this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
in the box
<< もどる
1
…
5
6
7
8
9
つぎへ >>
懐かしい香りがする。
幼かった頃、幼馴染の少女と一緒にクローゼットに隠れたことが夢うつつの脳裏を掠めた。あれは何かのパーティの途中だっただろうか。
――えすけーぷ、なのですよっ
叱られるよ、と言っても彼女は天真爛漫な笑顔を崩さなかった。結い上げた黒髪を悪戯っぽく揺らし、ドレスの膝を抱えて狭くて暗いクローゼットの隙間にしゃがみこんだ。早く早く、と急かされ、仕方なく隣に尻を押し込んだ。
あのときの狭さと暗さに、今いるここはよく似ている。
曲げて抱えた格好の膝の内に、誰かがいる。感触からして、おそらくは小柄な少女だろう。
(……美咲紀?)
あの頃とそんなに変わらない少女の香と体つきをなんとなく感じ取り、心に呟く。そうして、
「ん、……」
八神 修
は冷静に瞼を押し上げる。途端に視界を覆い尽す暗闇に、もう一度瞼を閉ざして幾度か呼吸を繰り返す。膝の間で丸くなっている幼馴染の少女、
椿 美咲紀
の背中を、飼っている猫にするようにそっと撫でる。
健やかすぎる寝息を確かめ、安堵の息をひとつ。手さぐりに頬を探り当て、指先で突いてみる。もそもそと動きはするものの、一向に起きる様子を見せない幼馴染にしばらく首を傾げてから、修はくすりと悪戯っぽい笑みを漏らした。
耳元に口を寄せる。冷徹な声で囁きかける。
「起きろキュウリ、数学のテストだぞ」
「うひゅー」
苦手な数学のテストという言葉と、耳元にふわっと感じた吐息に、美咲紀は奇声をあげて跳ね起きた。周囲を押し包む硬い壁の一枚にしこたま頭をぶつけ、もう一度奇声をあげて頭を抱える。
「だだだ、誰ですかー!?」
真っ暗闇の中で頭を抱え、美咲紀は喚いた。目を覚ましたら知らない男の人と真っ暗で狭い箱の中でした、なんて訳が分からなさすぎる。とはいえ、
(まさか、まさかまさか!)
夢見がちな乙女でもある美咲紀の頭の中、一瞬のうちに薔薇が咲き乱れた。もしかしたら神魂が都合良くいい仕事をして、今いちばんの推しキャラが現実化する箱が顕現したのかもしれない。箱から出るためにはそのキャラと抱き合ったり挙句の果てにはキスとかしたりしなくては出られなかったりするのかもしれない。
頭の中に確固としてある『秘密を話さなくては出られない』という情報は断固として無視する。
「落ち着け、美咲紀」
「……なんだ、シュー君なのです」
聞き覚えのあり過ぎる親友の静かな声を耳にして、あがりすぎていたテンションが一気に下がった。夢が潰えたのだ、声ががっかり気味になってしまったのは勘弁してもらおう。
「BL的な期待でもしたのか」
「違います。違いますが思考を読まないでください」
「当たらずとも遠からず、と言ったところか」
快活に笑い、子犬か仔猫にするようにわしわしと頭を撫でられ、美咲紀はちょっと不貞腐れた。
「乙女は常日頃からときめいているものなのです。夢見がちなのです。そーいう生き物なのですよ」
「そうなのか?」
「そーなのですよ」
至極大真面目に語りながら、美咲紀は手を動かす。正面には修の胸、すぐ背後には壁。左右の壁も両腕を広げられないくらいに狭い。随分窮屈なのは、
「シュー君の長い手足が圧迫感の原因とみました」
真っ暗闇で何も見えないまでも、それは確かだ。
「私は基本的に全身コンパクトに出来て――はいそこ胸も、とか思わなくていいのです」
「思っていないよ」
「この夏の椿美咲紀にご期待くださいなのです」
「そうなのか?」
「そうだと言ったらそーなのですよっ」
胸を大きくする神魂とか、どこかに転がっていないものだろうか。
暗くて狭い箱の中に閉じ込められるという異様な状況にもさして怯えず、真剣に、おそらくは現況とは全く関係のないことを考え始める幼馴染の少女の気配を読み取り、修は思わず笑った。
あり得ぬ状況ではあるものの、普通にあり得ぬフツウなど今まで山のように経験してきている。それに比べれば、危険の見当たらぬ今など大したことはない。それに、
(秘密、ね)
この不思議な箱を出る方法は確実に提示されている。焦ることなど何もない。人に言えない秘密はそれこそ秘密ではあるものの、
(人に言えない秘密でなくとも、秘密は秘密なんだろう?)
であれば、何の問題もない。
「美咲紀」
はーい、とのんびり返事をして、美咲紀は修の膝の間で少し体勢を変えた。向きあう格好から、修の胸に背中を預ける格好になる。
「いい背もたれなのです」
幼馴染の少年の腕の中に収まり、美咲紀は満足した猫のように笑う。
「私のヒミツ、ですね」
少し考えてから、ぱちりと小さく手を合わせる。
「私、雨降ってくるのが空気というか風の匂いで判るのです」
「動物か!」
修からすぐさまツッコミじみた反応を受け、美咲紀はうーんと首を傾げる。
「庭いじり、畑仕事の時にお役立ちですよぉ」
「三半規管とか嗅覚によるものかな」
「低気圧で頭が重くなったりも」
何気なく言ってから気が付いた。
「なんて繊細なのあたしちゃん……!」
「湿度の変化くらいは分かるけどさ」
渾身の呟きをサラリと受け流され、美咲紀は肩を落とす。いつものことと言えばいつものことではあるけれど、たまにはもうちょっと反応が欲しい。
(どういう反応が欲しいのかは自分でも分からないのですが!)
