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空の蒼さに眸が痛んだ。
固い床に倒れて眼を打ち付けたときのような、冷たく突き刺さるような痛みに思わず瞼をきつく伏せる。
震える指先で右の瞼に触れる。瞼が熱を帯びているのか、それとも指先が冷え切っているのか。どちらであるのか思い至らぬ間に、そろり、瞼を持ち上げる。二度三度と瞬けば、陽の光の色にも似た睫毛の色が視界の端を掠めた。
瞳に映りこむ白い手を見下ろす。色素の薄い、細い指先。
見慣れない手、そう思った。
そう思ったことに瞬く。
「え……?」
震える指先は自分のものであるに違いないのに、どうしてそんなことを思ったのだろう。
見下ろす己の身は、知らない学校の制服を纏っている。制服の身体の両肩にかかる重みに背中を見遣れば、登山用のリュックが担がれていた。
(……?)
道の端に立ち止まる己を追い越し、同じ制服を纏った少年や少女たちが同じ方向を目指して歩いて行く。
(どうして)
彼らは学校指定の鞄を手にしているのに、自分は登山用リュックなど背負っているのだろう。それも、普通の女の子らしくは決してない無骨で地味なデザインのもの。
歩道の端に寄り、背からリュックを下ろす。幾つもついたポケットを探ると、目当てのものはすぐに見つかった。
「あった……!」
学生証を見つけ出す。学生証に挟まれたバスの定期券を見つけ出す。学生証の中身を確かめて後、ぎゅっと握りしめる。リュックを背負い直す。道を行く同じ制服の学生たちの背を追い、歩き始める。
(私、……)
自分が何者なのかもわからないまま、学校を目指す。
(
大天使 天吏
)
学生証に見た自分の名前らしきものを心に繰り返す。
(おおあまつかてんり、なんて変な名前)
それが自分の名前であることは理解したけれど、なんだかしっくりと来ない。別の名前があるような気もするけれど、
(……でも)
別の名を示されたところで、どんな名も自分の裡には嵌まり込まない気もしている。
バス停にたむろする学生たちの後ろに並ぶ。同じ服を着た、同じ場所に所属する人たちの中に混ざりこむ。ともかくも、学校へ行ってみよう。
(おおあまつか、てんり)
呪文のように『自分の名』を繰り返す。
(私は、おおあまつかてんり)
私立寝子島高校に通う、高校三年生。今現在分かっているのはたったそれだけ。ならば今はそれに縋ってみよう。女子高生らしく、学校生活を楽しまなくては。
学生の集う朝のバス停は活気に溢れている。
女子たちの笑いさざめく声、男子たちの気怠さを装いながらもその実明るい声。育ち盛りの人間の群れが放つ独特の熱。
(……)
氷点下の塊が腹の底に結晶して行くような、そんな気がした。眉間が強張っていることに気づき、軽く押し揉む。
いけない、と思う。
(普通の女子高生らしく、しなくては)
そう思ってしまう己の正体が何であるのか判別つけられぬまま、学生の群れに紛れてバスに乗り込む。一人用の席に腰を下ろし、胸に生まれた違和感に首を傾げながら再度リュックを探る。
学生証が入っていたのとは別のポケットに、スマートフォンを見つけた。
発車するバスの音と学生たちの話し声を耳に掠めさせつつ、スマホを起動させる。
初期待ち受けそのままらしい素っ気ない画面には、碌なアプリも表示されていなかった。電話機能を起ち上げる。知り合いの名前や電話番号を見つけられるだろうと期待していたのに、アドレス帳は真っ白だった。
一切の連絡先が登録されていないスマホを眺め、鳥のように首を傾げる。
(機種変したばっかりなのかな……?)
どれだけ探しても、スマホの中に答えは見つけられなかった。空っぽのスマホと学生証を手に、バスの窓から外を眺め遣ろうとして、
(私)
見えたのは、窓に映り込む『自分』の顔。
緩く波打つ肩までの柔らかな金の髪に、柔和そうな頬と唇、――それから、積乱雲の影の色にも似た瞳。
瞳の奥、低く轟く不穏な稲妻の色を見た気がして、反射的に瞼を閉ざす。
(私、)
私は、誰なのだろう。
(私は、三年一組のおおあまつかてんり)
学生証で得た情報のみを頼りに寝子島高校に向かい、教室に入る。
「……あの、」
HR前のお喋りに興じる女子のひとりにそっと話しかける。驚いた眼差しを向けて来る女子に淡く微笑みかけ、自分の席を問う。
「あ、そういえば皆の携帯電話とか、機種変したら全部移行できてなかったみたいなの」
ついでにアドレスを求めて、――何故だか、その場のほぼ全員の不思議そうな視線を受けた。思わずぱちぱちと瞬く。自分は何かおかしなことを言っただろうか。
(クラスメイトとお友達なのは当たり前だと思うんだけど)
それとも、違ったのだろうか。
『おおあまつかてんり』はそうではなかったのだろうか。
迷ううちに、クラスメイトの誰かがいいよ、と言ってくれた。
「あ、でも、……アドレスの交換ってどうすればいいの、かしら……?」
スマホを取り出してもたもたとしているうちに、別のクラスメイトが赤外線を使った交換方法を教えてくれた。実際にアドレス交換して笑ってくれた。
「ありがとう」
繋がりを得た気がした。
それと同時、強烈な嫌悪感を感じた。
(……?)
