寝子島神社の境内に、夕闇がおりて来た。
夜を迎えたお盆の前の「ほおずき市」。
ちりん、ちりりんと風鈴の音は、昼間とはすこし違う響き。
揺れる真っ赤なほおずきも、昼間とは違って、ほんのり灯って見える。
薄野 五月は、縮緬細工のほおずきを売る不思議な夜店の前に佇む三つ編みの少女の姿を見つけた。
彼女の名前は、八千代 透子。
五月の気配に気づき、振り返った可愛らしい顔には大きな丸眼鏡。
「こんばんは、いい夜ですね」
微笑んで挨拶すると、透子は小さく会釈を返した。
その手には竹ひごに朱い縮緬のほおずきがひとつついた、小さな提灯めいた細工。
目の前の不思議な夜店は、縮緬細工のほおずきだけが売り物のようで、まるでリンゴ飴みたいに竹ひごについた赤い縮緬のほおずきが並んでいた。店主は狐の面で顔を隠していたが、それも今宵の風情になっている。
「縮緬のほおずき、可愛いですね。私もひとつくださいな」
「あいよ」
透子と揃いの縮緬細工のほおずきを手にし、くすっと笑む。
すると透子は不思議そうな顔で五月の肩のあたりに視線を向けた。
「……あの、そちらの方は、お知合いですか?」
透子が見ている方を振り返ると、なんだかぼんやり白い顔。
「……どちらさまでしょう?」
首を傾げる五月に、透子の目がみるみる見開かれる。
「あの……その人、透き通ってます。ゆ、幽霊……?」
半透明な姿で浮かぶ幽霊が、恨めしげな瞳でこちらを睨んでいた。
すると、狐面の店主が、どこか哀しそうに口を開く。
「お嬢さんがた、ほおずきは漢字で書くと『鬼灯』って書くのは知ってるかい? つまりほおずきは死んだ人の提灯ってえこと。ほおずきの空洞の中には死者の魂がこもっているって昔から言われててなあ。どうやら破けたほおずきから、死者の魂が抜け出たようだ。その縮緬細工のほおずきに、封じ直しちゃあくれまいか」
「何故、私たちに頼むんです? そこまでご存知なら、自分でなさればなればいいのに」
「おれは店番で忙しいし、荒事は苦手だもの。それになぁ、そいつらは、君らに伝えたいことがあるのかもよ」
死者の魂は、「倒される」か「話してほおずきの中に戻ることに了承する」と縮緬細工のほおずきの中に封じることができると聞いた透子は、オカルト好きの血が滾ってきて興味津々。
一方五月は、今にもこちらへ襲いかからんとする幽霊を前に、言ってのけた。
「まあ、やってみましょうか!」
こんにちは。
寝子島神社で夏の風物詩である「ほおずき市」が開かれています。
夜はちょっと不思議な世界を、その肌で感じる事の出来る時間となっております。
薄野 五月様、八千代透子(NPC)様、ガイドへのご登場、誠にありがとうございます。
もしご参加いただけた場合は、ガイド本文に関わらず自由にアクションを掛けていただければ幸いでございます。
寝子島神社のほおずき市(夜)
寝子島神社境内。
参道に沿って、赤いほおずきの鉢や房を売る露店が並び、
浴衣を着た売り子たちが「ほおずきいかがですか」と呼び声をあげています。
屋台の軒に下げられた風鈴の音が響き渡り、
かき氷などを売る屋台も出て参道は賑わっています。
ほおずきは漢字で書くと「鬼灯」。
死んだ人の提灯という意味です。
死者の魂は、ほおずきの空洞の中にこもっていると言います。
夜のほおずき市では、ほおずきの中から飛び出してしまった
死者の魂が寝子島神社の境内に漂い、訪れる人へ襲いかかってくることもあるようです。
不思議な夜店……狐面のオヤジが縮緬細工のほおずきを売る店。
縮緬細工のほおずき……竹ひごにひとつだけ縮緬細工のほおずきの実がついています。
不思議な夜店で売っている縮緬細工のほおずきは、死者の魂を封じなおすことができるアイテムです。
縮緬細工のほおずきを持っていると、生きている者と死者の魂は物理的に接触でき、
死者に攻撃が効いたり、言葉が分かったり、触れたりできます。