「雨の匂い、しますよね」
「俺は無理だよ」
幼馴染は容赦がない。それが幼馴染の幼馴染たる所以なのかもしれないが。
「衛星画像とか天気図見て予想するよ。空は参考情報としてその補強」
「理系めー。あたしちゃんは自分の特性を組み合わせて短時間局地的予報とかしちゃうんですから」
「じゃあ、これから晴れるかな? 短時間局地的予報のキュウリさん」
頭の上の方から聞こえてくる修の声を耳にしながら、美咲紀は首をもたげる。からかってばかりくる修の胸にぐりぐりと後頭部を押し付ける。
くすくすと笑い、修は美咲紀の肩に両腕を回す。頭ひとつほど低い位置にある美咲紀の頭に顎を乗せる。
狭いところに閉じ込められていると、二人分の熱がこもる。外の世界は五月も半ば、夜は少し冷えるとはいえ寒くはないものの、ここでこうしている分にはこの温もりはどこか心地よい。
「コタツの中みたいだ」
「こたつ?」
美咲紀の頭の上でこくりと顎を上下させてから、修はひとつ秘密を思いつく。
「実は、我が家にはコタツがないんだ」
「無いとは意外なのです」
「コタツ、憧れるなあコタツ。あ、冬ならね」
あと蜜柑、と修は目を細める。
「コタツと言えば蜜柑、……あ。ミカンは小房ごと食べるのが好きだ。オレンジも、レモンも」
「それも秘密ですか?」
「そう、秘密」
狭い暗闇の中、気心知れた幼馴染ふたりは笑い合う。
「樹で完熟したレモンはそんなに酸っぱくないですが、酸っぱいレモンなのです?」
こくり、頭の上で修が頷いている。
「食べちゃうよ」
ほのぼのと話をしながら、ふたりとも気づいていた。ふたりともが『秘密』を口にした今は、もういつでもこの箱から出ることが出来る。それが分かっていて、
「コタツ、良いよな、コタツ」
修は繰り返す。たまにはのんびり、こうして幼馴染と話をするのも悪くはない。それはたぶん、美咲紀も同じなのではないだろうか。
「庶民の家にはあるらしいよな、コタツ。囲んで団欒なんて絶対ぽかぽかするだろ」
しみじみと羨望の声をあげる修に、美咲紀は心底不思議になる。
「買えばいいじゃないですか」
修の家には猫がたくさん飼われている。
「無いなんてアカンですよ」
「いや、俺の家は洋間だから。それに一人暮らしだから」
真面目に言って、大真面目に返されてしまった。美咲紀は更に真面目に返す。
「いっそ和室を作るのです。畳にこたつ。この際システム畳でも……ああでも、障子を猫が破くまでがお約束ですよね……」
それに、と肩に回された修の腕をぱたぱたと叩く。それに、シュー君には友達がたくさんいる。家族みたいな部下もいる。それでは足りないのだろうか。
(確かに、)
八神家当主である修の父も、夫人である母も、息子と共に炬燵で団欒をするような方達ではないけれど。
「ああ、それに蜜柑は猫達が嫌がるな……」
修が唸った。しょんぼりと続ける。
「コタツの上には蜜柑と水羊羹なのになあ……」
「水ようかんは涼菓の代表なのになぜに冬!?」
残念そうな修の呟きのひとつに美咲紀は思わず声を上げた。思わず振り返ろうとして、出来ずに断念する。
「あれは冬の和菓子でもあるぞ」
「えー……」
「福井の冬の風物詩だったか。蜜柑も水羊羹もコタツには欠かせないんだ」
いつか北陸地方に旅をした際、旅籠の炬燵には水羊羹と蜜柑が乗せられていた。雪見窓の外の冬景色と相まって、それは強く印象に残っている。
「熱い緑茶があれば最高、かな」
でも、と修は秘密めかして声をひそめる。
「水羊羹に生クリームでスイーツっぽくして食べるのが割と好きだ。っていうか、甘味全般が好きかな」
「それは何となくわかってました」
美咲紀は訳知り顔で大きく頷く。だって、
(あんな美味しいパンケーキ焼く人は甘味好きに決まっています)
そうなのか、と不思議そうな声で呟いて後、修は何事かを考えて黙り込んだ。
「シュー君」
「キュウリの寮には和室……」
「え?」
「確かにあったな」
修の声が弾んだ。幼馴染ならではな直感で、美咲紀はちょっぴり嫌な予感を覚える。にじにじと逃げようとして、壁に阻まれた。これは言われる。間違いなく、確定事項として言われてしまう。
「お前、コタツ買え」
さあ買えすぐ買え、と美咲紀に迫ったところで目が覚めた。
ベッドに起き上がってひとり、修はくすりと笑う。枕元にあるスマートフォンを手にするなり、幼馴染の少女の番号を呼び出す。
予感があった。
美咲紀はきっと、起きている。
「和カフェ行きましょう」
「和カフェに行かないか」
電話がつながった途端、ふたりはほぼ同時にそれを口にした。
同じ夢を見たことを口にせずとも感じ取り、ふたりは電話口で笑い合う。
「水羊羹はあるだろうか……」
「こたつはもう仕舞われているでしょうねえ」
<< もどる
1
…
5
6
7
8
9
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
in the box
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年02月07日
参加申し込みの期限
2018年02月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年02月14日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!