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腕が痺れている。
痺れた腕を伸ばそうとして、肘が冷たい壁に触れた。僅かに曲がる背をのばしたところで、頭を天井にぶつけた。
うわっ、と小さな声が自分の口から零れて、
柏村 文也
は途端に落ち着きを取り戻した。
(あー、)
いつからか曲がっていた膝を伸ばし、伸ばし切らぬ間に爪先が壁に当たることを確かめる。傍らの壁に指を這わせ、己を閉じ込めるものの形状を探る。
(なんだここ?)
暗くて狭くて、立方体の箱状の妙なナニカの内に閉じ込められているらしい。
(……寝てたよな?)
いつも通りの無愛想な態度で甥っこが就寝の挨拶をしに来たのを覚えている。
――もう寝る。おやすみなさい
わざわざその一言を告げるために部屋を訪ねてきた甥を、お前は相変わらず几帳面だねとからかったことも覚えている。
反抗期を装っているその癖、育ちの良さはいつまでたっても隠し切れずにいるあの少年は、今年中学三年になろうとも、……きっと、いつまでたってもからかい甲斐のある可愛い甥っ子だ。
(……寝てた、よな?)
むくれた顔で自室に引っ込んだ甥をそれ以上は構わず、寝床で横になって本を読んでいたところまでは覚えている。その後、たぶん眠ったことも。
(……神魂とやらの仕業だろうか?)
『落神』、『もれいび』、『ろっこん』、『神魂』。島に起こる異変と、主に島の人々が持つに至った特殊能力のことは、ある程度は把握している。己自身もまた、『もれいび』だ。
(ん、)
暗闇に素早く思案を巡らせていて、ふと気づいた。狭い箱の中、向き合う格好で誰かがいる。
暗闇の向こうに居る誰とも知れぬ相手の出方を伺い、壁に片手を押し付けたまま、身体の動きを止める。相手の気配を探る。
静かな寝息がしばらく聞こえて後、その誰かは目を覚ましたらしかった。己を押し包む闇の深さに息を呑み、声を殺す。動きづらい箱の中で慎重に頭を巡らせ、こちらの気配に気づいてまた息を呑む。
(どうも、知っている相手のような気がするんだが)
(……誰かがいる……)
暗くて狭くて身動きもとれない箱の中、
津島 直治
は喉を上下させる。
いつも通りに叔父に就寝の挨拶をして、不本意ながらいつものように叔父にからかわれて、いつもと同じに枕元に明日の用意をして布団に入ったはずだった。それなのに目を開ければ、叔父の家に用意してもらった自室ではなく、真っ暗闇の中に居た。
(……なんですか、ここ……?)
膝をほとんど突き合わせる格好で向き合っているナニカに誰何しようとして、
(ま、まさかおばけ!?)
隠してはいるものの怪談嫌いな直治は目を瞠った。暗闇にただ沈黙して座している、ナニカ。考えようによってはこれは立派な怪談だ。今に闇の向こうからぬうっと蒼白い手が伸びてくるかもしれない、妙に長い首を伸ばして金色に光る眼のナニカが覗き込んでくるかもしれない。
狭い箱の中、逃げ場もない。
(い、いえそんなおばけだなんてそんな非科学的なものいるわけが)
「おい」
「ひゃぁっ!」
女子のような悲鳴をあげてしまった。それでも怖いものは怖い。後頭部を壁にがんがんぶつけながら尻で後退ろうとしていて、
「そこにいるのナオだろ?」
どこか安堵したような声と共、暗闇に着物の袖に包まれた手がつと伸びてきた。いつも店番している古書喫茶の古本の匂いに気づき、壁にぶつける頭を抑えて庇おうとする掌の感覚に、声に覚えがあることにも気づく。それに、自分をナオと呼ぶひとは限られている。
「……叔父さん?」
「そうそう」
こちらを安心させるような落ち着いた声音で返してから、叔父はいつものようにどこか人を食った笑い声を漏らした。
「……なんだ、怖いのか」
「べ、別に怖がってない」
近くにいるのが知っている人だと、叔父だと知って一安心したことなど、絶対に言うものか。
強がってみせたものの、叔父の笑い声のトーンは変わらない。きっと容易く見破られているのだろう。
「お前のそういう子どもっぽいとこ好きだよ、俺は」
「またそうやってからかう」
