ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

　かまタルコンビも会場で一休み。
　既に充分な猫たちが会場でスタンプと検診を行っているため、腰を落ち着けることになった。
「冷たいものもらえるらしいし一休みするかい？　時間的にも終わりだろう？」
　鎌八はスイカを選んだ。
「１時間、あっという間だったね。僕はそうめんにしようかな」
　響がそうめんを手に取ろうとしたその時、思わず身を強張らせる。
「あ……」
「どうした、にゃんこたん？　って、ああ、なるほど」
　そうめんは、水が張った桶に中に入っていた。
「水溜りとかに濡れたら猫になっちゃうから気をつけなきゃ……」
「さすがにアレを頭から被るなんてことはないと思うけど」
　響のろっこん『チェシャ猫』は、頭から水やお湯を被ると猫に変身してしまう効果を持つ。
　万が一、この会場で猫になってしまったら……。
　予防接種の注射が待ち受けていることに！
「でも、用心はしておかないと……」
　めんつゆの入った器を手に取った響は、恐る恐る、そうめんの入った桶に手を伸ばす。
　その時、事件は起こった。
「誰か～！　その子猫を捕まえて～！」
　三折部の叫び声が会場に響く。
　スタンプを嫌がって逃げ出した子猫が暴走した車の如く猛スピードで辺りを暴走！
　至る所にぶつかっては物を散乱させ、次第に食べ物を用意している仮設テントへ突撃！！
　三折部たちスタッフも猫を追い掛けて仮設テントへ押し寄せてきた！
「その子のスタンプで記録更新できます！　残り時間あと５分です！　捕まえてください！！」
　周囲は騒然、大混乱！
　そうめんは桶ごと中身がぶちまけられるなど、もうしっちゃかめっちゃかだ。
　そんな中、対岸の火を眺めるが如く、そそくさと退避していた鎌八はスイカを頬張っていた。
「あらら、あと１頭で記録更新になるのに残念だな。って、にゃんこたん？」
　先程までいた響の姿がない。
　代わりに、彼の足元にいるのはずぶ濡れの一匹の猫。
「にゃあ……」
　鎌八は確信した。
　間違いない。この猫は響の変身した姿だ、と。
「おいおい、あの騒動に巻き込まれたのか？　もしかして、そうめんの水を被っちまったか？」
「にゃあ……」
　しょんぼりする猫響の喉を優しく鎌八は撫でてやった。
「ドンマイ、にゃんこたん。ところで、早く逃げよう。でないと……」
　だが、鎌八の懸念はすぐに現実となった。
「あっ、あそこに別の猫がいるわ！　あの子にしましょう！」
　三折部に発見され、猫響は強制連行。
　問答無用で肉球スタンプをぺったん。
「さぁ、次は健康診断よ。大丈夫、すぐ終わるわ」
「ニャー！！（注射は嫌だー！！）」
　全力で抵抗する猫響が脱走！
「え、ちょっと！？　また脱走！？」
　猫響を追い掛けて、スタッフや参加者が追い回す大捕物劇に大発展！
「あー、みんなに追われてるわ。ガンバレにゃんこたん、うまく逃げきれー」
　鎌八はアイスを食べながらそれを観察。
　頃合いを見て蜘蛛の糸を発射、猫響を粘着糸で鎌八の手元に引き寄せた。
　そのまま鎌八は会場の裏手へ避難。
　ちょうど響のろっこんの効果が切れて人間に戻った頃合いだった。
「あいよ、ごくろうさん。アイス食べる？」
　ぐったりしている響に、バニラアイスバーを差し出す鎌八。
　響はそれを受け取って、すぐにはむはむと口に含んだ。
「あ～、生き返る～。運動の後のアイスが美味しいよ……」
　響は朱肉で真っ赤になった右手を眺める。
　大騒動だったが、自分の手形（肉球）が記録更新の決め手になった事は、ちょっぴり誇らしかった。

　こうして、『ワンアワー・猫パンチ』アクションは大成功！
　記録は101個の肉球スタンプを集め、ギリギリ記録更新！
　希望者は有料で認定書を発行してもらい、夏の日の思い出がまたひとつ、加わったのだった。

　イベント後、猫たちは桜庭やサキリなどの有志たちが元の居場所へ返しに島中を飛び回っていた。
　その際、『汗だくになってリアカーを引っ張る不審な緑髪のゴスロリ少女がいる』と島中がざわついたとか？

＜了＞

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あとがき

担当マスター：焼きスルメ
ファンレターはマスターページから！

祝・ギネス記録更新！
おめでとうございます、寝子島世界にギネス記録が誕生しました。
……もちろん、この記録は実在しておりません、多分。
実際、町おこしでギネス認定イベントを開催する事例は数多いのです。
今回のシナリオでそれを仮想体験できたのならば幸いです。

さて、皆様にはこのシナリオで以下のアイテムを獲得したとみなされます。

【獲得アイテム】
＜名称＞
『ワンアワー・猫パンチ！』世界記録認定書
＜説明＞
１時間以内に肉球を101個スタンプとして集めた世界的な記録の認定書。
あなたの名前が入った世界でたったひとつの夏の思い出。

※実際に別のシナリオで持ち出す場合は、アイテム申請を行ってください※

猫集めのアイデアも様々で、執筆がとても楽しかったです！
それでは、また別の機会でお会いしましょう。
乾物こと焼きスルメでした。

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