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三歩、進んで
Noir et blanc
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数歩先を軽い足取りで、いつものように迷いひとつなく進んでいた背中が、不意に揺らいだ。空を往く猛禽の羽じみた色した短い髪が初夏の風に揺れる。
何かを見失ったかのようにふらふらと周囲を見回し始める、己より少し低い鳶色のツンツン頭に、
タイラ・トラントゥール
は青空より深い蒼した瞳をしかめた。
「おい」
また何か突拍子もないことを思いついたのか、そう問おうとして呼びかける。
いつもならすぐに立ち止まり振り返るはずのその背中は、けれど声を掛けられたことに気づいていないかのように止まらなかった。
「おい、」
もう一度呼びかけて、やっと先を行く背中が止まる。不思議そうに振り返ったアンバーの瞳がまっすぐに己を映す。ゆっくりと瞬くその表情が、今までに見たことがないくらいぼんやりとして見えて、途方に暮れて見えて、タイラはますます顔をしかめた。
「……どうかしたのか」
知らず声が低くなる。まっすぐに対峙した琥珀の目をした少年が、今にも何処かに駆けて行ってしまいそうに思えて咄嗟に手を伸ばす。
掴もうとした腕は、逃げるように後退った。
「あのさ、」
いつもは勝気な笑みを絶やさない唇が、今は警戒に引き結ばれている。
(なんだ)
まるで見知らぬ誰かに向ける表情だ、と思って、思った瞬間に眩暈にも似た衝撃を受けて、
(なんだこれ)
目の前の少年に向け、衝撃を受けた己に向け、タイラは心中で呻いた。
目の前の少年が次に発する言葉に容易く想像がついて、だから聞きたくなかったのに、
「お前、だれ?」
少年は躊躇うことなくその言葉を口にした。
「いや、なんか全然覚えてなくて」
家に忘れ物をしただけのような軽い口調で首を捻る。
(いきなり何を言い出すんだコイツは……)
「ふざけているのか? トリ頭も大概にしろ」
そう思わなければいけない気がした。そう罵らなければいけない気がした。
「トリアタマってのがオレの名前……じゃねえよなあ?」
必死に吐き出した罵声をするりと受け止める様子に唇を噛む。
――お前、だれ?
(ボクの事が判らないだと!?)
ふざけるな、と思う。けれどそれは目前の少年に対してではない。
「竜世!」
何もかもを、――
源 竜世
としての自分自身のことも、今の今まで隣を歩いていた己のことも唐突に忘れてしまった少年の名を叫ぶ。叫びながら、胸に噴き出す感情の痛みに眉を寄せる。
(どうして)
胸を掴む。ひどく、胸が痛い。この痛みは何だ。
ずっと、出会ったときからずっと、思っていたはずだった。こちらの都合などお構いなしに平気な顔でぐいぐいと近づいてきた挙句、こちらの事情を知っても躊躇うことなく手を伸ばして来る鬱陶しいこいつと、どうにかして縁を切れないものかと。そうすればどんなにか清々するだろうかと。
そう、思っていた。それなのに、
(それがどうしてこんなにも)
悔しかった。
悔しいのだ、と思う。目の前の竜世が、隣に並んでいた自分のことを忘れてしまうことが、ただただ悔しい。それだけのはずだ。
唇の内側を噛み、竜世を睨み据える。
(忘れたままでなどいさせてやるものか)
「そっか竜世って言うのか!」
こちらの決意も何のその、何もかもを忘れた少年はカラリと笑った。
「なんかさ、もやもやしてた世界がちょっと明るくなった気がする。ありがとな!」
言うなりくるりと背を向けて駆けだそうとする竜世の腕を、タイラは咄嗟に掴んで止める。
「そんな様子でどうするつもりだ」
「だってなんかスゲーからっぽだ」
それが全てだとでも言いたげにきょとんと首を傾げる竜世は、記憶がないくせにいつもの竜世に見えた。
