- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
アリえない不法投棄 from 宇宙
「にゃーくんそろそろ煮えてきたぞー」
「みゃー」
旧市街のマンションの一室、小さなテーブルを囲む、１人と１匹。桜庭 円は鍋のフタを取ると、おたまで汁をすくう。
「うん、ダシもばっちりだ」
魚の切り身が配られるのを今や遅しを待ち構えている飼い猫にVサイン。にゃーくんの、前足をテーブルにかけて直立する姿が愛らしい。
豆腐にネギ、えのきに白身魚。
クツクツいう鍋にあわせるようにして、上機嫌に鼻歌の円。にゃーくんも「みゃー」とコーラスのお手伝い。
２人きりの鍋パーティ。でも幸せだ。
「って、あら？」
コンロの火が弱まる。
「もう、調子崩されるなあ」すかさずライターを手にし、コンロのつまみをカチッカチッ。「にゃーくんもうちょい我慢し」
円の視界がぶれる。にゃーくんが歪み、光、光、そして、闇。
「え？」
そこに人工的な明かりはない。あるのは上空の星たちだけ。円の目が慣れるのに少々の時間が要った。
「にゃーくん……あれ？」
地面に正座をし、片手にライター、もう片方の手ではつまみを握るポーズ。
頭の整理がつかない。さっきまで自宅でにゃーくんと鍋パーティをしていたはず。しかし今自分がいるのはどうやら森の中。遠くかすかに聞こえる波の音。
どうやら自分はどこかに送られてしまったようだ。寝子島に住んでいる限り、これしきのことでは驚かない。しかし、一番憂うべきは……
「にゃーくん！」
円の部屋では今、にゃーくんは一人。そしてテーブルの上には、ガスボンベがプシューと、不完全燃焼のままガスを吐き出し続けている……。
やばい！
円が腰浮かせたそのとき。膝先が何かに当たる。
ガスコンロだった。
つまみを握っていたため、円と一緒に送られてきたらしい。
「ということは、今ボクの部屋は……」
足場を失った鍋がひっくり返って、にゃーくんはさぞかし慌てていることだろう……。
「まあ、最悪の事態は免れたな」
ホッと安堵。そしてようやく手紙の存在に気づくのだった。
「ふざけた内容だ」
読み終えるなり、逆巻 天野は手紙を破り捨てた。
「しかも誤字が二ヶ所もあった」
静かに怒る天野を、北原 みゆきが心配そうに見上げている。
天野とみゆき、２人は翌日の探検部の活動に備えて、一緒に準備をしていたところで、転送された。リュックを背負い、格好も探索に適していて、突然ここへ放り込まれたとは思えない、準備万端の状態だ。
「ここは鈴島で間違いないらしい」
手紙の内容を搔い摘んで話していく。巨大アリの存在を知ったみゆきは、不快そうに口を手で押さえた。
「北原、大丈夫か？」
天野の言葉にみゆきは一つうなずく。この事実を自分一人で知ったらネガティブ街道まっしぐらだっただろう。天野がそばにいてくれてよかったと切に思う。
「前に家族で鈴島の離島ツアーに参加したことあったから、大体の地形は分かるかも」
「それはありがたい。僕も地図を持っているよ。役立つかな？」
広げた鈴島の地図。東部の砂浜に印をつける。
「まずはここを目指そう」
登山用の大きなリュックを背負い、夜の森を歩き始める。周囲にアリの気配はない。静かなものだ。虫除けのために作った即席の松明を頼りに、砂浜を目指す。
「……」
天野、立ち止まる。向こう三十メートル地点に何かの存在を感じ取った。みゆきも息を止め、じっと目を凝らす。
と、ちかちか丸い光が点滅した。
「人間？」
相手の方から近づいてくる。光は、宇宙人から支給された懐中電灯付きヘルメットが発していた。
「おやおや、ずいぶんと用意周到なことで」
正体は桜崎 巴だ。
「そちらはずいぶんと軽装で」
天野が答える。巴は薄着にヘルメット、そしてバットを握りしめていた。
「面倒なことに巻き込まれちゃいましたね……」
みゆきが恐る恐る声をかける。
「宇宙人だか何だか知らないが」バットで素振りするたび、ヘルメットの明かりが四方八方を照らした。「あたしに迷惑かけようなんて奴らの思惑はぶっ潰してやるよ！」
「気合い、入ってますね」
「気合い、だけはね。あたしのやる事は決まってるのさ。全力で退避さ！ いくらバットを持ってても、純粋に戦闘力を求められちゃあ分が悪い。そっちはどうする気だい？」
「僕らは砂浜付近に拠点を築こうと思ってね。怪我人の手当ては引き受けるよ。ゴムボートがあるから、いざというときは退去も可能だし」
「なるほどそいつは心強い。何かあったときは頼るとしようかねぇ」
「いつでも来てくれ」
別れると、巴はヘルメットの明かりを消す。
（さて、これからどうしたものか。まずはアリを遠くから観察して、行動パターンやあわよくば弱点も知りたいところだけど）
森の闇へ溶け込んでいく。
「みゃー」
旧市街のマンションの一室、小さなテーブルを囲む、１人と１匹。桜庭 円は鍋のフタを取ると、おたまで汁をすくう。