死者の魂……恨みや不満を抱いて亡くなった人の魂。
生きている人を見つけると、襲ってきます。
死者の魂は、
「倒される」か「話してほおずきの中に戻ることに了承する」と
縮緬細工のほおずきの中に封じることができます。
なお死者の魂は、狙われている人とその同行者にしか見えません。
幽霊には襲われず、穏やかな夜のほおずき市をゆったり見物することもできるので、ご自由にお楽しみください。
アクションについて
【A】死者の魂を封じる
境内には、以下の幽霊が彷徨っています。
どこからか聞こえる声で誘い込まれたり、いつの間にか目の前に立っていたりすることも。
幽霊に対しては、物理的な手段で戦うのも、説得を試みるのも、ひたすら逃げまくるも自由です。
ただし、縮緬細工のほおずきがないと一方的に襲われるのみなので、お気をつけて。
◆トモコさん
享年27才。元OL。彼氏いない歴27年。非常に好戦的。
最近、交通事故で死亡。恋愛経験がないままなのが心残りで、
恋をしている人を見つけると襲ってくる。カップルへの風当たりはもっとキツイ。
睨むだけで首を絞め上げたり、ポルターガイストを起こして攻撃することができる。
◆勝三郎さん&ポチ
享年70才。江戸っ子の元寿司職人。
悩める人や踏ん切りのつかない人、うじうじした人に包丁でカツを入れてくる。
人情派で涙もろいところもあるようだ。
霊犬ポチは生前の愛犬。小型犬だが凶暴化していて、飼い主とともに襲ってくる。
◆ヒデオさん
享年45才。元サラリーマン。
24時間戦えますかの時代に家族を残し過労死。
世の中の全てを憎んでいるが、苦労を理解し合える人物には友好的な態度を示すことも。
激しい怒りで人体発火現象を引き起こすことができる。
【B】夜のほおずき市を楽しむ
昼の部同様、ご自由に境内を散策してください。
なお夜のほおずき市では、お酒も販売しています。大人はほろ酔い加減で境内を歩くのも良いでしょう。
(例)ほおずきを買い求める、お友だちと・デートで境内をそぞろ歩く、
風鈴の音を楽しむ・風鈴を買う、お酒をいただく など
【C】その他
ご自由にどうぞ。
登場NPCについて
登録NPCなら、特定のマスターさんが担当しているキャラクター以外は登場できます。
そのほか、このシナリオでは、夜の寝子島神社にいて不自然でないXイラストのNPC
と行動をともにすることができます。
その場合、【X】NPC名と、XイラストのURLをアクションにお書きください。
※XイラストNPC様のご登場に関しましてのご注意
XイラストNPC様のご登場をご希望なさいます場合には、
是非『他シナリオに登場していれば、そのシナリオのURL』、
初登場の場合は『口調・性格・行動』など、
リアクション登場時に必要と思われます情報は、全てお書き添えいただけますようお願い申し上げます。
XイラストNPC様は、いただきました上記の情報を元に執筆させていただきますが、
情報・アクションの不足などにより、行動の判断がつきかねます場合には、
アドリブにてのご対応となってしまいますので、あらかじめご了承いただけますよう、
何卒宜しくお願い致します。
(※ある程度のご指定の後に『アドリブでお任せ』といただけました場合には、
可能な範囲にて、全力で善処致します)
・八千代 透子(やちよ・とうこ)
旧市街出身の寝子島高校二年生。
ちょっとドジでいつもあわあわ慌てている、ほんわりふんわり系の文学少女。
大好きなオカルト系の話題になるとスイッチが入ったように積極的に。
小さい頃から神社などが身近にあったため、
自然と神様や伝承、不思議なもの――妖怪等の目に見えないものに興味を持つようになった。
少し不思議からがっつりオカルトまでその趣味は幅広い。
調べるからには敬意を持って。
興味本位で荒すような事は好まない。
八千代 透子さんはどのPCでも絡むことができます。
それでは皆様のご参加お待ちしております。