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「あ、」
ぴたり、足が止まったのは、とある喫茶店の前。
雑貨も扱う店の前、ふと、口の中いっぱいにいつか食べたスイーツの味を思い出した。
(美味しかったんだよなー)
窓から見える可愛らしい雑貨を眺めるうち、ふわり、不意に胸を満たした温かな想いに侑は戸惑う。
(ここで、貰ったんだっけ)
ここの雑貨を、『誰か』から貰った。
それは確かだ。それは確かに今、思い出した。でも、
(誰に?)
店内が見える窓の前に立ち尽くしかけて、両手でぎゅっと胸を抑える。『誰か』を、きっと何よりも肝心なことを思い出せないことだけを確かめて、喫茶店の前から離れる。
小走りにしばらく道を進んで、次に見つけたのは人通りの多い通りにある明るく賑やかな雰囲気のゲームセンター。
「あ、……」
通りに向けて大きく開いた扉の中から聞こえてくる電子音に思わず笑う。ここはよく来ていた。そんな気がする。
誰かの誕生日もここでお祝いして遊んだ。そうして、
(来年は当日に祝う、って約束したんだっけ……)
でも、誰と?
思い出そうとすればするほど、記憶に靄がかかる。『誰か』の笑顔が霧に呑まれてしまう。
(なんで、)
どうして思い出せないのだろう。
記憶の霧に呑まれた『誰か』のことを考えれば考えるほど、不安が胸に溢れて来る。
(分からないけど、……わかんないけど!)
真っ白になってしまった記憶の只中にあって、でもこれだけは分かる。わからない、ともがく中でも、これだけは理解している。
『誰か』との記憶は、忘れてはいけない記憶のはず。
なくしたくない大切な思い出のはず。
それなのに、失ってしまった。地団駄を踏みたい思いに駆られる。胸を掻き毟りたい。そうすることで思い出せるのなら、どれだけ血を流してもいい。
そこまで考えて、
(私は、……)
そうまで思わせる『誰か』への『自分』の気持ちを確かめたくなった。
深呼吸をする。ゲームセンターの外の自販機の脇に置かれたベンチに一度腰を下ろす。賑やかな音楽を背に、もう一度鞄を探る。
(確か)
お守りのようにずっと握りしめていたスマホを鞄に戻して、その代わり、手帳を取り出す。ハートやリンゴのシールで飾られた手帳を丁寧に捲る。スマホの写真にばかり気を取られていたけれど、『自分』が日々何か書き込んでいるはずの手帳にも手掛かりはあるかもしれない。『自分』の気持ちを知るための切欠が隠れているかもしれない。
予定表のあちこちにもぺたぺたと貼られたハート型のシールを指でなぞる。
(なんでだろう)
ハートもリンゴも、『自分』が好きというわけではないように思う。それなのにこんなにたくさん使っているのはどうしてだろう。目に入る度に気になるのはどうしてだろう。
手帳のページを捲って行ったその先、見つけたのは今日の予定。
念のためにスマホで今日の日付を確かめる。手帳にたくさんのハートマークと共に書き込まれているのは、『誰か』との待ち合わせらしい場所と時間。
スマホの地図アプリで待ち合わせ場所を確かめる。
(時間は過ぎてるけど、もしかしたら……!)
一縷の望みに懸け、立ち上がる。ハートやリンゴのシールでいっぱいの手帳を鞄に仕舞い、その瞬間にもそのマークを目で追いかけてしまっていることに気づいた。
くすり、笑う。そうか、と思い至る。
(だって)
ハートもリンゴも、『私』も、
(……好きだから)
名前もまだ思い出せない『誰か』が、
(好き)
記憶がぜんぶ無くなってしまっても、それだけは絶対。
(好きだって言ってくれて、)
ふわりふわりと記憶の霧の中から浮かび上がる『誰か』とのあやふやな記憶を掴みたくて立ち上がる。
(時々いじわるで、)
約束の場所に向けて駆けだす。
(それでも優しくて、……)
全身全霊で、走る。
(大好きな、大切な――)
雑貨も扱うカフェで『誰か』と一緒にスイーツを食べた。見かけた雑貨をプレゼントした。駅前のゲームセンターで一緒に遊んだことも思い出した。その日は『自分』の誕生日を祝って貰ったということも、来年は誕生日当日を祝ってくれると約束したことも。
学校にも行った。通りがかりに眺めて、何かの折に寒がっていた『誰か』に『自分』の学校ジャージの上着を貸したことも、それが切欠でクラスメイトや部活の仲間に散々からかわれたことも思い出した。
――それなのに、『誰か』のことが思い出せない。自分の記憶はあやふやながらも思い出しつつあるのに、『誰か』のことだけがまるで切り抜いたように記憶から欠落している。
(あんたは……)
記憶の中の『誰か』に呼びかける。
(お前は一体誰だ?)
