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背中が軋んだ。
知らぬ間に丸まっていた背中を伸ばそうとして、
「っ……?!」
いつのまにか背後に居たらしい誰かの、たぶん顎に頭をぶつけた。
「いッ……ご、ごめん……?」
咄嗟に頭を抑えようとした腕をまた誰かの胴体のあたりに押し付けかけて、
篠宮 六花
は慌てて詫びの言葉を口にする。右側の髪に緋色の紐で結わえ付けた小さな鈴がちりちりと震えて鳴った。
「……また神魂の影響か」
己の背と誰かの腹が触れ合うほどに間近い背後から低い呻きを耳にして、六花は銀色の睫毛を瞬かせる。
視界の全てを覆い尽すほどの真っ暗闇に、まだ夜なのだろうとおっとりのんびり思っていたけれど、
(……あー……)
背後の声を聞いて唐突に理解する。
(……ここはそういう空間か)
互いの秘密を打ち明けなければ決して解放されない、足や背を伸ばすこともままならぬ狭くて暗い箱状の空間。背後の人物が口にした通り、まず間違いなく神魂のしわざなのだろう。
「六花か」
耳元に聞こえた己が名を呼ぶ声の響きに、六花は瞬いた。知らず、口元が綻ぶ。
「あれ、征一郎?」
「ああ」
息を吐くように応じつつ、昔からの友人である
神嶋 征一郎
は狭苦しそうに僅かに身動ぎした。
痩身長躯である六花よりも、征一郎は更に数センチ背が高い。細身ではあるものの、体格も十七という年齢なりにしっかりとしつつある。この空間では自分よりも余程苦しかろうと慮り、六花はできるかぎり身体を縮こまらせた。
左の耳元に征一郎の息が触れる。膝を抱えた腕に征一郎の腕が触れている。
どうやら友人の曲げた長い脚の間に座しているような体勢であるらしいと思い至り、六花は小さな息を吐いた。
「秘密、……秘密なぁ」
ともかくも、大まかな現状は把握できた。とはいえ、語るべき秘密など咄嗟には出てこない。
「征一郎はどうだ?」
水を向けられ、征一郎は眉間に皺を刻む。伸ばせない背中や首が軋むまま、旧友の気安さで六花の華奢な肩に額を預ける。
秘密を語ればこの狭苦しい場所から出られる。それは理解した。けれど、己の秘密といえるような過去は、以前、少しばかり六花に語っている。
(隠す事は……)
何もないはず。
親友だと信じていた六花が一度己の前から姿を消して後、己は聴衆を薙ぎ倒すが如き狂想的な音色を得るに至った。その切欠も、身に宿るろっこんがその音色の代償じみた呪いのようなものであると思っていることも。
不必要な物、たとえば誰か向ける優しさや思いやりや、人との関わりや、そういう柔らかで不確かなものを全て切り捨てて音楽の道を上りつめようとしたことも、けれどその考え方はこの島で様々な人に感化されたお陰で誤りだと悟ったことも。
――それが誤りなのだと本当は分かっていたことも。
今は再び、音楽という文字通りに音を楽しめるようになっていることも。
全て、今傍らに居る友人に話した。語りつくしたと言ってもいい。
「……強いて言えば。……が怖い」
ぽつり、耳元で零れた征一郎の呟きに六花は首を傾げる。
「え? ……何、征一郎?」
傾いだ銀の髪と冷たい耳が頬に触れて、征一郎は己の頬が羞恥の熱を帯びていることに気づいた。気づいて尚更、顔が赤くなる。
この暗闇では見られまいと知っていても、思わず声がやさぐれる。
「幽霊の類が苦手だと言ってる!」
正直なところ、目を覚ましたときに視界と動きを塞ぐ如何にもな状況には怯えた。ともすれば背後から蒼白く光る冷たい腕が伸びて来てもおかしくないと本気で想像した。
だから、傍らに居るのが心を許す友人であると知ったときには心底安堵した。本人にはそれを悟られないようにしたつもりではあるけれど。
「……幼少時に姉に散々脅かされてトラウマになった」
秘密を告白した勢いで、その原因まで白状する。
額を預けた友人の細い肩が小さく震えた。
「ふふ、お化けが苦手なのか」
