【パンツはまだまだ続くよ！】

　魂行 凪、後日、作ったパンツを恋人へプレゼント。
　しかし、全て女性ものだったのだが、それで良かったのだろうか……？

　冴木 竜司、午後の授業をサボったお詫びに、相原 まゆ先生へ『可愛い系』と『妖艶系』の最高傑作２枚のパンツを職員室の机にそっと置いてその日は帰宅。
　翌朝、色んな意味で怒り狂った相原先生に『教育的指導』として、横嶋たちと共に反省文を書かされる羽目になる。

　後木 真央、大量に作り終えた六尺赤褌を両手いっぱいに携えて猫鳴館に帰還。
　猫鳴館玄関に段ボールで置き場を作り、張り紙をくっつける。
『夏合宿水泳用水褌、ご自由にどうぞ。但し返却する場合はきちんと洗濯してから戻して下さい』
「ふぅ、真央ちゃん良いことしたのだ♪　これできっと誰も困らないのだ♪　水泳合宿楽しみなのだ」
　後木の勘違いは、まだ当分続きそうである。

　逆巻 天野は非公式新聞部に、今回の騒動を匿名でリークしていた。
　誰がどんなパンツを作ったのか、誰がどんなことをしていたのか、記憶にある限りの情報をタレコミする。
「これで愉快な記事ができるし、有名になってお友達も増えるでしょ？」
　どこまでも変態嫌いな逆巻であった。

　草薙 龍八は堂島と横嶋を待ちわびていた。
「やっと来たか……」
　草薙は２人の姿を視認するやいなや、学校指定のカバンに詰め込まれたエロ本やらＤＶＤやら御神体フィギュア資料の女性用下着を堂島に押し付けた。
「もう、必要ないのでな……。好きに使え……」
　それだけ告げて、２人に背を向ける草薙。
「これはどういうことだよ……！」
　堂島が尋ねても草薙は振り返らない。
「俺たちは、同じエロを志す仲間じゃなかったのかよ！？」
　だが、堂島の怒号は草薙の歩みを止めることができない。
「龍ちゃん！　堂島が桃色破廉恥小隊に入隊してくれるって！　ミスターＤＴが仲間になるんだ！　これから歓迎会を開くから、龍ちゃんもおいでよ！」
　横嶋の明るい声。どこまでもポジティブな態度。草薙は一度だけ足を止め、振り返った。
「ああ……、あとで詳細をメールで教えてくれ……」
　ふわりと、草薙は、優しく笑ってみせた。
　横島は何の疑いもなく、その言葉を信じた。
「うん！　待ってるからね、龍ちゃん！　遅れてもいいから、絶対来てほしいな！　歓迎会、すっごく楽しいよ！　そして、これからの俺たちも！　もっともっと仲間が増えて、楽しくなるんだ！　龍ちゃんも一緒だよ！　じゃあ、歓迎会で！！！」
　屈託の無い横島の笑顔を最後に、草薙は２人を見送った。
　そのまま猫鳴館とは違う方向へ歩いていく。
「なんだかな……。あんな風に言われると……、彼奴ら見てると……、寝子島に手を出させたくないからな……」
　夕焼けは次第に闇に変わり、夜が訪れる。
　草薙の姿は、そのまま闇に溶けていった……。

