ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

　そして、満を持して会場入りした八神修は使命感に震えていた。
（俺は動物が好きだ。俺は動物が大好きだ。犬が好きだ。猫が好きだ。馬や鳥や兎やハムスターも大好きだ！）
　受付に並ぶ八神の脳内に、国営放送のドキュメンタリー番組で流れそうなＢＧＭが流れ出す。

『プロフェッショナル　～八神の流儀～』

　そんなテロップまで脳内に流れ出す。
（彼等は俺によく懐くし、寄ってくる。寝子高入学してから約15ヶ月、俺は今まで動物園で白熊に懐かれたり、遠足で羊に埋もれた時もあるからな！）
　あと、牧場で動物たちに誘拐されて悪魔合体して帰ってきたこともあったよね、君？
（特に猫が大好きだ。今日は俺の家族を連れてきたぞ！）
　飼い猫も今回、無料で予防接種と健康診断が受けられるとあって、八神は自室で買う猫たちを一斉に連れ立っていた。
　その数、なんと10匹！
　内訳は『若い黒猫＋テオ似の子猫テオテオ＋長毛種のロング＋成猫７匹』だ。
　星ヶ丘寮の使用人たちの手を借り、肉球スタンプの数を稼ぎつつ、家族の健康面のメンテナンスをしようという八神である。
「次の健康診断受診までの機会を伸ばせるな。これからも、こういった行政のアクションが充実することを切に願うばかりだ。ありがとうございます、三折部さん！」
　頭を下げる八神に、苦笑いで返すスタッフの三折部。
「いや、御礼は私ではなく町長に言ってください」
「この島の飼い猫だって、立派な島の家族です！　肉球スタンプを押していただく代わりに、是非、無料検診を受けてもらいましょう！」
　その隣で感涙するリッカルド町長の暑苦しい事この上なさと言ったら、猛暑日の本日は特に勘弁願いたかった。
　町長の熱意は八神にも伝染したようで、胸を張って誇らしげに宣言した。
「町長、俺はとても動物に好かれやすいんです。そんな俺がやらない筈がない！　今日はたくさんの島の猫に検診を受けさせてあげましょう！」
「頼んだぞ、少年！！」
　両者ガッチリと熱い握手を交わせば、体感温度が更に上昇してしまった。

「暑い……。休日出勤でこの炎天下は辛い……」
　社会人二年目になると、もう夏休みなんて本当に過去のものになってしまったなあと、遠い目をしながら実感する三折部。
　進学した子と違い、高卒で就職した彼女、高校３年の９月は地方初級（高卒）試験を控えていたため、最後の追い込みに賭けていた。
　つまり、実質、三折部の高校生活の夏休みは２年生までである。
「今日みたいな晴天の日はきっといい波来てるんだろうなあ」
　ああ、海に行って波に乗りたい……。
　サーフィンを愛する彼女は汗ばむ額をタオルで拭う。
　だがボーっとしている暇はない。
　まもなく開会式。
　三折部はプロジェクトリーダーとして、挨拶と進行を果たさねばならないのだ。