黒い指先　――三つ目の願い――｜リアクション

黒い指先　――三つ目の願い――

●狂宴４

　廃ビル4階。ゴローは更に増やした護衛の幽霊と、操られ夢遊病者のように付いてくる青年を引き連れて、悠然と階下を目指していた。
　そしてふと、思い出した。そう言えば、そもそも俺がここに連れ出された元凶は、親と一緒に始末し損ねたさとみとかってガキのせいじゃないか。
　俺を騙して誘い出した、キレた小僧は幽霊に追われて逃げた。忌々しい。俺が外部に助けを求められないよう、携帯はどこぞへ投げ捨てられた。畜生、徹底的にやりやがる。
　だが邪魔なあいつが居ない今、さとみを探し出して、殺すのは容易い。

　――俺には、その力があるんだ！

　暴走を経、すっかり傲慢になったゴローの心には、すでに欠片程の良心も見当たらない。新たに漂っていた幽霊達を見つけると、まずは自分に注意を向けるよう懇願し、次いでそれぞれに尊大に言い放つ。

「この辺りに、小さい女の子が居るはずだ。お前達はそれを探せ！」
「お前達は、その邪魔をする者を殺せ！」
「そしてお前は――」
　ゴローは青年に指を突きつけると、“願い”を上書きする。

「その子を、ここまで引き摺って来い！！」

　青年が幽霊達の群れに混じって、背中を向けた。

　今度こそ。
　今度こそあのガキの息の根が完全に止まるのを、この目で見届けてやろう！

　2階。
　さとみは熊の縫いぐるみと、吉祥寺黒子に貰った子供携帯を抱えて、神魂の影響で発生した外部からは姿が見えなくなる隙間に隠れていた。
　不気味な静けさだ。未央には迎えに来るまで、声を潜めてジッとしているように言われていたが、こうも暗くて静かでは、おのずと不安が高まるというもの。
　携帯ディスプレイを、チラチラと覗き込む。
（ちょっとだけなら、黒子お姉ちゃんに電話しても平気かな？）
　小さな指は、ダイヤルキーをなぞっている。