　騒動から数日後。
　上穗木 千鶴は八十八旗 信彦に呼び出されていた。
　場所はコスプレ部。
　上穗木は胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
（部活も寮も一緒で気のおけない友人として一緒にいることも多い八十八旗くん、一番気になる男の子。だけど、気になる本当の理由は４回もおっぱいを触られてしまったこと……）
　ラッキースケベだったとはいえ、多感な時期に同じ相手からおっぱいを何度も触られるのは気になるに違いない。
　そんな、そわそわしている上穗木の背後から、八十八旗がそーっと忍び寄る。
　そして真後ろに来たとき……。
「誕生日おめでとう！」
　プレゼントの包み紙と共に彼女を驚かせた。
「わぁ！　びっくりした！」
　上穗木は二重の意味で心臓が飛び出そうだ！
「ちーちゃん、ちょっと早いけど誕生日プレゼント！　５月にプレゼント貰ったお礼も兼ねて、どうか受け取ってくれないかな？」
「ぼくに誕生日プレゼントかい？　ありがとう……！　開けてもいいかな？」
「勿論さっ！」
　相変わらず爽やかさ100％の笑顔で答える八十八旗。
　上穗木は期待を胸に膨らませながら、包み紙を破いていく。
「こ、これは……！！」
　包み紙の中から出てきたのは、見るからに高そうなブラジャーとショーツのセット数点だった。
　フリルが贅沢に使われた、とても可憐な色合いの下着ばかりだ。
　実は八十八旗、昨日の堂島の叫びにピンときたらしく、金に物を言わせて最優先且つオーダーメイドでこしらえさせたものなのだ。
　……正直、この発想はなかったわ。
　だが、金持ちの特権をフル活用したプレゼントが下着とはこれ如何に？
　勿論、上穗木は顔を真っ赤にして、お子様パンチで八十八旗を殴りだした。
「まったく！　君って奴は！　もう！」
「待ってくれ、ちーちゃん！　俺はちーちゃんの悩みを解消しようと真摯な気持ちでこれを贈ると決めたんだ！」
　八十八旗の声は、普段のおちゃらけたものではなかった。
「ちーちゃんは胸が大きくて、合う下着が見付からないって嘆いていたのを覚えてたのさ。大きいサイズは可愛くないとも言ってた気もするよ」
　上穗木はこの言葉に胸の奥が熱くなるのを感じた。
　本当は凄く嬉しかった。しかも、自分のことを真剣に考えてくれていた。
「身体測定の時にレディ達のデータは頭に叩き込んだし、ちーちゃんの胸なら俺の手が覚えている！」
「だから君って奴は！」
　ぽかんっと彼女のパンチがヒット。
　しかし、その表情に怒りの色はない。
「付けてみてほしいな」
「……うん」
　上穗木はそう言うと、後ろ向きになってスルスルと脱衣。
「上手く付けられない……」
　しかし、ブラジャーを付けなれない上穗木は悪戦苦闘。
　見かねた八十八旗が助け舟を出す。
「……えっと、ちょっと失礼！」
「あ、また触ろうとしているね！？」
「とんでもない！」
　胸を触らないように、……なるべく見ないように、ブラに乳房を収め、後ろのホックを止めてあげる。
「あ……」
　上穗木は驚いた。
「胸が、しっかり収まってるよ！　凄く軽い！　まるで、誰かの手で包まれている感じで……、って、もう！」
　身体測定のことを思い出してしまい、もう１回パンチを繰り出す。
　流石にショーツの着替えは男子が見るべきではないので、八十八旗は背中越しに聞こえる衣擦れにドギマギするばかりだ。
「……似合う、かな？」
　八十八旗が振り返る。
　小柄ながらも発育しきったその彼女の身体に、ちょっぴり大人風味の可愛らしいフリルの下着が華やかさを演出していた。
「とても良く似合うよ、ちーちゃん」
　その声は、決して冷やかしなどではなく。
　――１人の女の子の心を救ってみせたのだ。
「ありがとう、大事にするよ……」
　顔を真っ赤に染め、上穗木は八十八旗に抱きついた。


　こうして、カオスとエロスと、ほんのちょっぴりのラブを生んだパンツ騒動は、今度こそ終幕と相成りましたとさ。
　めでたしめでたし。








































　八神「ところで堂島、１つ聞きたいことがある」
　堂島「なんだ、聞きたいことって？」
　八神「……お前、腰についてどう思う？」
　堂島「何ィ、腰だと！？」





＜To be continued ……？？？＞