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初めは微かな違和感だった。
たとえば、踏み出した爪先の触れた先が硬い地面ではなく何もない空中であったかのような。
すとん、と空に落ちるかのような感覚を覚えて、思わずたたらを踏んだ。踏み代えた足がきちんと地面を踏みしめていることに胸を撫で下ろしたのも束の間、地の底に打ち付けられるように、気づいた。
(自分、は、)
自分の足で立っているはずなのに、ということは少なくとも今の今まで歩いてここに来たはずなのに、今立っているここがどこなのかわからなくなっている。
(……私は……)
身体の脇に垂れた指先が動いた。自分の意思で動くそれが、自分の指であることにどきりとする。間違いなく自分の手であることを確かめたくて、腕を持ち上げる。指先で頬に触れてみる。
(僕は、……)
胸の内に騒ぐ心が、これは紛うことなく己のものであるとは言い切れない気がして息を詰める。
(……俺、は)
探るように呟き続けていた一人称が、ようやく『自分』の枠にぴたりと嵌まる感覚を得た。けれど、それだけ。
(俺は、誰だ?)
己の呼称を得た瞬間、己を見失った確信を眩暈と共に得るに至る。
「っ……」
浅くなる呼吸を無理やり引き戻す。人気のない路地の何処かの家の壁に手をつく。足らずに肩を押し付け、瞼を閉ざして眩暈が落ち着くのを待つ。身体の感覚が記憶を持たない『自分』に馴染むのを待つ。
「なんだこれ……」
掠れた声が唇から漏れて、これが自分の声なのだと認識する。深く深く息を吸い込み、吐き出す。胸に満たした空気は、微かな海のにおいがした。
瞼を開く。
眩しい初夏の光に溢れた青空が見えた。
『自分』のものには違いない指先で、衣服を探る。
(何か、俺のことが分かるものがないか)
ぱたぱたとズボンのポケットを順番に触っていて、ふと気づいた。尻のポケットに板のようなものが入っている。
引き出してみれば、それはスマートフォンだった。やたらと丈夫そうな本体を、更にスマホカバーが保護している。
(ハートだ)
カバーを彩るハートのマークを何気なく指先でなぞる。
情報の塊を得て、思わず安堵の息が零れた。ロック画面もなしに開いたスマホ画面にともかく触れる。電話履歴、アドレス帳、メールの受信箱。次々にアプリを開いては閉じ開いては閉じを繰り返す。どこを見ても、知らない名前が並んでいる。知らない名前に関わっているせいか、連なる文字さえ知らない言葉のように思えてくる。
(駄目だ)
記憶を失くしている、と思い至ったときと同じような眩暈を覚えて電源を落とそうとしたその直前、
――
工藤 耀
今の自分には訳の分からない文字の羅列の中、その三文字だけが飛び込んできた。
(くどう……)
名の読み方が分からず首を捻った瞬間、
――あかるくん
耳の奥、小さな声が聞こえた、気がした。
はにかむようにほんの少し高く響く、明朗な少女の声に知らず息を呑む。声が響いた耳を片手に抑える。声の記憶を取りこぼさぬよう、幾度となく心に再生する。
(そうだ、)
今の声で呼ばれたその名が、己の名。
心にぴたりと当てはまったその名に安堵しつつ、またひとつ生まれた謎に首を傾げる。
(……今の声は誰なんだろ)
けれど、お陰で思い出した。
自分の名前と、もうひとつ。
(あの声はいつも、)
――工藤くん
そう呼んでくれていた。
手にしていたスマホを引っ繰り返す。ハートマークのついたカバーを見下ろす。これは、自分をそう呼ぶ声の主からの誕生日プレゼントだ。
もう一度、深呼吸をする。
名前は思い出した。自分と縁のある『誰か』のことも思い出した。
まだ声しか思い出せてはいないけれど、それしか思い出せない自分の心の不甲斐なさに苛立ちを覚えはするけれど、
(きっかけがあれば、少しずつ思い出せる)
今はそう信じたい。そうしなければ、一歩先に進むことすら怖い。
(……探しに行くか)
スマホを元の尻ポケットに押し込む。
ともすれば強張ってしまいそうになる頬を両手ではたき、踏み出す一歩めを躊躇する右足の腿を拳で殴る。
(探しに行くんだ)
己の記憶と『誰か』を求め、ともかくも前を向いて歩き始める。
うきうきと弾む心のまま、階段を二三段まとめて飛び降りる。初夏の風にふわりと翻るスカートの裾も耳元で踊る栗色の短い髪も気にせず、両足を揃えて地面に着地する。今から走れば、待ち合わせ場所には充分に間に合う。
くすくすと零れる笑みを隠しもせず空を仰ぐ。
(いい天気だにー)
そう思った瞬間、駆けだそうとしていた足が止まった。
海よりも青い眩しい空の色を見上げて、一歩も動けなくなる。
(どこへ、行こうとしてたんだっけ?)
透き通った空の青さに、眩しさに、全てを吸い込まれた気がした。
見上げるうちにどこまでも飛んで行ってしまいそうな気がして、慌てて空から視線を逸らす。自分の身体を見下ろして、
(私、……)
途方に暮れる。
(私って?)
