――夢を見た。寝子島のどこかで、灰色猫と白猫がそっと鳴き交わしている。
青の幽玄から帰還して数日が経った。
この間に、持ち帰った経典や零神像などの調査が進められていた。
夏めいて暑いある日の午後、
伏見 真はシーサイドタウンにあるR&R Agencyの事務所を訪ねた。
自分たちと一緒に飛ばされてきた
申 雨晨ことユチェンのことが気になったからである。
少年はこちらに来てからは、R&R Agencyの事務所で寝泊まりしていた。
「ユチェンさん、元気?」
「はい。……あはは!」
答えるユチェンは、事務所で飼っている茶色いファラオハウンド犬のユリウスに顔を舐められていた。
すっかり懐かれたらしい。
言葉は相変わらず何故か通じているので、ユチェンもその点の苦労はないようだ。
真はデスクの方で宝の匣を調べていた
坂内 梨香の方に言葉を投げた。
「調査の方は進んどる?」
「まあまあよ」と梨香が答える。
青の幽玄で手に入れた経典、取り戻した零神像の半身、クロードの右腕、それから梨香が気になると言った宝の匣……調べるべきものは多くあり、手分けして調査をしている段階だった。
「零神像の胎内にあった地図が示す場所ははっきりしたわ。鈴島の、右の小さいほうの島ね」
「いつ行きはるん?」
「今すぐにでも……と言いたいところだけど……」
言いかけたそのとき、勢いよく事務所の青い扉が開かれた。
現れたのは、漬物屋『うめ河』の
梅川 照喜を伴った
ブリジット・アーチャーだ。
「大変よ! 四十九院 鸞先生が連れ去られたらしいわ!」
「四十九院先生って……あの真っ黒な服の?」
「そう。この『うめ河』のじいさんが見たって」
ぐい、と押し出された漬物屋『うめ河』の
梅川 照喜がいうには、幼馴染の
松田 晃正(星ヶ丘ホースクラブのオーナー)を訪ねに行った帰りに、見てしまったのだという。
「星ヶ丘ホースクラブから教会の方へ抜ける道あるじゃろう? そこで見たんじゃ、帽子からブーツまで真っ黒な美女を! イイ女じゃなあと見惚れていたら、突然、黒服で眼鏡で右腕がない男が現れてな。美女を抱えてあっという間に消えてしまったんじゃ!」
腰を抜かした『うめ河』のじいさんは、通りかかった――何しろあの道は、星ヶ丘方面への帰り道なのである――ブリジットに助けを求めたわけだった。
「黒服で眼鏡で右腕がない男……って、まさか」
梨香が思わず立ち上がる。ブリジットは頷いた。
「クロードの特徴に一致するわ。私たちが神魂の力で転移したなら、向こうだって同じかもしれない」
梨香は
リンコ・ヘミングウェイに目配せした。
リンコは電話の受話器を取るとどこかに掛け、受話器を押さえたまま報告する。
「鈴島行きの海上タクシー、さっき黒服の男女を乗せたそうよ」
「
クロード……現れたわね」
梨香は苦々しく言うと、受話器を押さえたままのリンコに海上タクシーを予約するよう指示をした。
それが済むと、関係メンバーに伝達して、寝子島に残って調査を続ける情報班と鈴島に渡る冒険班を募る。
冒険班は星ヶ丘の船着場に集合だ。
慌ただしくなった事務所の様子に、ブリジットは肩を竦めた。
「こうなるんじゃないかと思ってたわ。滝に落ちた悪党は復活するって、グランパも言ってたし」
「でも、なして四十九院先生を攫ったんやろ……」
「さあね。本人に聞けばわかるでしょ。私たちも行動開始よ。――ね、ユチェン?」
「はい!」
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
みなさま、台風や地震など大丈夫でしたでしょうか。当方、停電の影響を受けましたが無事です。
さて、伏見 真さん、ブリジット・アーチャーさん、ガイドにご登場いただきありがとうございます。
ご参加いただける場合は、ガイドの内容に囚われずご自由にアクションをおかけください。
そしてそして! 炎イラストレーターさんに
素敵なユチェンのイラストを描いていただきました。ありがとうございます!
