ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

　真境名アリサは猫好きガールである。
「やった、ののこって子から貰ったチラシに書いてあったイベント、ちょうど仕事が休み！　あたしも行けるわ！」
　カレンダーの前で思わず拳を握り締める真境名。
「あ、ギネス記録に挑戦するのよね。うーん、効率よく猫を会場へ集める方法は……」
　しばらく彼女は思案するも、なかなか良い案が思い浮かばない。
　そして当日、考え抜いた挙句、真境名は「やっぱり猫じゃらしで誘うのが一番よね」ということで、猫じゃらしを数本用意して会場入り。
　様々なタイプの猫じゃらしを用意することで、猫たちを飽きさせずに誘導しようという腹積もりだ。
「とはいうものの、あまり遠くの場所を探しても、会場へ連れて行く間に逃げられるかもしれないわね。何匹か集めるには、やはり近場が一番だわ」
　イベントが始まるまでの間、真境名は猫じゃらしを使って猫を誘導するイメージトレーニングに励む。
　その成果や、如何に？

「おっ、海！　ボランティアやってるのか。今日も暑いな」
　御剣刀が受付にやってくると、急に顔が赤くなってゆく小山内。
　スケッチブックに書く文字の動作も、緊張気味だ。
『こんにちわ、刀』
『とてもあついから、水分ほきゅうはわすれないでね？』
『これ、さんかしゃのゼッケンだよ』
　ドキドキしながらゼッケンを手渡す海。
「サンキュ。そういう海も熱中症に気を付けてくれ」
『ありがとう、刀』
『刀はやさしいね』
　小山内が礼を言うと、自然とふたりは見つめ合う。
　まるで時間が停止したかのように、じーっと視線を絡ませ合う小山内と御剣。
　そのふたりに這いよる、緑のゴスロリが！
「アツいね～！？　ここだけ気温が50度くらいあるんだけどぉ！？」
「うるせぇ桜庭！　溶けろ！」
『……いいところだったのに』
　ふたりから総ツッコミを受ける桜庭。
「てか桜庭、お前も参加していたのか」
「もちろん、刀くん！　なんたってマドカ・サクラバ with Ｎだよ！　ちなみにＮはにゃーくんのＮだよ！」
　にゃあ♪
　桜庭の飼い猫のにゃーくん、今日も藍染めのバンダナでオシャレに決めている。
　飼い猫もＯＫとのことだから、ということで、にゃーくんに予防接種を無料で受けさせようと桜庭はしていた。
「それにボクは、この日のために完璧な作戦を計画しているのだ、ふっふっふっ！」
「やけに自信たっぷりだな……。まぁ、お互い頑張ろうな。そうだ、にゃーくん、煮干し食べるか？」
　御剣はにゃーくんの鼻先に煮干しを差し出して左右に振れば、御剣の指ごと煮干しへ猫パンチ！
　煮干しは粉砕！　破片が御剣の顔面にヒット！
「！？　破片が目に！　涙からだしの香りが！？」
「にゃーくんの猫パンチは世界を狙えるからね、仕方ないね」
　ボクシングの心得がある桜庭の愛猫らしいといえば、らしいのだろうが、当のにゃーくんは粉砕してしまった煮干しの行方を探すように周囲をきょろきょろしていた。
「あー、びっくりした。にゃーくん、すげえな……。そういえば猫の健康診断と予防接種もそうだけど、今回はギネスにも挑戦するみたいだし、気合が入るよな。ギネスブックに載るとかちょっと格好良くない？」
「男の子ってそういうの好きだよねー」
　茶化す桜庭、それをジト目で睨む御剣。
「いいだろうが、ギネスブックだぞ、ギネスブック！　しかも、お金を払えば証明書を発行してくれるらしいぞ、名前付きで。俺の部屋にギネス記録の証書が飾れるのか。胸が熱くなるな！」
　目を輝かせる御剣に、思わず笑みがこぼれる小山内。
『今日はがんばろうね、ふたりとも』
「うん、海ちゃんもボランティア頑張ってね！」
「よし、やるぞ！」
　なかよし３人組は互いの健闘を誓いあうのだった。