(だが、……ボクの知る竜世でもない)
胸に渦巻くもやもやとした気持ちが上手く言葉にならない。
「判らない。きちんと言葉にしろ」
「えー」
腕を掴まれたまま、竜世はしばらく考え込んだ。
「大事なものがいっぱい足りない気がする」
首を捻り、唇を尖らせ、あらぬ方向を見遣り、落ち着かなげにしながらも胸の内を言葉に変換する。
「なんかな、足元がぐらぐら? 落ち着かねーんだよな」
だから離せ、と腕を掴んだ手をぱたぱたと叩かれ、タイラはますます難しい顔になる。
「だからとは何だ」
「や、だって名前わかったし。とりあえず走って探せば他にも思い出すかなって」
考えなしなのは変わらず、その上今の竜世はあまりにも心許ない。
からっぽで足元がぐらぐらな竜世の腕を、離すことは出来なかった。
「名前を教えてやったのはこのボクだ」
「うん、ありがとな」
屈託なく笑う竜世の腕を離さぬまま、タイラはほんの少し口ごもる。
「べ、別にお前の事を心配している訳じゃないぞ」
言い訳じみて言い放ってから、では何故だろうと自分自身でも不思議になった。答えを探して竜世の顔を見つめる。不躾なはずの視線を受け止めて呑気に笑う竜世の様子に、自身の気持ちに思い至った。
(記憶のない竜世なんて危なっかしくて、……)
「……そう、危なっかしいんだ」
口にした途端、その言葉がしっくりと馴染んだ。それが正解であるように思えた。
「そうなのか?」
「そうだ。足りない頭で周りに迷惑をかけるに違いないからな!」
こちらを見ている間は背中を向けたりしないと理解して、タイラは竜世の腕を離す。いつの間にか丸まっていた背筋をぐいと伸ばし、胸を張る。
「だからこのボクが、し・か・た・な・く! 一緒に探してやる」
ついて来い、とばかり、先に立って歩き始める。そうしてから気づく。
(そうだ)
前を歩けばいい。そうすれば、置いていかれることはきっとない。
「お前もいっしょにいってくれんの?」
「いいか、勘違いするなよ!? 仕方なく、だ!」
ぱたぱたと追いかけて来て隣に並ぶ竜世の心底嬉しそうな横顔に思わず言い捨てて、記憶のない人間に言い過ぎたかと口を噤むも、
「これでやさしい友達がいるってことがわかった!」
竜世の嬉しそうな顔は揺らがない。
それが何故だか、妙に疎ましかった。
「別に」
ぽつり、零す。
「……仲が良かった、……訳じゃない」
自分と竜世は友達なんかではない。
己の放った言葉が己の胸に圧し掛かった。
「友達じゃねえなら……なんだ?」
不思議そうに問いかけてくる竜世にただ首を横に振る。友達でないというのなら、己と竜世は何なのだろう。
(別に)
考えようとして、やめる。
(ボクが覚えていて竜世が全てを忘れているのが気にくわないだけ……だ)
そうなのだと自分自身に言い聞かせる。隣で物珍し気に周囲を見回してはふわふわと歩く竜世をちらりと見遣る。少し下にある横顔を見て、見慣れぬことに戸惑う。
いつも見ていたのは、数歩先にある横顔だった。そのことに気づいて、
(くそ)
舌打ちせんばかりに歯噛みする。
気づいてしまった。
(ボクは、どこかで竜世を頼りにしていた)
それが何より気に食わなかった。足を速める。
「どこ行くんだ?」
何でもない顔をしてついて来て隣に並ぶ竜世に腹が立った。まっすぐに前を見据える。初夏の空を背負う九夜山へ視線を向ける。
「……八ヶ淵埋蔵金の洞窟」
そこは、竜世ともう一人と一緒に探検した場所。真っ暗な洞窟の中を、スマートフォンの懐中電灯アプリを頼りに皆で手を繋いで冒険したところ。
「まいぞー金!? すっげー!」
「言っておくが、埋蔵金など存在していなかったぞ」
興奮する竜世に釘を刺しつつ、ポケットからスマートフォンを取り出す。地図アプリを起動させるよりも先、アプリ一覧に表示されている『A.I.C.O.』のロゴマークが目に入った。
