夜の鈴島。
250メートル四方ほどの小さな島の砂浜に、一筋の光が落ちた。それは落雷よりは緩く、月光よりも濃い。空間を割くような、無機質な音を立てている。
その光の中心から、ブリーフケースを携えた一人の黒服の若者が姿を現した。
「オエ、オエーっ!」
光が消えると、ひどい吐き気をもよおした彼はその場にうずくまる。
「何この感覚!? 気持ち悪ぅっ! うおえ! ……ううう……もうこの仕事辞めたい……」
涙目になりながらもなんとか立ち上がると、
「うう……うお……ここが、地球……聞いてた以上に美しい……」
感動に浸っている。紺色の海、乱立の木々、手に付いた砂。全てが新しいものばかりだ。
「って、感動している場合じゃねぇ!」
そう言うと、ケースからいくつかの奇妙な道具を出し、砂浜に広げた。
「あー気持ち悪い……」
缶詰のようなものを設置し、上部に設置されたタイマーに「3分」と入力する。
「あとはこれを……と」
これまた不思議なタワー型の装置である。てっぺんのアンテナで何かを送受信する機能を搭載しているようだ。
「うーんと人数は……30人くらいにしとけばいっか」
側面のパネルに、適当にピポパと入力。
「よし、おっけっと」
服についた砂を落とし、ケースを持ち直した。
「うーん、地球の空気って美味しいなあ。しかも平和だなあ」
のどかな風景に見とれ、しばし現実を忘れる。
「はあ……ぼちぼち帰りますか……危険手当て出るといいなあ」
名残惜しそうにしながらも、腕に巻かれた端末を操作する。再び一筋の光が島に落ちた。
「それじゃあ地球の皆さん、がんばってくだ」
言葉は遮られる。彼自身が、「そこ」からいなくなったから。光は消え、いつもの鈴島の光景が戻ってくる。異様な装置たちだけが、この島の秩序を脅かそうと虎視眈々、鈍く光っているだけだ。
そして3分後。
ピピピピ、ピピピピ
缶詰型装置のタイマーが鳴る。自動的に、缶詰の蓋が剥がれた。中は暗い。深い深い底知れぬ穴のような闇を仕舞い込んでいた。
カタッ
中から何かが這い出してくる。一本の足が缶詰のふちをつかんだ。足先は鉤の形をしており、微小な毛が細かく生えている。さらに……触覚を方々に巡らせながら、その何かが頭部を出した。
アリである。
わらわらと缶詰から這い出てくる。缶詰自体は小さいのに、どういったカラクリなのか、這い出した彼らは瞬時に体を大きくする。体長1メートルはあろうかという巨大アリが、砂浜を黒く埋め尽くしていった。
彼らは互いに触覚を触れ合わせ、確認を取り合い、そして動き出す。
チュイーン……
それぞれの6本足が忙しなく動き出す下で、今度はタワー型装置のアンテナが静かに作動し始めるのだった。
いつもお世話になっております。小西秀昭です。今回は少々謎めいた切り口ですが、やることは単純です。バトルです。皆様お誘い合わせの上、フツウを脅かすものを駆逐してください。
【何があったの?】
ガイドに登場した男性は、遥か遠くの惑星ラパーマから投棄を命じらてやって来た、いわゆる公務員。
ラパーマ政府は開発した兵器の失敗品を地球へ送りつけ、ついでに地球に存在する特殊な能力を持った人材のデータ収集をすることにしました。
タワー型装置は、その特殊能力者を集める道具です。無理やり兵器のいる場所へと召喚させることができます。
【巨大アリ】
鈴島(寝子島マップD-13)に放たれた、全長1メートル前後の節足動物。ラパーマ星の技術者が、地球の昆虫アリを参考にして、戦闘兵器として開発。制御の効かなくなってしまった失敗品を地球へと放ちました。特徴は以下の通り。
・フツウのアリと同じような習性、メカニズム。
・缶詰から解放後、地中ではなく地上に、うず高い土の巣を作ります。入り口は複数あり、内部は複雑です。アクションは、この巣の中か、山中のどちらかで戦う(もしくは逃げまわる、全然関係ないことをする)こととなります。
・敵を認識すると噛み付いたり、節足で捕まえたりしてきます。捕まったら、巣中の餌置き場に連れて行かれます。餌置き場は広めでわりと快適です。入り口に見張りのアリが常時2〜3匹います。
・口から蟻酸を吐きます。人体にさほど影響はありませんが、衣服が溶けます。今回最も重要視しなければいけないのはココです。
彼らアリを一掃することが今回の目標となります。
【アクション】
参加者のあなたは、巨大アリと戦うため、ラパーマ星の高度な技術によって夜の鈴島に召喚されました。機械の誤作動(エラー)という設定で、特殊な能力のないフツウの”ひと”も参加大歓迎です。
召喚先は鈴島のどこか。目の前には「手紙」が置いてあり、事務的に今回の事情が伝えられます。内容を一言で言うと「がんばれ!」です。巨大アリについての詳細も明記されています。
他に、「懐中電灯付きヘルメット」や「虫除けスプレー」の初期装備も置いてあります。これら差し入れの性能は地球のものと大差ありません。ていうかもろ地球のメーカー品です。また召喚時、身につけていたものや持っていたもの、周辺にあったものも一緒に転送されていることがあります。アクションで希望を出していただければ、できる限り活かしていきたいと思います。
協力して戦う、逃げる、捕まる、服溶ける、あらわになる姿を凝視する。アクションはなんでもアリです。皆様の破天荒で破廉恥なアクション、お待ちしています!