＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●鈴島：緑の回廊、小塔

　小塔の中はがらんとして、ほの明るかった。
　中央に台座があり、地球儀に似た球体が乗っている。
　球体は、直径約１メートル。上半分が黒、下半分が白で、台座と水平に中心を貫く軸で支えられていた。
　ほの明るいのは、壁の一点から伸びた緑色の光が、球体の上の黒い面に反射し、天井に向かって一筋の緑色の光が伸びていたからだった。どうやら球体は、反射率の高い鏡のような性質であるらしい。
　小塔は吹き抜けになっていて、真上よりやや斜め下方に明り取りのような丸い窓があった。
　球体に反射した緑色の光は、その丸窓を抜けて外へと伸びていた。
「調べてみよか」
　真が台座に近づいていく。
「零神のお宝もあるんやんなぁ、どんなやろ……？　零神像の半身が、それぞれ赤い珠と青い珠もってたやん。やったら、ここに緑の珠もあったり……」
　台座をぐるり回って、皆を手招き。
「ビンゴ」
　腰の高さほどまである正四角錐台の台座の一面に、まさに赤や青の珊瑚玉と同じくらいの大きさの緑の珠が嵌っている。さほど大きくはない。大き目の梅干しくらいのサイズだ。
　その下に、上げたり下げたりするレバーのようなものがある。
　レバーは上がっていた。
「なんだかお月さま、みたいだ」
　ユチェンは球体に手を伸ばそうとした。が、その手を修が掴み止めた。
「待て。おかしいと思わないか？　いつから光は灯ってる？　外から遺跡を観察したとき見えたか？　いや、見えなかった。それに部屋の他の場所を見てみろ、埃っぽいのに、この球体には埃が積もっていない」
「つまり？」
　夏夜が問う。答えは薄々分かっているが。
「つまり、――俺たちより先に誰かがここに来て、現状のようにセットして行った、ってことだ」
「クロード、だね」
「他に考えられない」
「写真、撮っておこう」
　夏夜は現状を撮影し、寝子島の調査班と青、赤の班にもデータを送った。
「そのレバー、気になるわ。絶対何かの仕掛けよね？」
　とブリジットが言った。
「私の推測では――そう、こんな感じ」
　ブリジットはパチンと指を鳴らし、＜スポットライト＞を付けたり消したりして見せる。
「俺もそう思う。小塔にたどり着いたのは俺たちが最初みたいだ、他のところにも同じような仕掛けがあるかもしれない――危険かどうか、確かめてみようか」
　修はみんなに「いいか？」と目で訊いた。
　健吾とブリジットは即座に、真とユチェンも目を見合わせてから頷き、最後に夏夜も首肯する。
　修はレバーを下げてみた。
　ユチェンの咽喉が鳴った。
　しかし起ったことは、壁から伸びる緑色の光が消えた、ただそれだけ。
　修はレバーをもう一度上げて見る。
　光が点く。二度、三度。同じだ。
「間違いない。光の点灯スイッチだ」
　レバーの上げ下げに危険がないとわかり、一同はほっと緊張を解いた。
「僕、ずっと考えてたんだ。この施設はなんなのかな、って」
　夏夜が口を開いた。
「この遺跡は『絶神封印用施設』なんじゃないかな？」