冷たく深い海の底に引きずり込まれるような、闇の色した海藻に身体を絡め取られて身動ぎも出来なくなってしまうような、――そんな、言い知れぬ不安を覚えて目が覚めた。
ひ、と呑みこんだ空気が胸を圧迫する。瞬きも忘れて見開いた瞳に天井に唯一灯る豆球の朱い光が突き刺さる。
「っ、……」
蜘蛛の巣じみて体に覆い被さるタオルケットを蹴り飛ばして起き上がる。身体を起こした途端、目尻に溜まっていた涙が頬に冷たく垂れた。意味すら測れぬ涙を冷えて痺れる指先で拭う。瞬きを繰り返せば繰り返すほど、涙が湧いた。胸を焦燥感ばかりが満たした。
ひとり寝のベッドを見回す。
自分以外の誰もいないことを確かめる。
寝ていて、起きた。それは確かで、今居るここがともかくも己の部屋であることも、おそらくは確かだ。
そう広くない部屋に彷徨わせていた視線が止まったのは、開きっぱなしのクローゼットの一角に立てかけられた姿見の前。
冷たい床に裸足をつける。
一瞬、底なしの砂に呑みこまれてしまうような、嫌な感覚を覚えた。
震える息を吐き出す。得体の知れぬ魔物を見る気分で鏡の中を覗き込む。
薄暗い鏡の中には、恐怖に丸く目を瞠り夜闇より蒼白い顔をして、――見知らぬ人間が立っていた。
(わたし、……)
冷たいナニカに背後から抱きすくめられた気がした。背筋が凍る。身動ぎもできなくなる。
――わたしは、誰だ。
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今日は、三歩歩いてぜんぶ忘れたシナリオの第三弾をお届けにあがりました。
……ごーるどしなりおなのですが、ゴールドなぶん、それはもうごりごりざりざりたっぷり書かせて頂きますのでっ!
そんなこんなで、あなたはあなたのことを忘れてしまいました。ある日突然唐突に、自分のことや自分に関わるひとやものを綺麗さっぱりぜんぶ。
記憶喪失状態になるのは、日中でも夜中でも、自室でも道端でも学校でも、いつでもどこでも大丈夫です。
神魂の影響です。が、神魂のことを覚えていてもいなくても、どちらでも構いません。忘れてしまった記憶をどう思い出すのかもお任せいたします。
影響を受けるのは最長でも24時間程度です。時間が過ぎましたら、何事もなくても忘れていたことを全部思い出せます。忘れていたときのことはしっかり覚えています。
考えた末にナニカ大切なことをふと思い出して、それを手がかりにぜんぶ思い出したりとかでも、誰かに会えたお陰で突然思い出したりとかでも。
ともかくも、ある日突然前触れもなく記憶喪失になっちゃった?! な、あなたのお話をお聞かせください。そうしてわたしにあなたを書かせてください。
※『大切な誰か』がシナリオに参加している場合はGAをお組みください。シナリオにその方がご参加いただけていない場合は、『大切な誰か』の名前をお出しすることはできませんのでご注意ください。
NPCの登場は可能ですが、あまりに不自然な登場の仕方や行動の指定はできません。
特定のマスターが担当しているNPCや場所の描写はできません。ご了承ください。
※GAでない場合、今回は場所や日時が被っていても別の参加者さまとの出会いはないものとお考え下さい。
※GAを組めるのであれば、「記憶を失ったAさん(記憶ナシ)」と「Aさんのことを知るBさん(記憶アリ)」といった参加の仕方もできます。もちろん、両方が記憶喪失でどうしよう、というのもアリです。
※舞台は寝子島に限られますが、ほしびとさんのご参加も大歓迎です。
ではではっ、どなたさまもどうぞお気軽にご参加ください。お待ちしておりますー!