うっすらと青みを帯びた霧が立ち込めている。
旅の一行は、帆を張った舟でゆっくりと川を遡っていた。
あたりは深山幽谷と呼ぶに相応しい景色が広がっている。
切り立った崖が聳え、岩肌にしがみつく様に松や柳の木が生えている。
川に竿さすのはユチェンである。川幅がひろく流れがほとんどないので風と少年の力でも進んでゆく。
「このあたりのはずだが……」
八神 修が地図を広げる。
霧と似たような幽谷の景色が続いているせいで、確かなことは分からないがそろそろ着いてもいい頃合いだ。
(零神像、こんどこそ見つかるといいけど)
胸の中でそう考えていた
小山内 海の鼻腔に、甘い香りが漂ってきた。
顔を上げると、川岸に、大きな大きな、見上げるばかりの桃の木が聳えている。
その根元付近にぽっかりと洞穴が空いていた。
ユチェンが指さす。
「あそこが、
青の幽玄の入り口だよ」
青の幽玄。
それは、中国の奥深く、霧深い深山幽谷を抜けた先にある、崖の岩肌に掘られた奇妙な村の呼び名である。その村では「人の死はかりそめ。人は死してなお生き続ける」という不死信仰があり、村の指導者は「天師」と呼ばれ、信仰の指導者でもあるという。
この天師なる人物が、自分たちの信仰に相応しい神の像として零神像を買い求めたというのだ。
しかし、神像を納めたユチェンも、天師が男なのか女なのか、若いのか年寄りなのかもわからないという。
「だって、黒っぽい漢服に頭巾をかぶって、顔の前に黒い布を垂らしてるんだ。しかも音もなく歩くんだよ」
桃の巨木の下をくぐり抜け、舟を岸に付ける。木の根に舟を舫うと、洞穴の中の一本道を進む。
するとその先がほんのりと明るくなり、吹き抜けの空間に出た。
縄梯子が下がっており、その下に、山吹色の道士装束の男が蹲っている。
「どうしましたか?」
修が声を掛けると、道士装束の男は、驚いた様子で一行を見遣った。
男は30代くらい。黒髪短髪で、糸目。丸眼鏡をかけている。
「あなたがたは?」
「少々、この村に用のある者です」
修は曖昧に事情をぼかし、訊ね返した。
「あなたはこの村の方ですか?」
「いいえ、私は麓の村の道士見習いでジンといいます。1週間前に、この村に行くと出て行ったきり帰ってこない師匠を探しに来たのですが……悪いことはいいません。あなた方、ここから引き返しなさい。この村はもうおしまいです」
「おしまいとは?」
「僵尸(キョンシー)ですよ! この縄梯子を上った先は、僵尸の巣窟です!」
(キョン……シー……? もしかして紅燈火街みたいに異変が……?)
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
小山内 海さん、八神 修さん、ガイドにご登場いただきありがとうございます。
ご参加いただける場合は、ガイドの内容に囚われずご自由にアクションをおかけください。
<零神探訪>(ぜろかみ・たんぼう)シリーズ第2回目。
このシリーズでは、3~4回かけて、冒険やバトルや旅をしながら、
寝子暦ゼロ年の落神や伝説、零神の宝について調査するシリーズとなる予定です。
※R&R Agencyはシーサイドタウンにあるオカルト調査会社で、
超常現象に理解があるひと・もれいび・ほしびとさんたちを
エージェントとして雇って事件の調査・解決をしています。
より詳しい情報はこちら
概要
神魂の影響(?)で中国へ飛ばされ、紅燈火街で零神像の行方を掴んだ一行。
故買商申 海波(シェン・ハボ)の孫、ユチェンを旅の仲間に加えて訪れたのは、
霧深い深山幽谷を抜けた先にある、山奥の崖の岩肌に掘られた奇妙な村であった。
この村のどこかに、零神像があるに違いない。見つけ出して手に入れよう。
◇あなたの立場
R&Rエージェントの場合…アクション冒頭に【R&R】とお書きください。
一定の報酬が支払われます。
とくにアクションに書かなくても支給されたイヤホン型通信機器と、
エージェント間ホットラインで個別&グループで連絡を取り合えます。
そのほか………………………エージェントと連携をとってもよし、とらなくてもよし。
R&Rと対等な関係で協力しあうグループや個人。
今回からご参加の方…………急に一行のもとに飛ばされて来た、旅の途中で出会ったなど。
※このシリーズを通して、言葉は(神魂の影響で)だいたい通じます。
※このシリーズに参加していても、(神魂の影響で時空が歪んでいるので)
他のシナリオに問題なくご参加いただけます。
青の幽玄(ブルー・アルカディア)
舟で川を遡った先、桃の巨木の足元に空いた洞穴が入り口。
人工洞窟と石造りの屋根や塔が混在しており、うっすらと霧かかっている。
「人の死はかりそめ。人は死してなお生き続ける」という不死信仰の元、
