深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会｜リアクション

深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会

　ハロウィンのようなコミカルなかぼちゃ頭が弾んでいる。こんな愉快な姿だが、順位的には上位のほうだ。短めのマントに白いブラウス、黒いかぼちゃパンツという装いの七音侑は、携帯を片手に、器用に他の者の仮装を撮影しながら走っている。

「にははー！　ぜんぜん眠くなーい！　楽しーい！」
夜中にみんなで、思い思いの仮装で走る。お祭り騒ぎが現実のものとなるこのイベントを、侑は心の底から楽しんでいた。
「あの人の、かっこいい！　あっ、あっちのはすごくかわいいー！　みんな写メるに♪」
侑のアルバムは、あっという間に仮装したランナーたちで埋まっていく。よく見れば観客やスタッフにも粋なコスプレをしている者がいた。侑はその姿も逃さない。
「うにに！　あのアルパカさん、速いー！」

侑の目に、薄野五月の『アルパカ仮面』が飛び込んできた。女子制服からにょっきりと生えたふわもこの獣の頭というギャップに惹かれ、侑は五月に接近する。
「こんばんはー！　写真取らせてほしいんだにー！　とってもかわいいアルパカさんだから！」
「あ、はい。どうぞ」
「ありがとうにー♪」
並走しながら五月の仮装を撮影する。手ブレも少なく、見事な腕前だ。
「そちらはカボチャ仮面ですか？　よくお似合いです」
「えへ、ウチのもかわいいでしょ。パパがデザインしてくれたんだー。ちょっと頭が大きすぎる気がするけどね！」
確かに、走るたびに侑の頭を覆うカボチャは危なっかしく跳ねている。隣の五月のアルパカ仮面も、首が長く重心が上過ぎるためにぐらぐらとしていた。
「えと、そちらさんは……」
制服のリボンの色から、同学年とわかる。ひょっとしたら顔見知りかもしれないと、侑は尋ねてみた。
「アルパカ仮面です」
間髪いれず五月が返す。
「うにに、でも、その制服とリボン、ウチとおんなじ……」
「私はアルパカ仮面です」
「わ、わかったんだにー……」
五月と優は、互いに大きすぎるぐらぐらする頭という共通点を持ったまま、クエスト地点までしばし旅路を共にするのだった。