ずっと呼んでいたはずの『誰か』の名前も思い出せない。
(どうして、)
それがひどく胸を切なくさせる。
(こんな痛くて、苦しくなるんだよ……っ)
息さえ苦しくさせる『誰か』への想いに途方に暮れる。どれだけ思い出そうとしても、『誰か』の記憶は戻って来ない。考えても考えても、『誰か』の記憶は真っ白な霧の彼方に消えてしまったかのよう。
昼下がりを過ぎて傾く太陽を仰ぐ。真っ青だった空も、あちらこちらを巡る間に茜の色に変わりかけている。
暮れ始める空に向け、息を吐き出す。
学校前のバス停に偶然停まっていたバスに何気なく乗り込み、空いた席のひとつに疲れた身体を着かせる。
(もう、帰ろうか)
そう思うも、帰る場所を未だ思い出せていないことに思い当たった。思わず苦く笑う。
バスの扉が閉まる。茜の道を走り始めるバスの中からぼんやりと道を眺めていて、――流れる景色の中に、ひとりの女の子を見た。
栗色の髪を黄昏の金色に染め何処かへと懸命に駆けて行くその女の子と目が合った、その刹那。
白黒だった記憶が、一気に色付いた。
重く揺蕩う霧が一陣の風に拭き攫われるように、すべての記憶が心に戻る。あるべき場所にあるべきものが帰る。
(見つけた)
そう思った次の瞬間には、運転手にバスを止めるように声を上げていた。怪訝そうな顔をしながらも止まってくれたことに詫びと礼を叫び、定期券を見せて慌ててバスを降りる。
(そうだ、)
黄昏の道を走る。
(俺はあいつと会う為に外に出たんだ!)
そうして、突然になにもかもの記憶を失くした。自分のことも、あの子のことも。思い出そうと足掻いてもがいて、ずっと探していた。
(大切な……っ)
先を駆けていた女の子の足が止まったのは、キャットロードの入り口。肩で息をし、周囲を見回す彼女が居るそこは、――偶然か運命か、今日自分が向かう筈だった場所。あちらこちらと彷徨ううちに、待ち合わせにしていた時間はとっくに過ぎているはずなのに、彼女はそこで立ち止まった。
華奢な胸を抑え、彼女が背筋を伸ばす。栗色の短い髪を夕暮れの風に揺らし、こちらを振り向こうとする彼女を、
「……遅れてごめん」
思わず、抱きしめる。
驚いたように震えた細い肩に怖じた。まるで知らない人を見るかのように仰ぎ見て来る彼女の黒い瞳にぎくりとした。もしかしたら、と思う。
もしも、彼女が自分と同じように記憶を失っているとしたら。
懸念は、けれど彼女の瞳に見る間に浮かんだ喜色に、ずっと頭を悩ませていた靄が吹き飛んだような鮮やかな彼女の笑顔に、綺麗に消えた。
「工藤君!」
明るい声で、――記憶を失っていた間も耳の奥にずっと響いていた通りの声で名前を呼ばれ、耀は破顔する。ぎゅっと抱きしめ返されて、今は照れよりも嬉しさが勝った。
「……なんで忘れてたんだろう」
小さく小さく、侑が呟く。
「七音」
侑の言葉の意味を問おうとして、ますます強く抱きしめられ、泣き出しそうな顔をぐいぐいと胸に押し付けられ、問うことをやめる。そんなことよりも先に、伝えたいことがあった。口にしたい名があった。
記憶を失ったことで、痛いほど分かった。
「好きだよ、侑。……大好きだ」
耳元に囁いた途端、侑の耳とうなじが真っ赤に染まった。いつものように恥ずかしがられてしまうかなと思ったのも束の間、侑は真直ぐにこちらを見上げて来た。夕陽よりも真っ赤な顔のまま、笑う。
「ウチも。あかるくんが、大好き!」
言わなければ忘れてしまうのを恐れるように、けれど今度こそ忘れないと誓うように、侑はきちんと声に出す。
お互いの心を伝えあって、ふたりは照れた顔を見合わせて笑い合った。
昼過ぎから、ふたりでデートをするはずだった。
やっと出会えた今はもう夕暮れではあるけれど、
「……今からでも、少しできねえかな」
耀の言葉に、侑は大きく頷く。
(忘れても、思い出せる)
きっとそうであるように、ギュッと強く、耀の手を握りしめる。夕陽よりも鮮やかにあかるく、笑う。
「どこ行こうかにー」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年08月21日
参加申し込みの期限
2018年08月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年08月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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