「うん、ダシもばっちりだ」
魚の切り身が配られるのを今や遅しを待ち構えている飼い猫にVサイン。にゃーくんの、前足をテーブルにかけて直立する姿が愛らしい。
豆腐にネギ、えのきに白身魚。
クツクツいう鍋にあわせるようにして、上機嫌に鼻歌の円。にゃーくんも「みゃー」とコーラスのお手伝い。
２人きりの鍋パーティ。でも幸せだ。
「って、あら？」
コンロの火が弱まる。
「もう、調子崩されるなあ」すかさずライターを手にし、コンロのつまみをカチッカチッ。「にゃーくんもうちょい我慢し」
円の視界がぶれる。にゃーくんが歪み、光、光、そして、闇。
「え？」
そこに人工的な明かりはない。あるのは上空の星たちだけ。円の目が慣れるのに少々の時間が要った。
「にゃーくん……あれ？」
地面に正座をし、片手にライター、もう片方の手ではつまみを握るポーズ。
頭の整理がつかない。さっきまで自宅でにゃーくんと鍋パーティをしていたはず。しかし今自分がいるのはどうやら森の中。遠くかすかに聞こえる波の音。
どうやら自分はどこかに送られてしまったようだ。寝子島に住んでいる限り、これしきのことでは驚かない。しかし、一番憂うべきは……
「にゃーくん！」
円の部屋では今、にゃーくんは一人。そしてテーブルの上には、ガスボンベがプシューと、不完全燃焼のままガスを吐き出し続けている……。
やばい！
円が腰浮かせたそのとき。膝先が何かに当たる。
ガスコンロだった。
つまみを握っていたため、円と一緒に送られてきたらしい。
「ということは、今ボクの部屋は……」
足場を失った鍋がひっくり返って、にゃーくんはさぞかし慌てていることだろう……。
「まあ、最悪の事態は免れたな」
ホッと安堵。そしてようやく手紙の存在に気づくのだった。
「ふざけた内容だ」
読み終えるなり、逆巻 天野は手紙を破り捨てた。
「しかも誤字が二ヶ所もあった」
静かに怒る天野を、北原 みゆきが心配そうに見上げている。
天野とみゆき、２人は翌日の探検部の活動に備えて、一緒に準備をしていたところで、転送された。リュックを背負い、格好も探索に適していて、突然ここへ放り込まれたとは思えない、準備万端の状態だ。
「ここは鈴島で間違いないらしい」
手紙の内容を搔い摘んで話していく。巨大アリの存在を知ったみゆきは、不快そうに口を手で押さえた。
「北原、大丈夫か？」
天野の言葉にみゆきは一つうなずく。この事実を自分一人で知ったらネガティブ街道まっしぐらだっただろう。天野がそばにいてくれてよかったと切に思う。
「前に家族で鈴島の離島ツアーに参加したことあったから、大体の地形は分かるかも」
「それはありがたい。僕も地図を持っているよ。役立つかな？」
広げた鈴島の地図。東部の砂浜に印をつける。
「まずはここを目指そう」
登山用の大きなリュックを背負い、夜の森を歩き始める。周囲にアリの気配はない。静かなものだ。虫除けのために作った即席の松明を頼りに、砂浜を目指す。
「……」
天野、立ち止まる。向こう三十メートル地点に何かの存在を感じ取った。みゆきも息を止め、じっと目を凝らす。
と、ちかちか丸い光が点滅した。
「人間？」
相手の方から近づいてくる。光は、宇宙人から支給された懐中電灯付きヘルメットが発していた。
「おやおや、ずいぶんと用意周到なことで」
正体は桜崎 巴だ。
「そちらはずいぶんと軽装で」
天野が答える。巴は薄着にヘルメット、そしてバットを握りしめていた。
「面倒なことに巻き込まれちゃいましたね……」
みゆきが恐る恐る声をかける。
「宇宙人だか何だか知らないが」バットで素振りするたび、ヘルメットの明かりが四方八方を照らした。「あたしに迷惑かけようなんて奴らの思惑はぶっ潰してやるよ！」
「気合い、入ってますね」
「気合い、だけはね。あたしのやる事は決まってるのさ。全力で退避さ！ いくらバットを持ってても、純粋に戦闘力を求められちゃあ分が悪い。そっちはどうする気だい？」
「僕らは砂浜付近に拠点を築こうと思ってね。怪我人の手当ては引き受けるよ。ゴムボートがあるから、いざというときは退去も可能だし」
「なるほどそいつは心強い。何かあったときは頼るとしようかねぇ」
「いつでも来てくれ」
別れると、巴はヘルメットの明かりを消す。
（さて、これからどうしたものか。まずはアリを遠くから観察して、行動パターンやあわよくば弱点も知りたいところだけど）
森の闇へ溶け込んでいく。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2013年07月20日
- 参加申し込みの期限
-
- 2013年07月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2013年07月27日 11時00分
