【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド

【戦闘中・１】

　突如、南の戦域に現れた骨削。
　彼のろっこん『悋気の独楽』は本来、自分以外の人による恋愛模様を確認することで竜巻を発生させる嫌がらせみたいな能力だ。
　だが、進化能力で独楽回しの素振りをすることで任意に発動できるようになった。
　更に右眼に宿した魔風の光の力で、その威力を最大限まで増幅させることができる。
　対軍魔法兵器と化した骨削のろっこんは、狙いは竜牙兵だが巻き込まれた一般兵や星の力を行使する面々にも一定の被害をもたらしていた。
「いやぁ、風力の調節が難しくてねぇ？　ヒッヒッヒ！　しかし、これで御自慢の魔法の矢もいることもできず、指揮官も突進できないわけだよぃ」
「骨削、やり過ぎだ！」
　サキリが止めようとするが、クリメントがそれを止める。
「なんで止めるんだ、クリメント？」
「……あれを見てください」
　クリメントが指をさす方向に、異様な現象が起きていた。
　砕かれ、バラバラになった竜牙兵の骨が、一か所に集まり、合体して再び立ち上がる光景を目の当たりにする……！
「そういえば、玄室を出る際、フランチェスカが言ってたね……」

　アルターエゴはこの塔にはない星の力を使う事が想定されます。

「つまり、あれがその、月影塔限定の星の力ってことかな？」
「物体の復元？　もしかしたら時間遡行かもしれません」
　サキリの問いに、クリメントが仮説を幾つか列挙するも、断定には至らない。
　そもそも、竜牙兵は生物ではない。
　生物を素材とした人形兵である。
　ゆえに感情に左右されずに愚直に攻め進むことが可能なのだ。
『死んだ生物が蘇生することは、いかなる星の力を行使してもあり得ない』
　フランチェスカは、玄室を出る２人に対して、そう告げていた。
　だとしたら、目の前の出来事は、『物体の修復』という星の力だと推測される。
「かに座の星の力のような物かな？　なんにせよ、僕の勘は的中したわけだ。ステラオルタが復活の星の力を行使するなら、破壊された竜牙兵が周りにたくさん落ちている場所が最適だからね」
　サキリは本来、戦闘を控える予定だった。
　だが、中隊規模の竜牙兵が次々に復活を遂げている今、戦闘を回避するのは困難だ。
　第一、こんな芸当が見られるのは、ステラオルタがこの付近にいるという動かぬ証拠！
「僕たちでステラオルタと接触するんだ」
　蛇腹剣を鞭のようにしならせて、盗賊の光を宿すサキリ。
「分かりました。行きましょう」
　クリメントは魔法銃を構えると、魔風の光を籠める。
「もう少し、相棒の出番は先のはずだったのですが、止むをえません」
　２人は再生する竜牙兵に今一度トドメを刺すべく、戦いに身を投じる事になる。