【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ

【作戦１－２：開戦前・サジタリオ城北門】

　北門に続々と集結する兵士・義勇兵・物資の数々。
　その光景を、複雑な心境で眺める少女の姿があった。
「僕は来るべきじゃなかった……」
　そう呟く恵御納夏朝の表情は硬い。
　前回の戦いでのサジタリオ城側の不手際に対し、具申書にも怒りを露わにしていた。
　だが、夏朝は此処に来た。
　そうしなければ、５万の竜牙兵に城や城下町が飲み込まれてしまうからだ。
「そうだ、僕は、目の前の敵を薙ぎ払う。それでも、敵は殲滅するんだ……」
　まるで自己暗示のように繰り返して言葉に出す夏朝の姿に寄り添う、壮年の男性がいた。
　夏朝の父親、恵御納久隆だ。
「大丈夫か、夏朝？」
　強面で無表情かつ高身長で筋肉質な久隆は、鎧甲冑などの武具を身に纏うと屈強な傭兵にしか見えない。
「お父さん……、大丈夫、だよ。それより、お母さんは……？」
「お母さんなら、お城の厨房でサンドイッチをたくさん作っている。兵士や義勇兵の皆に配るそうだ」
「そう……。お母さんらしいな……」
　母の優しさに、夏朝の顔に一瞬、笑顔が戻った。

　そのころ、母、恵御納理沙は食材と格闘していた。
　城中のバゲットやらベーコンやらソーセージやらをメイドたちと一緒にかき集めサンドイッチ作りに没頭中。
　彼女の故郷であるドイツではソーセージが国民食である故か、サンドイッチは馴染み深い料理である。
「ろっこんのコピーも完璧ね？　それじゃ、もうひと頑張りよ！」
　理沙のろっこん『ささやかな手料理を』は、彼女の手料理に疲労回復効果を付与することが出来る。
　この場にいるメイドたちは虹の力で理沙のろっこんをコピーしたので、彼女たちの作ったサンドイッチは疲弊する兵たちにとって最適な戦場食となるだろう。
（夏朝ちゃんと旦那様に危ない事を任せちゃう形になるんだもの、これくらい、頑張らなくっちゃ……！）
　次第に城中のメイドたちや街の女衆も応援に駆け付け、ろっこんをコピー。
　３時間の間に兵士5000人分以上のサンドイッチを作り上げてしまった事は驚嘆に値する。
「早く配達しなくちゃ！　食べれば、肉体疲労が回復する……と思うけど、万一発動しなかったらごめんなさい～！」
　理沙は叫びながら、騎士の光で召喚した巨大なウィングキャットで飛び回る。
　開戦前にとある兵士の証言に、こう伝えられている。
　
『まさか大量のサンドイッチを空から配達する金髪の人妻が、空飛ぶ猫に乗ってやってくるなんてね。戦争って何でもありなんだな』
　――サジタリオ城北門衛兵

＜Tip：サンドイッチを全兵士の初期装備に追加します（１個）。使用すると兵士のスタミナが一度だけ全回復します＞

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