死者を生前の姿のまま墓室に安置する習慣がある。
村の指導者は「天師」と呼ばれ、信仰の指導者でもある。
修行に訪れるもののほか、下界との交流はほとんどないようだ。
※スマホなどは起動はしますが、基本的に圏外です。
<青字は『青の幽玄』に来てからわかる情報になります>
【1】居住区
崖に張り付くように岩肌に掘られた部屋が連なっている。
村人は、各部屋を住まいにしているようだが、どの部屋も物が少なく質素だが平穏であるようだ。
小さな窓がある部屋もあるが霧が入ってこないように木戸が閉まっている。
部屋と部屋の間は細い通路で繋がっている。
通路と部屋は、簡素な布で仕切られているだけで、通り抜けは容易。
村全体が大きな一つの家族のように暮らしているようだ。
【2】墓室
居住区の下層、円形の地下空間。居住区のあちこちから下りることができる。
壁面に床から天井まで棚が据え付けられ、死体が安置されている。
【3】兎の塔
村の西、崖っぷちにせり出した石造りの塔。
下の方には入り口が見当たらないが、最上部に鉄格子の嵌った入り口がある。
何らかの方法で中へ入ると、下りの螺旋階段があり、塔の最下層まで降りることができる。
最下層の床には、兎のレリーフと、墓室へつながる階段がある。
【4】烏の塔
村の東、崖っぷちにせり出した石造りの塔。
上下に向かう螺旋階段があり、最下層が墓室とつながっている。
最上層に屋根はなく、壁面に烏のレリーフ。
【5】聖域
村の北、居住区の最奥。
月と太陽が描かれた扉で硬く閉ざされている。
月と太陽の中央部分はそれぞれ饅頭ほどの大きさにくぼんでいる。
扉の奥は聖域だという。
異変について
村の中を、死体たちが僵尸(キョンシー)化して動き回っている。
(以下のキョンシーに関する一般知識はジンさんから聞いたことにしてかまわないです)
僵尸は身体は硬く、バランスを取るため手を前に出して、跳ねるように移動する。
凶暴で人の生き血を求め、生きている者の首筋を狙って噛みつく。
噛みつかれた者は死者・生者問わず僵尸化すると言われている。
目は見えないようで、生き物の息を感知して襲い掛かってくる。
●僵尸(キョンシー)
生前と変わらぬ姿の死体妖怪。
時間が経つと硬直が解け、生前武術を嗜んでいれば、生前身につけた技を繰り出すことも。
主に居住区に出没。兎の塔、烏の塔へ行くPCがいれば追ってくる。
●乾尸(カンシー)
ミイラのように干からびた死体妖怪。
僵尸より脆く弱いが、見た目のインパクトはこちらの方が怖い。
主に墓室に出没。兎の塔、烏の塔では最下層の通路から現れる。
どういうわけか、天師はじめ、村人の姿が見当たらない。
アクションについて
<アクション例>
A.僵尸(キョンシー)と戦う
B.『青の幽玄』を探索する
C.ジンさんの師匠を捜す
など、ご自由にどうぞ。
場所は【1】~【5】のうちから1~3か所に絞ってアクションをおかけください。
<持ち物>
基本的には本人が持っていておかしくない持ち物。
前回手に入れた武器・アイテムも使用可能。
紅燈火街を出る前に『武器屋』やその他の店に寄ったことにして、なにか入手しておいてもOKです。(マスタリングする場合もあります)
ただし、星幽塔産の武器は持ち込めません。
<ろっこん>
ユチェンとジンさんはひとですが、現場は既に特異な状況になっているので、
彼らがいることによって使用が制限されることはありません。
R&Rのエージェントとして行動する場合は、アクション冒頭に【R&R】のタグを入れてください。
登場NPC
坂内 梨香:R&R Agencyのボス。
零神像を手に入れるべく奮闘するが、戦力的にはリンコに劣るので基本的に後衛。
リンコ・ヘミングウェイ:R&R Agencyの調査員。
梨香の相棒。
前回手に入れた短剣と拳銃を所持している。
ユチェン:
チャイナ服で、黒く長い三つ編みを後ろに垂らした、11~12才の少年。
ナイフを練習中。以前より腕は上がってきた。
ジンさん(静 先明(ジン・スアンミン)):
師匠を探しに来た麓の村の道士(見習い)。
年の頃は30代くらい。糸目で丸眼鏡をかけた黒髪短髪、中肉中背の男。
山吹色の道士服を着ている。
正直なところ、師匠はもうだめかもしれないと思っている。
僵尸の額に貼り付けて動きを封じる退魔の札を書くことはできる。
ただし実際に僵尸退治をしたことはないので、効果があるかは自信なし。
退魔の札づくりに必要な黄色の紙と鶏血(あるいは代用品)を入手する必要はあるが、
札は道士以外が使っても同様の効果あり。
そのほか、僵尸対応はいろいろ工夫してみてください!
それではご参加お待ちしております!