胸を悪くさせる感情が何であるのか思い至れぬ間に、教室に担任が入って来た。
おはよう、と渋く響く担任の声に、自分を囲んでいたクラスメイトたちが三々五々、席に着く。永田せんせー、とクラスメイトの誰かが口にした担任の名を耳にして、なるべく卒なく、『女子高生』に見えるように笑ってみる。
「永田先生、おはようございます」
「……ああ、」
朗らかに笑って見せたのが変だったのか。それとも友達に囲まれていたのがいつもと違ったのか。三年一組担任
永田 孝文
はほんの少し不思議そうにしながらも、目尻に皺を刻み唇の端を引き上げた。
「おはよう、大天使」
(私は、……)
三年一組の教室での居場所であるとクラスメイトから示された『おおあまつかてんり』の席に腰を下ろしたまま、放課後の教室に視線を巡らせる。
部活に向かう者、帰路に着く者、何をするでもなく教室でクラスメイトと話す者。初夏の教室に流れ込む傾いた太陽の光に瞳を細め、自分が何者であるのか分からぬまま、それでも一日を過ごした席から立ち上がる。
クラスメイトのアドレスが入ったスマホをリュックのポケットに仕舞う。
もう一度視線を巡らせる。朝にアドレスを交換したけれど、一日が終わるまでほとんど誰とも会話をしなかった。こちらから話しかけなければ誰も言葉を向けてくれなかった。話しかければ話してはくれるものの、どこか腫物に触るような扱いだったように、思う。
今も、誰一人として一緒に帰ろうと声を掛けてくれる友達はいない。
(どうしてかな)
リュックを背負う。ともかくも、今日はもう早く帰ろう。学生証に記された今現在居住している場所に向かえば、学校よりも多くの自分に関する情報を得られるに違いない。
ひとりで教室を出ようとして、――教室の戸の向こう、廊下の窓に夕焼けの空を見た。何気なく見上げた炎の色の空に、影の色となって舞う一羽の烏を見た。
背を突かれた、気がした。
(行かなくちゃ)
どこへ、と思う間もなく足が動く。
(見下ろさなくちゃ)
どうして、と思う隙もなく、ゆっくりだった足が速さを増す。廊下を駆け、階段を登る。そうするうちにも心の底で何かがざわめいている。捕らえられた鳥が暴れるかのように胸の奥が激しく揺らいでいる。
階段の果て、窓に火の色を宿す屋上への扉を開く。
途端、黄昏の紅が瞳を刺した。
「っ……」
紅い光の痛みに瞳が歪む。けれど瞼は閉ざさない。夕焼け空に舞う烏の姿を瞳に捉え続ける。
夕焼けに照らされる街は、学校は、まるで炎に焼かれているかのよう。
「あ、」
赤い火を、確かに見た。
空を舞うあの人を。烏を。翼を人間をもれいびを、焔を。
(焼かれた)
――私は、助けられなかった。
腹の底、黒い烏が暴れている。ざわざわと、ばたばたと翼を羽ばたかせ、
「あ、あ……」
蛹が蝶となるように、焔に焼かれた烏が今再び翼を広げ飛び立つように、
(私は、……私、は……!)
思い出す。
「……大天使。天吏」
己が名を口にする。
例えば背に生えた翼の重みに潰されるように、天吏はその場にうずくまった。
スマホに登録した連絡先を一つ一つ、丁寧に、心を込めて消して行く。
夕焼けの色に焼かれる街を、学校を屋上から見下ろして心に思い描くのは、あの人を炎へと落としたもれいび達。彼らが炎に巻かれ苦悶の声を上げる間もなく燃え尽きてゆくその様を思い浮かべ、天吏は唇を歪める。嗤う。
雷雲色の瞳の奥には、憎悪の雷光が煌いている。
「燃えろ、燃えろ、」
身体の裡に憎悪の雷を轟かせ、天吏はもれいび達を呪う。
「あの人の苦しみを背負って燃えろ」
杳として行方の知れないあの人を思う。
もれいび達を燃やす己の炎は、いつかこの身さえ焼くのだろう。内側から燃え上がり、己をも焼き尽すのだろう。
その予感があった。けれど、そうであっても尚、身を焦がす雷は鎮まらない。鎮めたりは、決してしない。
誰の連絡先もなくなったスマホを手に、天吏は黄昏の空を仰ぐ。
「……明日からも『フツウ』の子でいないと」
自分自身に呪いを掛ける。それもこれも、あの人のためだと思えば、唇に『フツウ』の優しい笑みが滲んだ。
踵を返す。
階下への階段を下りる。
茜に染め上げられた階段は、一瞬、消せぬ焔と闇が蠢いているが如く見えた。
(それでも、私は)
炎と闇の中へと踏み入り、天吏は憎悪に輝く瞳をもたげる。
己が定めた道を降りて往く。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年08月21日
参加申し込みの期限
2018年08月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年08月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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