からかえばからかっただけの返事をきちんとしてくれる甥の素直さにまた少し笑い、笑うと同時に文也は安心する。傍に居たのが甥で良かったと心底思う。
(……さてどうしたものかね)
それはそれとして、この謎の箱から出るためには、可愛い甥っ子に己が抱えた秘密を告白せねばならないらしい。
「……腑に落ちません」
不満げに呟く直治も、どうやら同じ情報が頭にあるらしい。とはいえそれが神魂というもの、なのだろう。得てして『神さま』という存在は、ひとには図り切れぬ言動をする。今までに読み漁った古書でも、『神さま』はひとからすればどう考えても不可思議な事象を不可思議な理由で起こしていた。
しばらく黙して後、口火を切ったのは叔父が先だった。
「俺、ナオがもれいびだって知っているよ」
「私がもれいび?」
普段は隠している口調を隠すことも忘れ、直治は文也の言葉を繰り返す。驚きのあまりにそれ以上の言葉を忘れ、瞬きを幾度と重ねる。
本土にある実家から、叔父が古書喫茶を営むこの島に来てもう随分経つ。『もれいび』や『らっかみ』のことも薄々知ってはきている。けれど、
「嘘だ」
やっとのことで口にした否定の言葉は、なんだかぼんやり掠れていた。ひとつだけ咳払いをして、直治は叔父の言葉を考える。
(第一、ろっこんとかいう能力を使ったことなんてありません)
首を横に振るばかりの甥の気配に、文也は小さく頷く。そういう反応が返ってくるのは予想がついていた。だから重ねる。
「本当だよ。だってお前に自覚がないの俺のせいだからね」
甥がどんな顔をしているのかは想像がついた。ただただ言葉を失い、驚いている。嘘だ、と言いながら、きっと本当には嘘だとは思えてはいまい。
嘘を吐き、尚且つ嘘を返されれば、己のろっこんは発動する。嘘を吐いた人物のもれいびとしての自覚を奪い、意図的なろっこん発動を不可能とする。己のろっこんを、けれど文也は甥に対してのみ意図的に発動させている。
「具体的には教えないけど」
追い打ちをかけるように、それ以上の追及を断つように、――これ以上驚かせないように、文也は淡く微笑んで付け足した。
(秘密を言わないといけないとはいえ、)
この奇妙な箱の中に自分たちを閉じ込めた『神魂』なるナニカに心中で静かに語り掛ける。
(全部話す必要ないよな?)
直治のろっこんは一年に一度しか発動しない。
――叔父さん! 枕元にサンタさんからのプレゼントがありました!
クリスマスの朝、珍しくパジャマのままで部屋から飛び出してきた甥の胸に大事そうに抱えられた『贈り物』と、最近は滅多と見せない輝くような無邪気な笑顔を思い出して、文也は暗闇にそっと唇の端を上げる。
聖なる夜の贈り物、とでも言えそうなあの能力は、自覚していないほうがいい。特に、この甥っ子は。
「ですが、……そもそも、なんのために……?」
考え考え、直治がもっともな疑問を口にするも、文也はサラリと流す。
「お前にはそのままでいてほしいと思ったから……かな」
またからかわれたとでも思ったのか、甥っ子は暗闇に黙り込んだ。
「叔父さんが何を考えているのか、俺にはよくわかりません」
くすり、叔父は秘密を全て吐き出さぬまままた微笑む。冷たい指先で背後から目隠しをするように囁く。
「このことはすぐに忘れるといいよ」
膝が触れ合うほどに近い距離にいながら、叔父と甥という関係でありながら、叔父の言葉の真意が読み取れず、直治は唇を尖らせる。それが子どもっぽい仕草であることに思い至ってぎゅっと頬を引き締める。
(腑に落ちませんが……)
叔父が秘密を話した以上、自分も何か白状せねばなるまい。でなければ、ここからは決して出られない。訳が分からぬまでも、それだけは確かな理らしい。
「……ええっと……」
思わず視線が揃えた膝に落ちる。膝の上に置いた掌が知らず拳になる。
「私、……」
叔父とふたりきりであるせいか、いつもは隠そうとしている話し方がうっかりと口をついて出てしまう。直治は一度きつく瞼を閉ざした。歯を食いしばる。ともすれば口にしてしまう実家で身についた話し方を噛み殺す。
「……俺、」
