おおっと、ここで突然の神魂がサクレツーーー！！
　どうやら本日の寝子島は、レトロゲームの世界と混ざり合ってしまったようですよ？
　ほうら見てください、空に浮かぶ雲もそびえる山も、生い茂る草花もむき出しの岩肌も、カックカク！　なにもかもがドット絵な世界です。おまけに聞こえてくる自然の音や動物たちの声、なんだか楽しそうなＢＧＭも、ピコピコな電子音やチップチューンなのです。
　そして忘れてはいけないのは、今日は子どもの日であります。空にはドット絵なこいのぼりがゆらゆらゆらりと泳いでおりますし、子どもたちだって大はしゃぎ！
　さあ、ゲームの世界で彼らがどんな遊びをしているのか、ちょっぴり覗いてみるといたしましょう。



「てやーーーっ」
「うりゃーーー！」
　ガシーーーン！！　バキーーーン！！
　ドッカーーーン！！
　ってな具合で対戦格闘アクションゲーム風なバトルを繰り広げているのは、クラオコア・マハナとカラオコア・マハナの双子です。
　金髪のクラオコアはキャプテン～……ごにょごにょなコスチュームに身を包み、銀髪のカラオコアはアント～……なにがしの衣装を着込んで、ド派手な対戦を披露しております。

「カラカラの超必殺技ゲージはもうすぐ満タンなのじゃ！　大技をお見舞いしてやるのじゃー！」
「なんのー、クラクラの華麗な大逆転劇を見せつけてやるのじゃ！　とおりゃーーー」
　キャプテンなんたら～なクラオコアは腕のシールドをブーメランよろしくしゅばっと投げつけ、伸縮自在なアントなんたら～のカラオコアは瞬時にアリンコサイズまで小さくなり、際どく回避。
　もとのサイズに戻ったカラオコアのスーパーパンチ！　迎え撃つクラオコアのミラクルパンチ！　ガッキーーーン！
　攻撃を繰り出すたび、ぶつかり合うたびにどっかんどっかんとエフェクトが広がって、ふたりのバトルはまさしくヒーロー映画さながらの大迫力！
「でりゃーーー！」
「とあーーーっ」
「くらえーっなのじゃ！」
「まだまだーーー！」
　ふたりのバトルに花を添えるのは、スターズアンドストライプスなこいのぼりに、真っ赤なこいのぼり。
　これぞまさしく、
「「シビル魚（うお）ーーー！！」」
　……鯉のぼりだからかな？
　なんにせよ、ふたりの激闘はまだまだ続きます！　チュドドーーーン！！



　打って変わって、こちらはファンタジーＲＰＧちっくな冒険模様。
「ばっひゅーん♪」
「ああっ、待ってくださいののこ姫……！」
　天真爛漫なお姫さま、野々 ののこ。
　そのお付きの騎士が、ちょっぴり平凡なお顔の佐藤 英二であります。


　鎧はブカブカ、槍もいまひとつ手に馴染みませんけれど、姫を思う気持ちは誰にも負けません！
　なんて言いつつも、自由奔放なお姫さまにはいつも振り回されてしまいまして、
「英二くん、はいこれ！　食べていいよー」
「き……キノコ、かな？」
　ぷすっと刺した串で差し出されたのは、いい具合に焼けた美味しそうなキノコ……というのはまあいいとしまして、キノコにはとぼけたような顔がついていて、なんかちょっとこう……た、食べづらい！
「というかののこ姫、道端のキノコなんて食べちゃダメだよ。毒があるかも」
「そうかなぁ？　かわいいから美味しいかなって（？）　あっ、見て見て！　あれなんだろ？　いってみよー☆」


「わあ、ちょっと野々さん～！？」
　あわてて追いかける騎士の鑑、英二。立ちはだかるモンスターはばったばったと薙ぎ倒し、姫を守るのです。大変そーですけれど、がんばって！
　いっぽう、穏やかなひと時を満喫しているのは鵙海 甫に千堂 結。
　恋人同士はゲームの中でも仲睦まじく、冒険の合間の休憩中にもおたがい気遣いは絶えません。
「よしっ、ミラクル上手に焼けたぜー！」
「わ、すごいね甫君……！　美味しそう！」
「腹減ったろ、今切り分けてやるからな」
　こんがりジューシー、肉汁タップリなマンガ肉をふたりで分けたら、いただきます！　ぱくりっ。
「ん～～～♪　美味しい……！」
「ああ、こりゃ美味いな！」
　ちなみにこのお肉、戦士である甫が剣と盾を巧みに操りやっつけた、ドラゴンのお肉だったりします。
　そして携帯肉焼きグリルに火を灯したのは、魔法使いの結です。
　ふたりでゲットしたお昼ごはんの、なんとまあ美味しいこと！
「食ったら、次はあそこのダンジョンを探検してみるか。お宝が見つかるかもしれないぜ？」
「う、うん。でも、ちょっと怖いな……洞窟だなんて、真っ暗なんじゃないかな？」
「千堂が魔法の光で照らせばいいじゃないか」
「あ、そ、そっか。甫君、冴えてるね……！」
「ゲームじゃ常識だし。それに……」
　言いかけて、なにやら言葉を濁した甫。こくんっと怪訝そうに首を傾けた結へ、ぽつりと言いました。

