＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●エピローグ

　気づけば、皆、森にいた。
　鈴島の右の島の森だ。
　遺跡は、消えていた。
「え？　零神様が、負けた事になってる世界？」
　梢がきょろきょろすれば、康は海の向こうからしぶきをあげてこちらにやってくるボートを見つけて。
「切り分けられなかった方に、残されたんだろう。帰れって」
　あたりを見渡せばここに来た時のメンバーに加えて、四十九院先生も無事だった。

　一行は来た時同様、海上タクシーに乗り込んだ。
　船長はあれこれ聞きたそうな顔をしていたが、皆は曖昧に誤魔化した。
　島を離れてしばらく海風に当たっていると、突如、梨香が「ああああーーーっ！」と絶叫する。
「忘れてたわ！　お宝！！　何も手に入れてない！！　私としたことが……」
　あの『月』すっごく光っていたけど何で出来ていたのかしら、とか。
　小塔にあった仕掛けの地球儀みたいなのだけでも頂けばよかった、とか。
　そういえば、せっかく開け方が分かったのに玉手箱も使わなかった、とか。
　梨香はヒトリゴトを言って悔しがる。
「四十九院先生という宝が無事だったから良かったじゃないか」
　サキリが慰める。
「それにこれもある」
　とユチェン。手にしているのは、狼顔の左半身像だ。
　右半身像を守り通した夏夜が、ユチェンに話しかけた。
「合わせてみる？　僕は、零神像は元の形にして落神神社に戻したい。……安心させたい人がいるんだ」
「像を元通りにしたら、オレ、元の場所に帰るのかな？」
「わからない……怖い？」
　ちらりと真の方を見て、ユチェンは素直に頷く。
　すると梨香が琥珀のペンダントを取り出し、＜魔法使いの目＞で像に神魂の影響があるかどうかを確認した。
「今のところ確認できないわ。もっとも神様の像だから、合わせたときどうなるかは未知数だけど」
「後でにしよう」
　と夏夜は言った。
「寝子島について、みんなに会って、それから」

◇　◇　◇

　星ヶ丘の船着場には、連絡を受けた武道と海となぎさが迎えに来ていた。
　それぞれ抱き合って、互いの無事を喜び合う。
　遅れて露われたリンコ・ヘミングウェイによると、クロードが消滅したのと丁度同刻ごろ、事務所にあったクロードの右腕もまた、千年の年月が一気に押し寄せて来たかのように崩れて、塵となってしまったそうだ。
「ところで遅くなってしまったけれど、折本の白紙部分、画像解析したらこんなものが映っていたの」
　リンコはそう言うと、数枚の紙を見せてくれた。
　一枚目は、ネズミの血を浴びた一匹の黒兎。
　二枚目は、同じポーズを取った黒い兎が三匹。
　三枚目は、指を鳴らすようなポーズで手を高く上げた黒兎が、また一匹だけ。
「クロードの右腕にも同じような黒い兎のアザがあったんだ」
　武道が告げると、なぎさもはっとして。
「もしかして、これって、クロードのろっこん？　血を浴びて分身し、指を鳴らして元に戻るものだった？」
「そういえば遺跡の入り口にネズミの死骸があった！」
　円も手を打って納得した。
「黒兎……くろうど、クロード……月……絶神の、兎だったってわけか」

　一行はそのまま落神神社へと向かった。
　解読を終えた日本語版の折本を、古書店の店主に代わって祠に戻し、次いで、零神像と絶神像を並べおく。
「合わせてみるよ」
　夏夜がゆっくりと近づける。
　二つの像は、ぴたりと合わさり――

　何も、起こらなかった。
　光ったり、転移したりといった不思議なことは、なにも。
「もうすこし、一緒にいられそやね」
　真が嬉しそうにユチェンを抱きしめたのは、言うまでもない。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます。笈地です。遅れてすみません（土下座！）

皆さんのアクションが素晴らしくて「ここで解決かな」と思っていたのに
最後の方になって自分との戦いになり、今回けっこう難産してしまいました。

光や色の三原色については数名気付いてくださってました。

四十九院先生についてはみなさん「わかってたよ」っぽい感じで・笑
それでも信じたい、守るって方も多くて。ほろり。

らっかみ！当初からあって、
ものすごーくながーく掛かっちゃいましたが、
ようやく出せたーって話もあり。

難しいんですが、私としてもやりがいのあるシリーズです。

改めましてリアクションのお届けが遅くなりましてすみませんでした。
他のシナリオを挟んでになると思いますが、もうしばし、お付き合いいただければ幸いです。

あ！　ユチェン君はしばらく寝子島に滞在しています。
ちょっとずつ腕も上がってます。
いっぱい可愛がっていただいて嬉しいです！　
こちらも改めましてお礼をば。

ありがとうございます！

↑ページトップに戻る