＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●寝子島：なぎさメモ

　図書館に移動し、海とも合流したなぎさと武道は、永田先生とともに古語版の現代語訳に挑んだ。
　わかったのはおおよそ次のような内容である。

　――神代の時代、天に女神あり。

　――ある時、月光に照らされ地に落ちた女神の影から狼姿の神が生まれた。

　――狼姿の神は絶神となり、真の永遠を求め、天を戦いを挑んだ。

　――絶神の望みは永遠のある世界。
　　　花は落ちず、人は死なず、永遠にあり続ける世界。

　――ところが半身ともいえる女神の望みは違っていた。
　　　花は落ち、人は死に、永遠のない世界。

　――絶神は不死鳥の子を従え、女神は猫を供として戦った。

　――永き戦いの末、傷ついた女神は絶神を道連れに天から落ち、落神となった。

　訳した折本の内容は、もうひとつの落神伝説ともいうべき内容だった。
「これは……俺も初めて聞く話だな」
　なぎさが纏めたメモを覗き込み、永田先生も驚きの息を吐く。
　武道が眼鏡をくい、と上げた。
「『裏』落神伝説ってカンジだね☆」
「『真』落神伝説かも」となぎさ。
「あり得る☆　だけど、どちらにしたって、」
　クロードや青の幽玄の人たちのことを思うと、永遠がいいとは思えないけどな、と武道が小声でつぶやくと、そばで見守っていた海も首肯した。
『遺跡の小部屋で見つけた壁画の意味は、分かったね。ここに書かれている伝説を描いたものと考えて間違いないんじゃないかな』
「赤の回廊の小部屋――狼が烏を従えるような画だったけど、描かれていた烏はやはりクローネだろうってこともね☆」
　クローネは天界で生まれた不死鳥の子であった。真っ黒なカラスの子の姿で生まれたクローネが、自らが異端であると感じ、劣等感を育んでいったことは想像に難くない。だからこそ、絶神と共鳴する部分もあったのではないだろうか。
（絶神のほうも、クローネの劣等感に付け込んだ？）
　海は、送られてきた『狼の前に傅く烏の壁画』を見つめ、思う。

　武道は、みんなの『もっと知りたい』を感じ取って言った。
「……みんな、提案☆　こーゆーのは年長者が詳しいと思う。花森さんとこ、行ってみないか？」
　ここで、永田先生とは別れることになった。
「申し訳ない。このあと別の予定があってね」
「いえ、付き合っていただきありがとうございます。お陰で調べ物が捗りました」
「何をしているかは敢えて聞かないが……頑張れよ」
「はいっ☆」
　ありがとうございました！
　三人は手を振って去る永田先生に深々と頭を下げたのだった。