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自転車のブレーキを掛ける。できるだけ慌てず、周囲に気を配りながらサドルから降りる。車道から歩道に移動し、路肩に自転車を寄せる。
何処に向かって自転車を漕いでいたのか、突然分からなくなった。
深呼吸をする。一度、二度。繰り返す。繰り返すうち、己の身に起きた異常に動悸が激しくなる。いつか同じような目に遭った気もしたけれど、その時も同じような行動を取ったような気もしたけれど、それは今の不安を増幅させる結果にしかならなかった。
自転車を支える手が震え始める。足元が崩れるような眩暈を覚えたところで、きつく瞼を閉ざした。震える息を噛み殺し、瞼を押し上げる。革靴の足元ばかりに落ちていた視線を己の身体に沿わせる。
(制服……?)
おそらくは高校の制服だろう。
自転車の籠には学校指定らしい鞄と、真新しい参考書が入った書店の袋。
鞄に手を伸ばす。自分のもののはずなのに、馴染まぬ手触りに寒気がした。誰のものとも知れぬ鞄を無断で開けているような罪悪感を振り払い、鞄を開く。使いこまれた教科書や付箋のびっしり貼られた参考書を鞄の中で押しのける。内ポケットに見つけた学生証と携帯電話を引っ張り出す。
学生証には、己の名前らしい姓名と住所、それから写真が記載されていた。
(
八神 修
)
自宅の住所は分かるものの、それが何処か分からないことに眉間に皺を刻む。
(八神、修)
いくら自分の名を繰り返しても、それが自分の名だとはとても思えなかった。違和感ばかりを抱き、学生証の本人写真を眺める。亜麻色の髪に赤茶色の瞳をした写真の中の少年は、何事にも動じなさそうな冷静な瞳をこちらに向けている。
(困った)
写真と同じ顔をしているはずの自分の頬を掌でごしごしと擦り、学生証を鞄に仕舞う。
携帯電話のロックが指紋認証で解除できることに安堵し、中身のデータを漁る。ともかくもと開いたアドレス帳は、『学校』、『親戚』、『仕事』、と几帳面にフォルダー分けされていた。ひとつひとつ開き、登録情報を確認してみて、
(なんだこりゃ)
思わず顔をしかめる。
会社名に団体名、役職名、凡そ高校生の携帯電話の中身とは思えない堅苦しい文字の羅列に、思わずアドレス帳を閉じる。どの電話アドレスに連絡を取ったとしても、『自分』を知る『誰か』には繋がるまい――確信に近く、そう感じた。
自分自身の記憶を探す手掛かりがないものかと写真フォルダを開く。日付順に表示した写真は、猫や犬に始まり、行事中らしい学校の景色、同じ学校の仲間らしい少年少女たちがはしゃぐ姿、何処とも知れない風景、――それから、
(この、女の子……)
ただひとりの、女の子の写真。何気ない表情の横顔、こちらを見てはにかむような笑顔、くすぐったそうなおどけた笑顔。色んな表情をしたツインテールの女の子の写真のデータがたくさんたくさん、収められている。
「修君」
透き通って明るい声に、けれど自分が呼ばれたとは気づけなかった。優しくよく通る声だなとちらりと思い、はたと思い至る。そういえば、学生証に見た『自分』の名も『修』だった。
「修君?」
二度呼ばれ、傍らに立たれ、慌てて携帯画面から顔を上げる。
自分の纏う制服とよく似たデザインの制服の少女がそこに立っていた。
栗色のツインテールに夏空色の大きな瞳、小柄な身体に儚げな容姿のその癖、表情は大らかでどこまでも溌剌とした彼女は、今の今まで画面に見ていた少女そのもの。
「君は、……」
けれど、今の『自分』には彼女の名前がわからない。
「ごめんな、……君は、誰?」
掛けてくれた声の親しさからしても、写真の多さからしても、大切なひとに違いないのに、その大切なひとの名前さえ思い出せない自分自身に唇を噛む。
少女は夏空色の瞳をまん丸く瞠った。驚かせてしまったことを申し訳なく思うと同時、そんな表情さえ愛しく思えて、
(……ああ、そうか)
悟る。
(俺は、この女の子が――)
七夜 あおい
、と名乗ってくれた女の子は、心配げにこちらを覗き込んでくる。
「どうしたの?」
そっと問うてくる声の優しさに、救われた気がした。胸を満たす安堵に、思う。もしかしたら、彼女と一緒に居れば元の記憶を取り戻せるかもしれない。
「修君」
名を呼ばれ、思わず破顔する。
「確かに、……どうしたの、だよな」
置かれた状況を打ち明けるべきか否か、迷ったのは一瞬だった。
突然に記憶喪失になった不可解でも、彼女なら受け入れてくれると信じられた。
「えーっと、実は」
何も覚えていないことを話す。自分自身のことも、今傍らに居てくれる女の子のことも、何処に帰ればいいのかも、何もかも頭の中からまっさらに消えていることを言葉にして、
「うん、……やっぱり、どうしたの、だよな」
置かれた状況に自分でも困惑しきってしまった。
「ともかく、家に帰るよ。住所は分かっているから、何とかなる」
学生証にあった住所は『星ヶ丘寮』で、『寮』であるなら同居の家族はいないかもしれないけれど、それでも『自分』の手掛かりは少なからず見つけられるはず。
「修君、」
「いらない心配を掛けた、ごめんな。でも、七夜さんと話せて少し気が楽になったよ」
きちんと笑えて、笑えたことに少し安心する。
「大丈夫、何とかする」