さて<零神探訪>(ぜろかみ・たんぼう)シリーズ第3回目。
このシリーズは、3~4回かけて、冒険やバトルや旅をしながら、
寝子暦ゼロ年の落神や伝説、零神の宝について調査するシリーズです。
今回は、【A】寝子島パート(調査)、【B】鈴島パート<千年茨の遺跡>(探索)の2段構えになります。
零神の宝に辿り着けるかは、みなさま次第です!
※R&R Agencyはシーサイドタウンにあるオカルト調査会社で、
超常現象に理解があるひと・もれいび・ほしびとさんたちを
エージェントとして雇って事件の調査・解決をしています。
より詳しい情報はこちら
概要
神魂の影響(?)で中国へ飛ばされ、青の幽玄で零神像の左半身を手に入れた一行。
またまた神魂に飛ばされて今度はユチェンもいっしょに寝子島に戻ってきたが、
寝子島では四十九院先生が片腕の黒衣の男に連れ去られる事件が起こる。
さまざまな調査の末、一行は鈴島にある緑の茨に包まれた遺跡へ。
◇あなたの立場
R&Rエージェントの場合…アクション冒頭に【R&R】とお書きください。
一定の報酬が支払われます。
とくにアクションに書かなくても支給されたイヤホン型通信機器と、
エージェント間ホットラインで個別&グループで連絡を取り合えます。
そのほか………………………エージェントと連携をとってもよし、とらなくてもよし。
R&Rと対等な関係で協力しあうグループや個人。
今回からご参加の方…………R&Rの依頼で参加、噂を聞きつけて、巻き込まれて、など。
※このシリーズを通して、言葉は(神魂の影響で)だいたい通じます。
※このシリーズに参加していても、(神魂の影響で時空が歪んでいるので)
他のシナリオに問題なくご参加いただけます。
アクションについて
行動を【A】か【B】、どちらか1つ選ぶことができます。
【A】の結果によって、【B】の難易度も変わってきます。
※今回はスマホ、通信機で連絡を取り合うことができます。動画、写真なども送り合えます。
朝鳥 さゆるさん :青い表紙の折本(経典? 漢字で書かれている)
恵御納 夏夜さん :零神像左半身(女性面・赤い珊瑚玉を手にしている)
御剣 刀さん :クロードの右腕(黒布に包まれ干からびている)
上記のお三方は、参加いただける場合、9/14 24:00までに
入手した上記の品を、【A】寝子島に残して調査に回すか、【B】鈴島に持っていくか決めて、
コメントページでお知らせください。(他の参加者と相談してもかまいません)
不参加・表明なしの場合は、梨香が預かって鈴島に持っていきます。
青の珊瑚珠・<宝の匣>は梨香が鈴島に持っていきます。
【A】寝子島パート
こちらの選択肢は、寝子島に残って調査を進める情報班になります。
【A-1】~【A-4】から2個まで調査対象を選べます。
調査は写真やスケッチなどからでも出来ます。
【A-1】青い表紙の折本(経典?)のさらなる解読
漢字らしき文字で書かれているが、中国語とも日本語ともつかないようだ。
旧市街の古書店に古い書物が埃を被っているという噂。何かヒントがあるかも?
また、後半の数頁は白紙となっている。
【A-2】零神像の調査
高さ30センチほどの木製の像。女性型の左半身で赤珊瑚珠を手にしている。
縦半分に割れており、断面に鈴島らしき地図が沁みのように描かれている。
月光を当てると不思議な光り方をする……ような気がする。
【A-3】クロードの右腕の調査
黒布に包まれ干からびた腕。微妙に指先が動くことがある……ような気がする。
【A-4】その他……<宝の匣>や四十九院先生についてなど、気になることがあれば。
<Aパートの協力者NPC>(関わるアクションがあれば登場します)
梅川 照喜
美人に弱い旧市街・猫又川沿いにある漬物屋『うめ河』5代目店主。
四十九院 鸞が連れ去られるのを目撃し、事務所に来ている。
松田 晃正
梅川の幼馴染で、実は星ヶ丘ホースクラブのオーナー。
星ヶ丘ホースクラブにいる。幼い頃に落神神社でお化けを見たと言い張っている。
花森 妙(はなもり たえ)
漬物屋『うめ河』のお隣、花森家に住む百歳のおばあちゃん。花森家にいる。
足腰が丈夫だったころは、毎日落神神社の掃除に行っていた。
うまく話しかければ、古い話を思い出してくれるかも。
永田 孝文
旧市街の古書店にいる。古書解読の助けになるか?