「……なにが来たって、千堂は俺が守るし」
「あ……う、うん。頼りにしてるね。えへへ……♪」


　ふたりの顔が真っ赤に染まっていたのは、グリルで揺れる炎のためばかりではなかったことでしょう。



　イマドキ小学生、特に寝子島の子どもたちには今や定番の遊びといえば、そう！　カプセルギアです。
　ゲーム版『携帯戦記カプセルギア』を遊ぶのは、古尾 桐子と百岳 甘桃です。
「敵が来たッスよ～！　桐子お姉さんに続くッス！」
「うんっ！」
　敵はキューブのようなシンプルな構造のカプギアで、わらわらと現れたそれらがまたたく間にふたりを取り囲みます。
　もちろん慌てず、ふたりは叫ぶのです。
「『トルーパー』！　出番ッスよ！」
「いっしょにがんばろうね、『アマデト』！」
　桐子がしゅぱんとスマホをなぞれば、量産型戦闘メカをモチーフにしたいぶし銀、トルーパーがローラーダッシュで駆け抜けます。
　甘桃の相棒、アマ・デトワールは角と翼を持つ美しい馬型カプセルギアです。華麗に飛び立ち、敵カプギアめがけて一直線！
　トルーパーはヘヴィマシンガンで牽制射撃をばらまきつつ高速接近、肉薄したところで、

「今ッス！」
　必殺パイルバンカー、ずどんっ！
　炸薬で打ち出される杭に貫かれた敵カプギアは、ちゃりーん！　コインへと変わりました。この世界では、敵をやっつけるとコインをゲット、スコアが加算されるようです。
　アマデトも負けじと急降下、落下のイキオイを乗せたスタンプ攻撃！　どかんと相手を空中へと打ち上げたところで、

「やっちゃえ～、アマデト！」
　翼のジェットに点火。突撃！　鋭い角で敵をひと突きに仕留め、ちゃりーんとコインへ変えました。
　アマデトが敵を蹴とばし、ちゃりーん！　トルーパーのマシンガンが火を噴き、ちゃりちゃりーん！
「なかなかやるッスね～！　でも、お姉さんも負けないッスよ！」
「わたしとアマデトのコンビは無敵だもん！」
　ちゃりーん、ちゃりーん。ちゃりちゃりちゃりりーん！
　コインが弾ける軽快な音は、いつ終わるともなく続いたのでした。



　さてさて。そんな子どもたちの華やかな笑顔を微笑ましく見守っている、お兄さんがおりました。
　ばっさばっさと青い翼を打ち、空中からゲーム・ワールドを眺めているのは、深縹 露草であります。
「皆さん、楽しそうデースね！」


　手にしているのは、絵筆にパレット。
　空飛ぶキャンバスへ、しゅばば！　と筆は走り、またたく間に描かれていくのは、可愛らしいにゃんこです。
「この素敵な風景を、余すところなく描き残しておくのデース……！」
　しゅば！　しゅばばば！　絵筆が翻るたび、にゃんこのまわりへ、対戦に興じるカラオコアにクラオコアが。お姫さまなののこと、彼女に振り回されつつもまんざらでもなさそうな英二が。仲良くお肉を頬張る甫と結、恋人たちの姿が。カプギアで並み居る敵をちゃりんちゃりーんとコインへ変えていく桐子が。甘桃が。次々に、描かれてゆきました。
「まだまだ！　この素晴らしい世界の全てを表現するまで、私は止まりまセーーーン！」
　しゅばばー！　びゃびゃびゃっ、ずばしゅびしゅばーーー！
　筆は止まることなくキャンバスを駆け巡ります。
　やがて。
「……完成デース！」
　じゃじゃ～ん！
　キャンバスに広がっていたのは、８ビットカラーで描かれた、緻密で美麗なドット絵でした。なんで！？
「ふふふっ。存分に遊びなサーイ、子どもたち」
　ゲームの世界はピコピコチカチカと明滅して、なんともきらびやか。子どもたちの笑顔だって、光り輝いて見えました。
　露草はいつまでも、彼らを見守り続けるのでした。