幼子の呼び声｜リアクション

幼子の呼び声

●助けるのだ！

　黒依アリーセは、夢の中の女の子の噂を聞いて考えた。
「女の子は夢の中の話だけど、何人か証言が被るって事は、ろっこんの影響か何かかしら？
　羽根と鳥の巣は現実……か。とにかく、巣を確かめて見た方が良さそうね」
　羽根に赤い染みが……、って事は親鳥が怪我をしてるかもしれない。
「女の子の方は、他の人にお任せしようかしら。関係はありそうだし、気にはなるんだけど……
　後で教えて貰えばいいかな？」
　授業が終わってすぐ先生に、
「鳥が怪我をしてるみたいなので、確認していいですか？」と話し、梯子と双眼鏡を借りることにした。
　
　アリーセが梯子のある倉庫の鍵を開けたとき、時子と真央が走ってきた。
「絶対怪我してるのだＳＯＳなのだ、急ぐのだ……！」
　梯子を抱えていこうとする真央にアリーセは言った。
「ちょっと待って。いきなり木に登るのでは無く、近くの窓から様子を見たほうがいいんじゃないかしら」

　懸命に声を上げる真央。
「知ってるのだ、野鳥や落ちた雛に触っちゃいけないことぐらい、本当は真央ちゃんだって知ってるのだ！　人の匂いが付いたら親鳥は戻ってこないのだ！
　でもあの夢は雛ちゃんのＳＯＳなのだ、助けてなのだ！」
　二人の間に立って時子が迷っていると、風雲児轟が顔を覗かせた。
「わかった、俺も梯子を運ぼう。
　でも不用意に近づいて刺激するわけにいかないし、登るのは少し様子を見よう、な？
　他に俺たちより安全に巣に近づける奴もいるかもしれないし、そいつに任せてみよう」

　学生支援部の夏神零の元には、数多くのクラスメイトや知り合いから調査の依頼の連絡や手紙がやってくる。
「赤く染まった羽根と言えば……拙者も朱雀の羽根を思い起こすが……」
　赤く染まった白い羽に鳥の巣、鳥に絡んだ事が多いことから鳥を手がかりに調査を進めていった。
（ろっこんによる影響で夢を見るのか、それか幼女がろっこんで鳥の類に変身する才の持ち主か？
　鳥になっている時に負傷したのか色々推測できるが……）
　赤く染まっていることから鳥が手負いの状態にもあると推測し、手当も出来るように準備をしておくことにした。
「時折学校にも着いてくる大鷹のリンを呼んで、連れていくでござる」
　リンは神社へ迷い込んだ雌の鷹で、世話をしているうちに零に懐いた。
「口笛で合図を出せばやってくるであろうな……」
　零は、良く見えるように校庭の旗の下に立ち口笛を吹く。
　間もなく、空に点が見えたかと思うと、だんだん大きくなっていった。
　伸ばした零の腕に、そっと着地する。

　鎌八まもるも急いで木の下へやってきて、みんなの話を聞いていた。
（なんか暗示的な夢だったな……残留思念か？
　鳥か？　親鳥はもうダメなのか？）
「いや予知夢なら、まだ間に合うかもしれんな。オレの出来ることをさがそう」
　木の下へやってきたまもるは「スパイダースパイダー」と声を上げる。
　途端にまもるの姿が消えた……と見えたが、実はろっこんの力で蜘蛛に変身している。
「この姿は、かわいコちゃん達には嫌われやすいというリスクがあるが、まぁ仕方ない。そんなこと言ってる場合じゃないしな」
（寝子島ゴールキーパー世界チャンピオンのオレだぜ。出来ないことなんてないさ。
　ゴールだろうが、夢だろうが、命だろうが、まとめて守ってやるぜ）
　こうして樹を登り始めたまもるだったが。
「と、鳥！　鳥は怖いな、食べないでくれよ、オレのこと」
　零の指示によってリンが、手がかりを得るため木の周辺を飛んでいるのだった。
　食べられてはたまらないと、つい八本足が止まってしまう。
　