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白い天井に太陽の光が差し込んで揺れている。
瞬きを繰り返す。
(ここ、)
枕に沈む頭を動かす。片方には閉ざされたカーテン、片側には閉ざされたクローゼットの扉。正面に視線を戻したところで、瞼を開いた途端に見えた見知らぬ天井。
(どこ……?)
そう思った途端、心臓が早鐘のように打ち始めた。冷たい汗が額に滲んだ。薄い布団の下の身体が熱を帯びたり冷たくなったりした。
胸の上に置いていた手をぎゅっと握りしめる。自分の身体が自分の思うように動くことを確かめ、ほんの少し安堵する。少なくとも、身体は動く。
ベッドの上に身体を起こす。きつく握りしめすぎて強張る手を開き、何度か深呼吸をする。うるさい心臓を無理やり静め、耳を澄ませる。
外に聞こえる鳥の声以外に、物音は聞こえてこない。少なくとも、この部屋の周囲にひとの気配はしない。
パジャマの足を覆う布団の中から抜け出す。冷たい床に裸足を付ける。ぐるり、頭を巡らせる。部屋の薄暗さに瞳を細め、閉ざされたカーテンを開く。
カーテンを開いた途端、眩しい朝の光が雪崩れ込んできた。
窓の外には、空があった。
遠くに見える海と、ベランダの柵に翼を休めて鳴き交わす雀とを交互に眺める。少し視線をずらせば、丘の上に広がる瀟洒な街並みが見て取れた。どうやらここは山の手の高級住宅街のマンション、それも最上階あたりであるらしい。
息を潜めるようにして部屋を横切り、ベッドルームの扉を開く。足音を殺しながら、直感に近く思う。見知らぬ家ではあるけれど、ここは、
(私の家……?)
開いたままのパソコンが置かれたリビングルームを過ぎ、キッチンを過ぎる。採光の考えられた明るい廊下を渡り、幾つもある別の部屋を覗いてみる。
どの部屋も綺麗に整えられ、埃一つなく掃除が行き届いていた。
どの部屋にも、他の人間の気配は感じられなかった。
(知らない人の家とかじゃないよね?)
玄関には女物の靴が一揃いあるだけ。サイズも趣味も同じ、おそらくはこの『自分』のもの。この家に住んでいるのは、自分ひとりであるらしい。
(……私……)
玄関にひとり、パジャマ姿で立ち尽くす。
(『私』、何者なんだろう……?)
自分に関する記憶も、自分以外のひとやものに関する記憶も、全て消えてしまっていることに、改めて途方に暮れる。
(自分の名前からして飛んじゃってる……)
唇の内側を噛む。どうしてこんなことになってしまっているのだろう。
(なんか、ゲームみたい)
こんなゲームがあった気がする。目覚めてみれば全ての記憶を失い、見知らぬ部屋の中に閉じ込められてしまう脱出ゲーム。
(あったとしても覚えてないけど)
肩に垂れる紅茶色の髪を掴み、背中に払う。そういえば、自分がどんな姿をしているのかも、今の自分には分からない。
華奢な手足に薄い胸、染色らしい寝癖のついた髪。眠たい身体を強引に起こして来たせいか、身体中に眠気の薄い膜がまとわりついている気がして息を吐く。
(自分の家なら、とりあえずシャワー浴びても大丈夫かな……)
家を彷徨う途中で見つけたバスルームに向かう。知らない場所で裸になってシャワーを浴びることのできる『私』の豪胆さに苦笑いする。
洗面台の鏡に映り込む『私』を見遣る。
寝癖だらけの紅茶色の髪に、眠たそうな黒いたれ目。運動が出来るようには見えない、筋肉も脂肪も薄い身体。
(……二十歳、前、ってところかな……)
学生か、新社会人といったところか。意識する『自分』よりも若干年嵩に見える『自分』の身分を検討しつつ、熱いシャワーを浴びて目を覚ます。
濡れた髪を乾かして適当な衣服を身に着け、溜息をひとつ。洗面台の鏡に映る『私』は、ひどく憂鬱な顔をしている。
(何でこんな目に遭わなきゃいけないんだろ……)
タオルで憂鬱な顔をごしごし拭き、バスルームを出る。ここが自分の家だとするなら、『私』に関する手掛かりのひとつやふたつ、容易く見つけられるだろうと思うものの、
(ああ、でもお腹空いた……)
くぅ、と空っぽのお腹が鳴いた。自分探しよりも先に身体の維持をすべきだろうとキッチンに立つ。戸棚からボウルを取り出し、冷蔵庫から小麦粉やバターや卵を取り出し、キッチンスケールで砂糖のグラムを量ったところで、はたと気づいた。
(……あれ?)
『私』は何を作ろうとしているんだろう、と考える間にも手は勝手に動く。
(お菓子か何か?)