「……笑うな」
見えないとは言え、ますます赤くなる自分の頬と耳に小さな怒りさえ覚えながら、爪先を伸ばす。間近にある六花の爪先を軽く小突く。
「笑ってすまない」
それでもくすくすと堪えきれない笑みを零してから、六花はふと真摯な声で囁いた。
「貶めるつもりじゃないんだ」
ヴァイオリニストであるが故か、そうであるが故に音楽家であるのか、征一郎の感性は鋭い。孤独と引き換えに異彩とも言える音色を得るに至ったのも、その天才的な感性によるところも大きいのだろう。
だからこそ、六花は彼の魂を傷つけたくはなかった。たとえ僅かであろうとも、その音色を濁したくなかった。そう願い、一度は彼の傍を離れた。
「ただ、可愛らしいと思っただけで」
そういえば、と傍らの友人の顔色さえ判別つかぬ暗闇に目を凝らす。
「ここは真っ暗だが……怖くはないか?」
「別に暗闇は怖くねぇが?」
挑むような強気な征一郎の声音に安心する。
「怖くないのならよかった」
膝を抱え込んでいた手を解く。両脇に伸びる友人の腕に一度そっと触れてから、
「よいしょ、……っと」
狭い箱の中、苦戦しつつもどうにかこうにか体勢を変える。友人と向かい合う格好になる。苦労の末に友人の両手を繋ぐ。
「何、……何だ」
途端、反射的に解こうとする友人の手をぎゅっと握りしめる。この手は、この指は、あの光の蕾のような音を奏でる大切な手。鮮やかに青い音色を生み出す演奏者の手に、傷のひとつもつけたくはなかった。
(……それだけ、というわけでもないけど……)
「だとしても」
手の中でもがく友人の手をそれでも離さず、六花は淡く微笑む。
「お前一人だけ閉じ込められることがなくて、よかった」
包み込むような六花の声とその掌の熱に、征一郎はしばらく黙り込んだ。握られた手を解こうとしていたことも忘れる。
「……勝手にしろ」
繋がれた手をそのままで諦め、征一郎は六花に促す。
「次はお前の番だ」
「俺の秘密なぁ……」
やっぱり思いつかない、と六花は言いかけて、
「あ」
思いついてしまった。しかもあんまり言いたくない秘密を。
(逃げたい)
逃げようと手を解こうとして、今度は反対に繋ぎ直されてしまった。
「てめぇから繋いでおいて逃げられると思うな?」
征一郎の声が強い意志を帯びる。
「言わなきゃずっとこのままだ」
「えーと……」
蒼穹よりも青い瞳に見据えられていることを感じて、思わず固まる。
「征一郎が、」
「自分が?」
観念して白状する。
「征一郎が綺麗って言ってくれたから、髪の毛伸ばしてマス」
言葉にしてしまってから、照れた。ものすごく照れた。
手を掴む征一郎の指の力が、ハッと思い出したように強くなる。その指の力に逆に話を続ける勇気を貰った。
「昔あっただろ、」
六花は軽く笑って見せる。
「女子みたいだって揶揄われて俺が自分で髪を切ったこと」
言われたのは小学校の教室だっただろうか。嘲笑されてカッとなった。手近にあった鋏を手に、自分の髪を自分で掴み、じゃきじゃきと躊躇なく鋏を動かした。
手に握りしめた髪を教室の床に捨て、これで文句はないだろうと相手を睨みつけた時、
――綺麗だったのに
後から教室に入って来た幼い征一郎が、息を吐くように呟いた。凍りつく教室をつかつかと歩き、六花の足元に散らばる銀糸の髪を丁寧に拾い集めた。
――……勿体ない
あの時の、征一郎の哀しそうな声は、今もまだ耳朶に残っている。
征一郎が嘘を吐かないことはよく知っていた。うつくしいものに関しては、特に。だから、自分のこの髪は本当に綺麗なのだと容易く信じることができた。
「……ふふ」
覚えてるぞ、と笑みまじりに囁く。
征一郎は困惑したように記憶を辿るように六花の手をきつく握りしめた。
「よくそんな昔の話を覚えてたな」
呟き、繋いだ手を解く。手探りに手を伸ばし、さらり、六花の髪に触れる。
(……銀糸が繋ぐ縁か)
「伸ばした所で再会できるとは思わなかったが」