じゃあ、と振ろうとした手をぐいと掴まれた。驚いて振り返れば、彼女はなんだか怒ったような顔をしていた。
「家まで送るわ」
きっぱりと言われてたじろぐ。
「でも、」
「決めたの。修君を、修君の家まで私がちゃんと送り届けるから」
行こう、と先に立って歩き始める彼女の後を追う格好で自転車を押して歩き始める。少し進んでから、彼女はふと振り返った。初夏の空を背に鮮やかに笑う。
「あおい、でいいよ」
ぱたぱたと軽い足取りで戻ってきて隣に並んでくれる。
「いつもみたいに呼んで。記憶が戻る切欠になったり、……しない?」
悪戯っぽく言われ、心臓がどきりと鳴る。
「七夜さ――」
「あおい」
「……あおい」
彼女の名を呼ぶ。不思議としっくり心に馴染む彼女の名の響きに、唇が綻んだ。彼女と『自分』がどういう関係であるのかはまだ思いだせないけれど、今は、
(ご厚意に甘えよう)
決めた途端、肩が軽くなった。ひとりではない、というのはこんなにも心強い。
「あおい、俺ってどんな奴?」
胸に生まれた安堵のままに問えば、彼女は少し考えて後、指折り教えてくれた。
「いつも冷静で、優しくて、料理が上手で、――」
学生証に記載されていた『星ヶ丘』というのは、『寝子島』西側の山の手に位置する、所謂高級住宅街であるらしい。
瀟洒な屋敷が並ぶ坂道や整備された階段を上ったその先、海の見える丘に建つ洋風の一戸建てが『八神修』の自宅であると知って、思わず絶句する。
「寮……だよな」
確か、学生証には『星ヶ丘寮』と記されていた。
「星ヶ丘寮はどこもこんな感じだよ」
「もしかして、俺ってボンボン?」
言った途端、隣のあおいが噴き出した。
「なんかおかしい?」
問うた途端におかしくなってきて、修もまた笑った。
「入り口はこっちね。修君はその辺りに自転車を置いてたよ」
あおいの案内を受け、ささやかながらも洒落た門扉を潜る。教えられた場所に自転車を停め、玄関の前で立ち止まる。インターホンを鳴らしても出て来てくれるひとは居ない。
自転車の籠から下ろして来た鞄と参考書入りの袋を手に、制服のポケットを探り、鞄を探る。やっと見つけた鍵で扉を開けた瞬間、にゃあにゃあ、わん! 玄関口で待ち受けていた猫たちや犬の大歓迎を受けた。飼い主と同じに大歓迎を受けたあおいがちょっぴり悲鳴じみた声をあげる。
「っと、」
彼女の小さな悲鳴を耳にして、修は咄嗟に足元に尻尾を振って突進してきていた若い犬を両手で抱き上げる。何故だか、彼女が犬を苦手としていることを知っているような、そんな気がした。
「あおい」
犬を抱いたまま、修はちらりと笑う。
「送ってくれたお礼がしたい。コーヒーでも淹れるよ」
お礼されるようなことはしていないから、と遠慮する彼女に、重ねてそっと頼み込む。
「ごめん。もう少し、一緒に居てくれると心強い」
「それじゃ、……お邪魔、するね」
年上のお姉さんのような表情を見せて玄関から家にあがるあおいの小柄な背に、どうしようもなく安心してしまった。そのことに恥ずかしさを覚えて睫毛を伏せる。
その上、コーヒーを淹れてあげようとしたのに豆の場所が分からず、何度か家に来たことがあるというあおいにコーヒーを淹れてもらうことになってしまった。
(格好つかないなあ)
あおいが淹れてくれたものすごく苦味の効いた個性的な風味のするコーヒーを啜りながら、テーブルの向かいの席に座るあおいに笑いかける。
「不安、だよね」
「不安が無い訳じゃないけどさ」
「……きっと、大丈夫だからね」
『自分』を知る彼女の強いまなざしが嬉しかった。大丈夫だと言って貰えたことがありがたかった。
「うん、大丈夫」
彼女の言葉とまなざしが与えてくれた温かさを確かめるように、彼女と同じ言葉を繰り返す。そうして、ふとコーヒーの苦味に思い出した。自分は、彼女の料理を食べたことがある。美味しい、とは素直に言い難い、けれど何より嬉しい料理。
「あおい、ここで料理作ったことあったよね」
「……うん!」
大きく頷く彼女の笑顔に心配の色がなくなっているのを見て取り、修はつられて笑った。
苦味も酸味も強いコーヒーをお供に、たくさん話した。彼女が話してくれる彼女との思い出を足掛かりに、次々と、色んなことを思い出した。
「人間は、社会的な存在だ」
空っぽになったカップを前に、修は呟く。
「つくづく思ったよ」
向かいに座り続けていてくれたあおいに微笑みかける。
「認識してくれる誰かが居て、その人の中に居る俺が、俺を形作る要因になってるって」
「……修君だ」
ふふ、とあおいが楽しそうに笑う。屈託のないその笑みに、彼女にとても心労をかけていたことを知って悔やむ。
「心配かけてゴメ……」
言いかけて、頬を引っ掻く。じゃないな、と言い直す。
「有難う、あおい」
記憶を取り戻す要因となってくれた大切な女の子に、修は心からの笑みを向けた。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年08月21日
参加申し込みの期限
2018年08月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年08月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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