混乱する頭を置き去りに、身体は慣れた仕草で材料を混ぜ、オーブンに火を入れ、スプーンドロップの素朴なクッキーを焼き上げる。
焼き上がりを知らせるオーブンから天板を取り出し、オーブンシートの上から焼き立てのクッキーを一枚取る。ふうふうと息を掛け、熱々のクッキーを齧る。ふわり、バターの香と小麦と砂糖の甘さが口いっぱいに広がる。口の中でほろほろと崩れてなくなるクッキーに、
「……うん、おいしい」
頬が淡く綻んだ。見知らぬ場所で生活をすることに対して強張っていた心が少し緩んだ。
(クッキー、記憶無くす前は得意だったのかな)
大振りに作ったクッキーを空腹に任せて二三枚お腹に納め、残りは皿に移す。クッキーを冷ます間に、『自分』の手掛かりを見つけるための家探しをしよう。
リビングルームで見つけたベルトポーチをテーブルの上に開く。
財布にスマートフォン、車を保管している車庫の証明書。それから何故か、工具類一式。
財布の中に挟まれていた免許証に記された名は、
(『
壬生 由貴奈
』……)
このマンションらしい現住所と本籍を確かめる。載せられた写真は、先ほど洗面台で見た『自分』の顔と同じ。であれば、
(『私』は『壬生由貴奈』、……なんだろうけど、……)
びっくりするほどぎっしりとお札の詰まった財布を見下ろす。レトロカーに近い車種を持ち、維持もしている。住んでいる場所もマンションもどう見ても高級な部類に入る。
(お金持ちなんだね)
何の感慨もなく、確認事項として思う。そんなことよりも、もっと自分の情報が欲しかった。
スマートフォンを手に取る。電源を入れたところで、パスコードを求める画面につまずいた。そんなもの、覚えているはずがない。
(うーん……)
免許証に見つけた自分の誕生日を入れてみるもロックは外れなかった。それ以外にロック解除のコードになりそうな自分の情報は今現在持っていない。思い出そうとしても何にも思い出せない。
(うーん、……)
テーブルに広げたものをバッグに仕舞い、ふらりと立ち上がる。リビングをもう一度見回し、ベッドルームに足を向ける。クローゼットを開いて、金庫を見つけるも、
(暗証番号……)
ここでもやはり、記憶喪失の壁に阻まれた。
(……どうしよ)
何も覚えていない、ということに改めて途方に暮れる。膝から力が抜けるまま、息を吐いてその場にへたり込む。両手で顔を覆おうとしたところで、
「ん?」
ベッドの枕元に写真を見つけた。
這うようにしてベッドサイドに寄り、薄っぺらな一枚の写真に縋りつく。写っていたのは、中年の男女と、今より幼い『自分』。状況から見て、これが『自分』の父母なのだろう。
写真に記された日付を見る。部屋の壁に掛けられたカレンダーを確かめる。写真を撮ったのは六年前であるらしい。
枕元にあった父母との写真に首を捻る。自分以外に誰も暮らしている気配のしない『自分の家』に視線を巡らせる。
(……一人暮らししてるのかな?)
思った瞬間、頬を冷たい涙が伝った。瞼を熱くし、目から次々と溢れて零れた涙が頬を伝う。顎から落ちてぼたぼたと膝に落ちる。指先で拭っても拭っても止まらない涙に歯を食いしばる。
(全然思い出せないのに)
どうして、と思うと同時、悟る。
(もう、二人とも……)
止まらぬ涙の理由は、そう考えれば理解できる。
濡れた頬を服の袖でごしごし擦る。涙の止まらぬ眼もごしごし擦る。嗚咽の漏れる唇をぎゅっと噛みしめ、立ち上がる。――これは、今の自分にはとても大切な情報だ。
写真を手に部屋を出る。ベルトポーチにお守りのように両親の写真を収め、家の外に出る。人気のない外廊下を辿り、エレベーターに乗り込む。
(それなら、……)
祈るように、思う。
(家の近くにお墓とか無いかな……?)
エレベーターを下り、広いエントランスを過ぎる。マンションから一歩踏み出し、初夏の光の中を当て所もなく歩き出そうとしたところで、
(……あれ?)
気が付いた。向かうべき場所を、足が知っている。
大きな葉桜と、その樹を護るような何本もの葉桜。それから、秋には鮮やかに色づくだろう紅葉の群。
木々に護られて、その墓地はあった。
(……やっぱりあった)
静かな庭のように整えられた墓地の一角で、足が止まった。墓石と向き合う。墓碑銘を掌で撫で、周囲に生えた雑草を引く。お墓の手入れをしながら、涙の伝う頬を固めた拳で拭う。
(……ごめんね、お父さんお母さん)
墓石の前にしゃがみ、瞼を閉ざして手を合わせる。
何一つとして思い出せないのに、そのはずなのに、胸を冷たい悲しみが満たしている。
(だからきっと、これは)
どれだけ辛かろうとも悲しかろうとも、『思い出さなきゃいけないもの』だ。
(お父さん、お母さん)
涙の跡が残る頬を、温かな手が撫でてくれた気がした。別の大きな掌が背中をさすってくれた気がした。
閉ざした瞼をそっと開く。合わせた両手を解く。屈めた膝に両手を置き、由貴奈は困り果てたように笑った。
(……危く、『うち』の大事なものすら忘れたままになるところだったねぇ)
頬を撫でてくれた掌に掌を重ねるように、頬の涙を自分で拭う。墓石に向かい、もう一度、今度は強く笑いかける。
(うん、でも、)
自分の記憶を全て取り戻せたのは今はいない二人のお陰のような気がして、由貴奈は囁いた。
「ありがとね。父さん、母さん」
初夏の光に紅茶色の髪を揺らし、墓石から視線を上げる。墓石の向こう、夏を待ち侘びて青く梢を伸ばす桜の樹々を見遣る。ほんの一瞬、どこか照れくさそうに汗ばんだ頬を緩める。
「夏が来るねぇ」
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年08月21日
参加申し込みの期限
2018年08月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年08月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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