アリえない不法投棄　from　宇宙｜リアクション

アリえない不法投棄　from　宇宙

　そして仕上げはこの紳士。
（いよいよこのときが来ました）
　隅で丸まっていた与太郎は静かに立ち、戦渦へと自ら入っていく。同時に、主砲に巻き付けていたベルトも外した。
　すぐそばでは、女性陣が動くたび、胸が揺れ、腰から太ももにかけてが覗けた。連動するようにして、主砲のボルテージもいよいよ最高潮に達していく。

「あら、ご立派な物をお持ちで」
　戦いのさなかにあっても、蛇那伊は与太郎にウィンクしてみせた。隆々とした肉体美を全てさらけ出している。

　シュルシュルシュル。与太郎のナニカが萎んでいく。

（ぐ……まさかの障壁……このままではアリを殲滅できやせん）
　慌てて目を背け、
「？」目標を空里花へ移す。「あんた、何こっち見てんだ？」
　と、改めて冷静になり、自分の服装を確かめる空里花。すでに服はほとんど溶かされ、お気に入りの缶バッジたちが申し訳程度に素肌を隠しているのみだった。
「あ……」
　さっきまでの勇猛さはどこへやら、乙女チックに頬を赤らめ、大事な部分を隠す。

（お、おおおおお）
　空里花の均整のとれた体が、与太郎に最後のエネルギーを注いだ。

「きききたああああ！　充填率４００、いや５００％！　ご通行中の皆様、ご注意くださぁぁぁい！」

　何事かと全員の視線が与太郎に集まる。

「ラアアァイジィイイング！　ッサァァーン！」

　——その叫びは、一部の間では伝説であった。
　かつて保健室が半壊した。そのときにも、その言葉を聞いた者たちがいて、今も語りぐさとなっている。

　与太郎のろっこん「ライジングサン」は、夜の鈴島を明るく染めた。それは朝焼けのようであり、欲望のシンボルのようであり、そして一つの文明が崩壊する予言のようでもあった。

　制御のきかない太いビームが、サーチライトのように四方八方へと撃ち放たれた。すでに壁や天井と呼ばれるものはない。巣塚を構成していた土砂たちは崩れ、アリたちは触覚を慌ただしく動かしながら、次の行動を決めようと必死に状況処理をしている。が、彼らのプログラムの中に、今の状況を打破する行動パターンはインプットされていなかった。

「女王は……！？」
　混乱の中にあっても、梢は女王を見上げた。女王アリの周りだけは壁が崩れず、威厳を保ったままだ。全てを受け入れるようにして、静かに混乱を見下ろしていた。
「もう、機能を停止させている……？」
　英二がつぶやく。
「私たちも早く逃げないと！」
　円の声が聞こえたが、英二は女王をじっと見据えずにはいられなかった。
　英二は和解と共存を望んだが、アリ側は何を望んでいたのか。繁栄なのか、それとも……。

　巣は空中に浮かぶ蟻地獄のように、サーッと砂の音だけを残して中央から崩れていく。女王が機能を停めると、従うようにして、アリたちも次々に動かなくなる。砂に埋め尽くされながら、生き埋めになるのも構わず、英二はその光景を黙って見守っていた。

　アリたちは一掃された。

　チュイーン……

「ん……なんか音がした？」
　砂浜に横になって眠りかけていた初島優が、タワー型装置の異常音に気づく。
　そして手を伸ばそうとした瞬間。

　３０の命は光の玉になって、砂浜や崩れ落ちた巣から飛び立っていった。それらは夜の静かな風に乗って、寝子島上空で方々に散らばると、穏やかな景色へと溶けんでいった。

　そして——
　鈴島に残された不法投棄は二度と動き出すことはなく、自然の淘汰にかまけて分解され、いずれ島の一部になる。

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あとがき

担当マスター：小西秀昭
ファンレターはマスターページから！

　と、いうわけで、無事にアリたちは一掃され、無理やり転送された皆さんは無事に帰還することができました。お疲れさまでした。

　提出してくださったアクションに関して、１点だけお詫びさせてください。

　初期装備の「虫除けスプレー」ですが、これ、ほんとにただの「虫除けスプレー」です。行楽時に体にシューって吹きかけるタイプの。殺虫スプレーとは違います。しかし私のガイドでの説明が足りず、アリを撃退する道具だと思ってアクションを書かれている方が数名いらっしゃいました。これについてはほんと、ごめんなさい。これからはしっかりと用途明記するようにします。ただ、かえって面白い展開にはなりましたので、その意外性を楽しんでいただければ嬉しく思います。

　また傾向として、タワー型装置に興味を持たれる方が多く、危うくタワーいじりで半分以上を割き、残りは股間の主砲にまつわるエトセトラになりかけるところでした。この辺に関しましては、バランス調整を施しています。ご了承ください。

　今回のシナリオが世界設定に与えた影響は、ライジングサンの明かりのせいで夜明けと勘違いした鶏がコケーと鳴いた程度です。無事に、フツウを脅かすことなく、死守されました。

　またラパーマ星人による不法投棄はあるかもしれません。そのときはまた皆さんのお力を借りることになります。よろしくお願いします！

　小西秀昭でしたっ！

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