＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●鈴島：青の回廊、髑髏茨

　真っすぐ続く回廊の奥から、のそり、ざわりとゾンビめいた足取りで現れたのは、人間より一回り大きな人型のモンスター。その全身は絡みあった茨で出来ており、頭は髑髏のように目の部分が空洞になって、赤い光がぼうっと灯っている。
　亮は振りかぶると、ウェストポーチの中に詰め込んできた硬球を次々と投げつけた。
　肩に当たる。蔦がはじけ飛ぶ。
　腿に当たる。風圧で葉が散る。
　小部屋から真っ先に飛び出して来た焔が、硬球に加えてエアガンでの射撃。
「……もう何があっても驚かないつもりだったけど、」

「まさか寝子島に帰って来てもモンスターと戦うコトになるなんてね」

　ばしゅっ、ぱしゅっ！　と立て続けに撃ち付けるが、弾は髑髏茨の体を貫通し、あまりダメージになっていないようだ。茨の蔦がざわっと毛羽立ち、足を引きずるようなぎこちない歩みで、一歩一歩近づいてくる。
「植物だから火には弱そうだけど、あたしには手段が無いわね」
　一緒にいる誰かが使えたりしないかしら？　と思ったが格闘系メンバーが多く、火という手段はなさそうだ。
「それなら、」
　焔はエアガンを仕舞うと、代わりにバックに入りっぱなしだった中国土産を握った。
「邪悪なナニカならこの桃木剣が効くかな？」
　焔は床を蹴り、まっすぐ髑髏茨へと駆ける！
「援護する！」
　亮は息を吸い（３倍！）と唱えて中威力で＜鬼人の体（サード・フォース）＞を発動させると、倍化した身体能力と絶妙なコントロールで硬球を投げつけ、焔に向かって振り上げられた髑髏茨の右手首を弾き飛ばした。葉や蔦が散り、髑髏茨が一瞬怯む。その腹へ、焔が両手に構えた桃木剣で鋭い突きの一撃！
「手ごたえあり！」
　剣を引き抜き、飛び退る。
　腹を突かれた髑髏茨もまた、よろめくように後退りした。
　剣に触れた部分がしゅうしゅうと煙を上げ、火傷に似た症状を呈している。
「桃木剣、効くわ！」
　焔の声に、刀が応えた！
「神薙、しゃがめ！」
　焔が地に伏せたのと同時、刀は＜加速＞で一気に間合いを詰めた！
　桃木剣で髑髏茨の頭部を叩き潰すように殴る！
　＜加速＞のスピードを乗せた桃木剣は剣というより鈍器であった。
　髑髏の頭部はひしゃげ、胴体から千切れて吹き飛ばされた！
　それでも身体は刀を捕らえようと前のめりに動いたが、
「御剣！」
　と叫ぶ亮の声に刀が身を捩ると、背後から風を切って飛んできた硬球が刀の側面を掠めて髑髏茨の心臓を打ち抜き、上半身に穴が空いた！
　髑髏茨は仰向けにどうっと倒れた。

「俺達は出番なし、と。楽させてもらったな」
「いいんです。こうやってトドメを刺す役ですから」
　康と梢がぐりぐりと踵で髑髏茨の頭部を踏み散らかす。
　髑髏茨の目の空洞に宿っていた赤い光が弱々しくなって、ふっと消えた。
「これも遺跡の防衛機能ですかねー」
「かもな。だが、どうでもいい……向かってくる奴ぁ、蹴散らすだけさ」
　康は前方へ目をやった。海から送られてきた地図によると、この先は小塔のようだ。
「ひとまず小部屋にあった壁画やら、ここまでの経緯を、志波先輩や他の仲間たちに連絡しとくか」