル
NPC交流
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年02月23日
参加申し込みの期限
2019年03月02日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年03月02日 11時00分
参加キャラクター一覧
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