自分で自分に問いかける。見下ろした痩せた少女の身体が『自分』のものであるのかを確かめたくてぱたぱたとはたいてみる。
『自分』の意思で動く手を見遣る。『自分』の手で叩いた『自分』の身体を見る。
(わかんない)
ぽつり、心に零れて落ちた答えの得体の知れなさに唇を噛む。震えだしてしまいそうな『自分』を振り払うようにぶんぶんと首を振る。ぐるり、心細いまなざしを周囲に投げる。
(……ここ、は)
『自分』が誰なのかは分からない。けれど、なんとなくではあるけれど、後ろにある建物が自分の住居だということは、
(わかる)
ぼんやりとではあるけれど、わかる、ということにひとまず胸を撫で下ろす。
「桜花寮」
おそらくは今の今『自分』が出て来ただろう玄関に記された建物の名称を小さく口にする。
名称の通り、桜の見える玄関口の端に寄る。葉桜の木の下に据え置かれたベンチにぺたりと腰を下ろす。ともかくも、と肩に下げていた可愛らしめの鞄を開いてみる。
(何か、自分がわかるもの……)
財布にスマホに手帳、ハンカチにポケットティッシュ、小さなポーチの中には制汗剤に日焼け止めに、淡い色つきのリップクリーム。
何処かへ出かけるつもりだったらしい鞄の中身から選び出したのは、学生証とスマホ。
(これなら何かわかりそう!)
学生証に記された『自分』の名を確かめる。
(
七音 侑
)
私立寝子島高校の生徒で、桜花寮の寮生の、
(私は、七音侑)
『自分』の名前を心に繰り返す。寮の部屋にはルームメイトがいることも分かったものの、今日はきっと、部屋に戻っても誰もいない。そんな気がした。
学生証を財布に仕舞い、鞄に押し込む。スマホの電源を入れ、迷うことなく暗証番号を打ち込んで、
(あれ、)
覚えていないはずのものを指が覚えていることに瞬く。
(なんでわかるんだろう?)
不思議に思いながらも安堵する。この身体は、確かに『自分』なのだ。
写真画像ファイルを開いてみる。サムネイルで表示される写真の多さに目を瞠りつつ、一枚一枚確認して行く。
(それにしても色んな写真撮ってるなー……)
学校の教室、寮の部屋、どこかの公園や雑貨屋兼喫茶店、ゲームセンター。学校行事の途中らしい、友達との自撮り。誰かから借りたらしいぶかぶかのジャージを被って恥ずかしそうに笑う、
(……私)
学生証に記載されていた『七音侑』の顔写真と同じ顔をそこに見つけて、知らず頬に熱が昇る。
(私、だ)
『七音侑』の隣には、大抵ひとりの男子が一緒に写っている。毛先に行くにつれて赤くなる黒紅の髪の男の子。暁のような髪と、払暁の太陽のような瞳の色した男の子。
教室で、道端で、喫茶店で、ゲームセンターで。それから、たぶんなにかのお祭りで。そのどこででも、一番に仲がよさそうに写っている。それなのに、
(君は誰なの?)
『自分』にとって大切なひとのはずである彼が誰なのか、その名前も声も、何ひとつ思い出せなかった。
たまらず立ち上がる。スマホを片手に、足早に歩き始める。手掛かりになるのは、掌の中の写真データだけ。それでも、その写真の場所を見つけることが出来れば記憶が取り戻せる。そう信じたかった。
(見つける)
震えそうになる唇をぎゅっと噛む。
(きっと、見つけるんだ)
忘れてしまった大切な記憶を、ぜんぶ。
夏を待ち侘びるような濃い緑の香を含んだ風が髪を揺らす。
流れ寄せる風に目を細める。俯きがちになってしまう視線を立ち並ぶ樹々へと上げた、その瞬間。
視界の端を白と黒の球体が掠めた。
次の瞬間には腰のあたりにぶつかりそうだったそれに、咄嗟に踵を返す。振り向きざま、ひょいと極く自然に上げた脚で止める。
軽く跳ねるサッカーボールの動きを靴先で押さえ、目を上げる。木々に囲まれた公園の広場で、ボールの持ち主らしい子供が手を振っていた。応じて手を振り、軽く蹴って渡す。
宙に跳ねたボールを両手で受け取り、ありがとうと頭を下げた後、子供は顔中で笑った。
「サッカー上手だね」
ひらひらと手を振って広場に待つ友達の輪に戻る子供の背を見送りながら、耀はそっと息を吐き出す。
『サッカー』。
子供のくれた言葉のひとつが大切なものをひとつ、思い出させてくれた。
(そうだ)
それは己の好きなもので、
(俺の夢)
サッカーボールを反射的に受け止めた自分の脚を見下ろす。
(ボールは相棒、だったな)
座右の銘にしていた言葉を思い出して、唇が綻んだ。記憶がなくても、身体は忘れていなかった。
(上手だね、か)
公園の広場でわあわあと歓声を上げてボールを追いかける子供たちの姿を見るともなしに眺めていて、
――すごいすごい、すごいにー!
耳にふと、はしゃいだ声が蘇った。明るい声と共、ぴょんぴょんと元気いっぱいに跳ねる小鹿のような細く健やかな脚が脳裏を掠めた。
(あいつも、……)
すごいすごいと力いっぱい褒めてくれた女の子のことを思って、
(……あいつ?)
けれど顔が思い出せなかった。どんな顔をしていたのかも、いつどこでそんな風に言ってもらえたのかも。
「っ……」
声の幻を追うように足を速める。何処へ行けばいいのかも分からないまま、それでも進む。
止まっていても、きっと『自分』は何も思い出せない。
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年08月21日
参加申し込みの期限
2018年08月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年08月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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