六花が小さく小さく呟くのを聞きとがめ、繋いだままのもう片方の手に力を籠める。
互いの秘密の告白を終え、もういつでもこの箱から出られると感じ取ってはいるものの、
「……中学の頃はどうしていた」
この機会に、離れ離れだった頃の話を聞いておきたくなった。
脳裏を過るのは、生活感の欠片もなかった部屋と、その部屋にひとり、精霊のように生気薄く佇む六花の姿。
「征一郎……過保護すぎないか?」
離れていた頃の六花に、時折儚くさえ見える少年に、何があったのか。
それを少しは知っているからこそ、過保護だと苦笑じみて言われても構わなかった。聞いておきたかった。
「……心配はさほどしてねぇが」
宥めるように、傷を癒すように、六花の髪に触れる。癒せない傷であるのは分かっている。もしかすると癒されることを願ってもいないかもしれないことも分かっている。それでも、出来得る限りにそっと、触れる。
「俺はそんなに弱く見えるか?」
「お前は自分が思ってるほど強くはねぇ」
征一郎の言葉に、六花はほんの少し拗ねて黙り込んだ。
「学校では、何もなかったぞ」
「学校では、なのか」
鋭く追及して来るその癖、髪に触れる指先はどこまでも優しかった。くすぐったさと柔らかさがあまりに心地よくて、心が落ち着きすぎて、思わず眠たくなる。
ふわふわと瞼を閉ざしそうになりながら、六花はふわふわと続ける。
「俺は、強くは、ないのか……卵で例えたらどのくらいだ?」
「卵?」
「……半熟くらいか?」
「半熟?」
「いや、せめてもう少し固ゆでに……」
お前は何を言ってるんだ、と友人が呆れている。暗闇でもそれくらいは分かる。
突拍子もない言葉で誤魔化すつもりはない。聞かれる限りは隠さずに答えたいとは思っている。けれど、
(全て打ち明けたら……お前はどう思うんだろう)
泥濘の底に引きずり込まれるままだった『あの頃』のこと。汚く濁った泥に沈められるままにしていたあの頃は、怖いとも思わなかったのに、
(今は)
目の前にいる征一郎がどう思うのか。それが一番怖い。
(……怖い?)
「怖い……?」
胸を満たし、知らず唇から零れた言葉に自分でも戸惑い、六花は身を竦める。
「今更何を聞いても引かねぇのは確かだ」
心中を読んだかのように、征一郎が息を吐いた。手を掴む演奏者の手に力がこもる。髪を撫でていた掌が頬に触れる。
「自分の存在がお前の光となりうるなら、」
生きる希望と定めるのであれば、と征一郎は強い口調で続ける。
「簡単だ。お前がこの手を離さなければいい」
頬に触れていた掌が離れる。その代わり立てた人差し指が唇に触れる。
「だが、自分に聞かれる事で怖いと感じるならそれ以上は言うな」
言うだけ言って自身の言葉に照れたのか、征一郎はまた息を吐いた。唇に触れていた指先を離し、恥ずかしさを紛らわせるように低く付け足す。
「あと鈍いからなてめぇは」
「え?」
「小学生の時にお前に密かに片思いしていた女子が何人かいたぜ」
唐突に小学生時の恋愛話にもつれこまされ、六花は戸惑う。戸惑いながら、鈍いと言われたことに唇を尖らせる。
「俺は鈍くないですー」
そもそも、小学生の頃から女子の片思いの的だったのは己の方ではない。
「一緒にいた征一郎を見てただけだろ? 小学校の時からモテてたもんなぁ」
「自分がモテていたのは中学までだ」
同じ時を過ごした者同士の気の置けない会話に戻りつつ、ふたりはほどなく消える暗闇の箱の中で穏やかに笑い合う。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年02月07日
参加申し込みの期限
2018年02月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年02月14日 11時00分
参加キャラクター一覧
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