本土にある実家で、自分をそう自称したことはない。したとしても、すぐに叱られ訂正させられただろう。
「俺、家に帰りたくない。ずっと寝子島にいたい」
わがままだろうか。そう思ってしまうのは、口にしてしまうのは、電話口でふと零した際に家族から戒められた『つまらないわがまま』なのだろうか。
――直治さん
電話口で声を潜める母の顔が瞼の裏に容易く浮かんだ。決して強くは言わないけれど、きっと母は哀しい顔をしていたのだろう。
「津島の家が嫌い……です」
母の顔を想像してしまった途端、腹の底でもやもやとしていた気持ちが凍りつくようにかたちを帯びた。言葉となって口をついてでてきてしまった。
ずっと考えるまいとしてきた。だって考えてしまえば、辿りつく場所は明らかだった。
家族は好きだけど、あの家は嫌い。
(しきたりとか、しがらみとか)
あの家の中に漂う空気を思い出しただけで、締め付けれるように胸が苦しくなった。ともすれば詰まってしまいそうな息を、苦しい吐息にしてどうにか押し出す。
こうしないといけない、ああしないとだめ、――ずっと、そう言われて育って来た。そうしなくてはならないのだと思って、思い込もうとして生きて来た。
(でも、……)
ある日、それが嫌になった。あの家の空気を吸って生きるのに嫌気がさして、だから叔父を頼りにこの島に来た。逃げて来た。
暗闇に叔父の顔を見ようとする。みっともないと叔父は笑うだろうか。
「ナオ」
こちらに向けられた叔父の声は笑ってはいなかった。こちらの秘密に驚いているようにも見受けられなかった。
もしかすると、なんとなく気取られていたのかもしれない。そう思うと、冷えた頬に熱が上った。また何かからかわれるかもしれない、そう思ったのに、叔父はそっと優しい息を吐くばかり。
「ナオは俺みたいになるなよ?」
やっぱり、俺とお前は似ているな。
そう、言われた気がした。
――そう、でしょうか
そう問うた気がする。
――違うところもあるけど
そう応じられた気がする。
「叔父さん」
呼んで、その自分の声で目が覚めた。
最早見慣れた叔父の家の天井をしばらく眺めてから、直治は身を起こす。
(あれは夢だったんでしょうか……?)
カーテンの向こうにまだ残る夜の名残を視界の端に捉えながら、布団から抜け出す。寝ぼけ眼のまま部屋から廊下へ出たところで、
「おはよう」
偶然なのかそうではないのか、廊下に出ていた叔父に声を掛けられた。
「叔父さん……あの……」
「変な夢でもみたか?」
挨拶も忘れて問おうとして、
「俺は何にも覚えてないが」
穏やかな叔父の笑みに言葉を封じられてしまった。
(そう、……ですよね)
「いや、別に……」
叔父の言葉は嘘であるのかもしれない。そう思いながら、直治は首を横に振る。
「俺も、何も見てないよ」
叔父の言葉に嘘を返して、お互いに嘘を吐いているのかもしれないと思って――その刹那、己がもれいびであるという自覚を直治は忘れた。
ふと。叔父が微笑んだ、そんな気がした。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
箱の中の物語、お届けに上がりました。
狭くて暗い箱の中、ぎゅぎゅーっと詰め込まれてのお話、とても楽しく書かせていただきました。
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました!
あなたの物語をあなたらしく描けておりましたら幸いです。
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
カベニ ナレテ ヨカッタ……(鼻血ダイイングメッセージ)
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年02月07日
参加申し込みの期限
2018年02月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年02月14日 11時00分
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