三不管ノスタルジア｜リアクション

三不管ノスタルジア

１７.屋上からの脱出・その２

　「ご苦労さまでした」
　女性の肩を優しく叩き、解放する。
　『アゴーニ』で撃ち殺してもよかったのだが、女性は脅されながらも誠実に道案内をしたということをナタリアは評価したのだ。
　「も、もう帰るわ！」
　足がもつれながらも女性は肩紐がずれたキャミソールを直しながら走り去る。
　そんな彼女を一瞥してから別方向に人影が見えたことにナタリアは気付く。
　「貴方がゲームマスターですか？」
　彼女とは別経路で屋上へ上がってきたばかりのセルゲイに問いかける。
　セルゲイもまた脅していたチンピラを投げ捨てたところだった。
　「違いますヨー。Нет」
　眼鏡をかけたセルゲイは人懐こい笑顔でナタリアに答える。
　「そうですか、では仕方ありませんね」
　セルゲイの言葉を信じたのか、この場にはもう用がないと言わんばかりに彼女は渦へと飛び込む。

　「――このシャングリラ。もう少し味わいたかったがな」
　セルゲイもナタリアが飛び込んだのを確認してから渦へと入る。

　時刻は午前４時４０分。

　脱出成功：【ナタリア・シシロヴァ】、【セルゲイ・ボスコフ】

　「……ブチ抜くぜ……！」
　前衛を務める庚が、額の傷をなぞりろっこん『蒼穹』を発動。蒼く輝く拳が天井や瓦礫をぶち抜いていく。
　「エレノアさん無事かなぁ」
　すばるはろっこん『ちくわ☆ビーム』で庚が抜いた穴から降ってくる瓦礫やらよく分からない配線などを冷凍ビームで一時的に凍結、固定していく。
　「あの人なんだかんだで何とかしそうだけど」
　叶が口の中で何かを味わいつつ、屋上へ向かう為の梯子を召喚してはショートカットを形成していく。
　「っつか、今更気付いたが岩国！　お前のろっこんなら隙間を連続して移動し続ければ屋上まですぐなんじゃねぇか？」
　庚が屋上までの最後の大穴を開けたときにふと気づいたように尋ねる。
　「キャハハハハハ！」
　何かを誤魔化すようにソワカはテヘペロのポーズを決めて笑うのだった。

　脱出成功：【秋宮叶】、【新井すばる】、【岩国ソワカ】、【如月庚】

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