【B】鈴島パート<千年茨の遺跡>の探索
こちらの選択肢は、鈴島に渡って調査を進める探検班になります。
<千年茨の遺跡>
鈴島(マップD-13)の右側の小さいほうの島。(タマクライのミルが封印されていたのとは別の島)
緑に覆われた石造りの遺跡。
いたるところに植物が根を伸ばし遺跡を覆っている。
回廊をしばらく行くと、緑・赤・青の色分けされた回廊が現れ、道が三つに分かれる。
それぞれの扉の先には曲がりくねった内回廊がさらに続いており、小部屋や小塔などとつながっている。
どの回廊を進んでも最終的には遺跡の中心部で合流するが、
探索を進めるにはそれぞれ試練を乗り越えなければならない。
遺跡のどこかに<零神の宝>が眠っているはずだ。
※遺跡の中で先行するクロードと邂逅する可能性があります。どの地点で邂逅するかは不明です。
四十九院先生の居場所・状態は分かりません。
行く先はどれかひとつを選んでください。
【B-1】緑の回廊の探索
緑の回廊の先では、意志ある茨が道を封じている。
茨はトゲのある蔦を伸ばして襲ってくる。切るとすぐに新たな芽が生えて増える。
光と水は好物。光や水のある方へ蔦を伸ばす指向性がある。
【B-2】赤の回廊の探索
赤の回廊の先では、ネムリグサと呼ばれるピンクの花が咲き誇っている。
ネムリグサの花粉を吸い込むと眠り込んでしまう。
眠るととても幸せな夢を見て、起きるのがいやになる。
もちろん、眠り続けた先にあるのは死だろう。
※眠って幸せな夢を見たい方は、夢の内容もお書きください。
【B-3】青の回廊の探索
青の回廊の先では、髑髏茨というモンスターが待ち構えている。
その名の通り髑髏のように茨を絡ませた人型のモンスターで、人より一回り大きい。
アンデットと植物の属性を併せ持つ。桃木剣も効く。
(1)髑髏茨×1
(2)髑髏茨(開花)×1……茨に薔薇の花が咲いている。
ただの髑髏茨より強力で、『魅了の花粉』をばら撒く。
魅了されると味方に攻撃してしまう。
<Bパートの協力者NPC>(関わるアクションがあれば登場します)
海上タクシーの船長さん
海のタクシー(小型船)の運転手のおじさん。星ヶ丘の船着場にいる。
鈴島へ海上タクシーで渡してくれる。
<持ち物>
基本的には本人が持っていておかしくない持ち物。
Aパートでは、寝子島が舞台なので、拳銃や刃物などの武器は多少制限されます。
Bパートでは、前回手に入れた武器・アイテムも使用可能。
寝子島で、なにか入手しておいてもOKです。(マスタリングする場合もあります)
ただし、星幽塔産の武器は持ち込めません。
<ろっこん>
ユチェンはひとですが、ろっこんに理解を示しているため、
彼らがいることによって使用が制限されることはありません。
登場NPC
坂内 梨香:R&R Agencyのボスで鈴島海賊の子孫。
行動は【B】鈴島に渡り【B-2】赤の回廊。
リンコ・ヘミングウェイ:R&R Agencyの調査員。
梨香の相棒。行動は【A】寝子島で情報班の統括。
ユチェン:
チャイナ服で、黒く長い三つ編みを後ろに垂らした、11才の少年。
ナイフの腕上達中。糸の付いた投げナイフもちょっとだけ使えるように。
行動は【B】鈴島に渡り【B-1】緑の回廊。
四十九院 鸞:
4月から寝子高、新任教師。黒衣の大人のお嬢様。
クロードに攫われたようだ。
クロード:
糸目で眼鏡で右腕のない黒衣の男。青の幽玄で滝に落ちたが生きていた。
零神像の右半身を所持。四十九院先生を攫った。
邂逅すると戦闘になる可能性が高い。鉄剣を操る。
青の幽玄で垣間見せたがまだ詳しく分かっていないろっこん的能力がある。
弱点は前回と同じ。
それではご参加お待ちしております!