●地学パート３●


【北校舎１Ｆ・廊下〜美術室】

　さて、男子２人に、にゃんこパンツを見られた最上 るるかの方は、
「知らない男の子もいるのにやだ〜、恥ずかしい、お嫁にいけない！
　そこで見てるアナタたち、責任とって結婚してくれる！？」
　どっち！？　どっちが責任とってくれるのとギャルに詰め寄られて、見るからに純情そうな志波 拓郎と多喜 勇生の２人は、もうタジタジである。
　迫るノーブラの魅惑の谷間から必死で目をそらして、
「と……、ともかく、これ（で隠して）」
　と拓郎が渡した下敷きを胸に当ててもらうも、キュッキュキュッキュ〜♪、キュッキュキュッキュ〜♪、と悩ましげに擦れ合うその２つの摩擦音に、ＤＴな多喜はもうＫＯ寸前だ。
（こっ……このままじゃダメだ……何かで気を逸らさないと！）
　微妙な内股になりながら、下半身に行こうとする血流を、ともかく必死に頭脳方面にバイパスさせる多喜。
（そっ、そうだ！　何か頭の良いことを考えよう！）
「ふっ……謎は解けたよ」
　いきなり眼鏡のブリッジをくいっと押し上げて、名探偵のような台詞を言う多喜を、何事かと見る拓郎とるるか。
「そう……問題用紙のキューキュー（ＱＱ）という鳴き声とは、
　Ｑ＆Ａのキュー（Ｑ）の事だったんだよ！
　つまり彼らはＱ＝クエスチョン、問題そのものである！」
　何を言ってるんだろうと、顔を見合わせる２人。
「ならばＡ＝アンサー、つまり正解を求めるに違いない！
　だからエーエーと呼びかければ、おのずと寄ってくるはず！
　さあ来るがいい、エーエー！　君の求める正解を書いてみせるよ！」
　半分ヤケになって、エーエーエーエー連呼する多喜の……、しかしすぐ近くで、
「キューキュー！」
　と本当に付喪紙が鳴いた！
「ええっ！？」
　近くっていうか、スグ目の前だ。最上るるかのノーブラおっぱい……その胸に当てた下敷きに、いつのまにか問題用紙が１枚、ぺらりと貼り付いている！
「どうして……あっ、さっきの摩擦の静電気で……紙が吸い寄せられて」
　さっきのキュッキュキュッキュ〜♪、という音は、付喪紙の鳴き声だったのだ！
「やったぁ、僕にも見えたよ！　これで試験に戻れる！」
　問題用紙を運よく（？）可視化して、一足お先に消えていく多喜勇生。
「ええ〜っ！　今のはむしろ、あたしのお手柄じゃないの！？」
　と必死に下敷きで胸を擦って、２枚目の問題用紙を吸い寄せようとする、るるか。キュッキュキュッキュ〜♪、キュッキュキュッキュ〜♪、……あ、拓郎が気絶した。その下半身から、スルスルと拓郎のパンゲアが！　パンゲアが！　いやパンツが！
「キャーーーーーーーー！？」
　いや拓郎が、るるかの悲鳴で目を覚ました。涙目で取り押さえようとする、そのパンツがすでに無い！？
『ウン？　だからなに見てやがる』
　拓郎のパンツを履いたまま、振り返るテオ。まだいたのかオマエ。
「も……もおやだー！！（真っ赤）」
　ベタ座りでベソをかくるるか、
「だ……駄目、返せ、返して……（涙目）」
　上着とシャツを身体の前にかき集めて、半泣きでテオを追う拓郎が、今度はドベッと転んだ。
「キュ〜、キュ〜！」
　見ればその足許を、ワーーと逆走していく４枚のパンゲアが！　パンゲアが！　いやパンツが！
「まっ、待て僕のパンツ〜！」
　それを追って走ってきたのは、佐藤 英二、八城 昌也、三希 環、御剣 刀の４人だ！
　そして紳士御剣は、あいかわらず全裸を嗜んでいる。
「いやああああああああ！？」
『ウン？　だから俺をジロジロ見るなよ』
　５枚のパンツを履いたテオが振り返った。るるかのブラ＋５枚のパンツがテオの上で結合して、超大陸パンゲアの完成だ！　完成である！　プレーートテクトニーークス万歳！！
「もおやだーうち帰りたいー！」
　しかしパンツたちがテオの身体に移動したため、さっきまでそれを履いていた付喪紙の所在が、消えて分からなくなってしまった！
「テストが見えないだけで、何でこんな目に……だいたいあたし馬鹿じゃないもん失礼しちゃう。
　そりゃ地学は今夏流行のビキニ特集熟読してて殆ど頭に入って来なかったけどさー……って、そうだ！」
　と、最上るるかが手近の美術室に駆け込み、
「頭いい事すれば帰してもらえるんだよね？　じゃあいちかばちか！」
　ビキニの絶対領域を求めるデタラメ方程式を、黒板に大きく書き殴った！
「いいみんな、ビキニの絶対領域はココ、
　おへその窪みから垂直に降りた腿の付け根！
　脚は開かずきちんと揃えて密着時の肉感アピールよ！」
　とにゃんこパンツで実演して見せるるるか……どうだ？

　しーーーーーーーーーん。

　残念！　付喪紙、見えず！
「えーん、これでもだめなのー」
　ガックリ膝をつくるるか、だがその時だった──
「あきらめるな！」
　御剣 刀（全裸）の鋭い声がとぶ、「その黒板消しを使うんだ！」
　美術室になだれ込んできた男子たちをハッと見れば、その彼らの手にもそれぞれに黒板消しが。ここに来るまでに空き教室から調達してきたのだろう。佐藤が、八城が、三希がいっせいにその黒板消しを投げ、モウモウと教室中に煙幕のように立ち込めるチョークの粉！
「これで問題用紙自体や用紙の移動した足跡を追える筈だ」
　解説する御剣、そう、これは──物理のテストの際にあの普堂 しおりらが、小麦粉を使って成功させたのとほぼ同じ手だ。もちろん今回も有効……位置を特定された付喪紙が、次々とその姿を現していく。
「そっか、えいっっ！」
　るるかと、そして前述のようにすでにこの手を思い付いていた志波拓郎も、同様にチョークの粉を床に撒き──１匹、２匹、……計７匹の付喪紙が、目視確認された！
『よし、ちゃんとののこの分も確保したな……いいだろう』
　さんざん彼らを引っ掻き回したテオが（この時だけは）重々しく言い……、
　残る６名の生徒も無事、こうして試験会場に帰還したのだった。

　地学科目、これにて全員ミッションクリア！！