反対のポケットに仕舞った白虎のかたちをしたカプセルギア、『バルティーグル』にそっと触れる。
竜世のポケットにも、紅い竜のカプセルギア『スターライトナイト』とギアを起動させるアプリの入ったスマホが潜んでいる。タイラはそれを知っている。
「えー、あい、しー、おー? なにこれ?」
ひとのスマホを物珍し気に覗き込むなり、竜世は起動アプリの英語ロゴをたどたどしく読み上げた。今の竜世は、カプセルギアのことも記憶から失くしてしまっている。
「いいからさっさと思い出せ」
短く言い切り、タイラは地図アプリを起動させた。以前向かった際にアプリに記録させていた『八ヶ淵埋蔵金の洞窟』までの道筋を表示する。
「うわ、べんりー」
「トリ頭が使いこなせていないだけだ」
地図アプリを頼りに、寝子島高校の脇から九夜山に入る。
雑草に埋もれて荒れ果てた落神神社に辿りついたところで道を外れ、天宵川の根元を目指す。
紫陽花の路地を過ぎ、白粉花と姫女苑の茂みを抜ける。梔子の匂いのする石段を息を切らして登り、土塊が転がる緩やかな崖をよじ登る。がむしゃらに道を辿りながら、タイラはぽつりぽつりと言葉少なに語る。
ふたりで閉じ込められた不思議な箱の夢のこと。
ふたりで見つけた、ひとの想いによって色を変える花のこと。
竜世が風邪を引いたときのこと、土砂降りの中を駆けて来たときのこと。
話せば話すほど、その時々の気持ちが胸に蘇った。
「もう夏だなー、あぁっちー!」
「……そうだな」
文句も言わずに後をついて来る竜世を肩越しに振り返る。夏の気配のする森の中、竜世は服の襟をぱたぱたとしながら、にこりと笑み返して来た。
『からっぽ』で『足元がぐらぐら』な竜世の笑顔は、いつもと違う。違うくせにどこか同じで、
(苦しい)
タイラは竜世の笑顔から視線を逸らす。前を見据える振りをする。
(……ぐちゃぐちゃだ)
苦しさの中には、憤りがある。悔しさがある。やるせない気持ちがある。ぜんぶが混ざり合って、悲哀に似た色合いの感情になる。
(苦しい)
気持ちを持て余して、眉間にぎゅっと皺が寄る。
後ろから足音がする。追いついてくることも追い抜いて行くこともしない、大人しい足音。振り返れば、こちらを頼りにした笑顔が向けられる。
胸を詰まらせる己の感情に唇を噛む。
(さっさと記憶を取り戻せ)
そうして、いつも通りに笑えばいい。心底から思う。
(そっちのほうが遥かにマシだ)
記憶している限りの竜世の姿を記憶を持たぬ竜世に話して聞かせながら、タイラは獣道を辿る。やがて辿りついた葉桜の樹の根元から地下の洞窟に降り、真っ暗な洞窟をスマホの懐中電灯アプリだけを頼りに辿ろうとして、
「っ……」
往けるはずだと思ったのに、闇に足が竦んだ。
「タイラ、怖い?」
木の根の垂れ下がる冷たい洞窟に竜世の声が反響する。
「怖くなど、」
「オレは怖い」
暗闇の隣に、竜世の声が聞こえた。伸びてきた手がぐいと手を握った。暗闇に怖じて冷たくなった掌に、たくさん歩いてあったかくなった竜世の掌は熱いくらいだった。
「でもこれでへーき」
スマホの小さな灯りの中で、竜世が笑う。
狭い通路を肩をぶつけ合うようにして抜け、道の果てにある葛籠を開けてその中身に笑い合って、――けれど、竜世の記憶は何一つとして戻らなかった。
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年08月21日
参加申し込みの期限
2018年08月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年08月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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