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丘の上に波が爆ぜる。
積み上がった瓦礫を弾き飛ばし、先に集まっていた人々を吹き飛ばし、
「……ッ!?」
崩れた石段を登りつめようとしていた能美子の身を殴りつける。集めて来た蒼い鱗が制服のポケットや手から零れ落ちるのに気を取られた瞬間、波に煽られ飛んできた瓦礫の欠片が額を掠めた。掠めただけでも身体が傾ぐほどの衝撃に襲われ、能美子はその場に必死に踏ん張る。掴んだ何枚かの蒼鱗だけでも離すまいと指先に力を籠める。
額を伝い落ちた血が視界を赤く染める。それでも黒い眼を開き、能美子はかつて神殿があった場所で耳をつんざく咆哮をあげる蛟を見る。
「ねえ、……」
指先に掴んでいた幾許かの鱗が、まるで命を得たようにもがき、水中に躍り出る。他の人々が集めて来たらしい鱗と共に一筋の流れとなるのを視界の端に捕えながら、能美子は苦しい胸を抑えた。
「ねえ、覚えてる!? 貴方が硝子細工をくれた相手よ、私は」
人のいない町を一緒に歩いた。過去の遺物から人々の記憶を読み取るろっこんを持つ自分を、それが良いことなのか悪いことなのか迷う自分を、何でもないことのように笑い飛ばしてくれた。
今、己の胸にはこの町にかつて生きていた人々の思いがある。町を駆けまわりアレスの鱗を集めるその最中、町に散らばる幾つも幾つもの遺物を胸に抱き上げてきた。そこに宿る思いを読み取って来た。
「お願い、ユニ、あの町にはまだ人の思いが残っている」
破れて散らばり最早判読もかなわぬ日記には何気ない日々を愛する女性の思いが、
宝石の砕けた髪飾りにはそれを贈ってくれた恋人への想いが、
砕けた陶器には毎朝お茶を淹れてくれる家族に対する思いが、
――どんな些細な物にも、かつてこの町に住みこの町を愛した人々の思いが宿っていた。
だから、と能美子は悼む。今ここに居ない人々を悼み、想う。それを己ごと潰そうとしている少年に重ねて乞う。
「お願い、それを捨てたりしないで!」
ポケットの底を探る。集めに集めた町の人々の記憶を余さず捧げるように、僅かに残っていた鱗を一枚残さず差し出す。
蒼い鱗が能美子の白い指先を離れ、柔らかな花びらの如く水中に舞い上がる。
シャラシャラと涼やかな音たてて一筋の蒼い流れとなる鱗を追った能美子が見たのは、
「やあユニ君」
白く長い髪を悠揚と揺らし魔女じみて水中に浮かぶ月詠の背中。
「私が見えるかね? 声が聞こえるかね?」
穏やかな声で笑いながら、月詠はひびの入った結界を視界の端に捉える。誰かのろっこんによって一度は塞がれた『水』は、けれど再び頭上高くからゆるゆると垂れ落ちて来ようとしている。
(ひとを溶かす水、か)
「話が聞けるまで待ってあげる時間がいるかね?」
断末魔のような咆哮を上げ続ける蛟に、殊更にのんびりと話しかける。声が聞こえているかいないのか分からずとも、それでも笑う。
「とても愚かな提案があるのだがどうだろう」
おどけた調子で肩をすくめる。集めに集めた蒼い鱗をそれぞれに差し出す寝子島の人々を蛟の周囲に見る。
「ユニ君」
今にも泣きだしそうな顔で、けれど決して泣かない強い瞳して、若菜が立っている。
「ユニくん!」
今にも泳ぎ上がって蛇身に飛びつき、下手をすれば咆哮する顎の中へも飛び込んで行きそうなほど一生懸命な瞳で智瑜が叫ぶ。
蛟は慟哭を止めない。墜落したときに砕けたあちこちの鱗の隙間から赤い血を溢れさせ哭き続けるそのさまは、子供がうち伏して悲しく叫喚し続けているかのよう。
「……ユニくん」
つられて悲しくなって、智瑜は瓦礫を踏んで進み出る。どれだけ呼んでも声が届かぬのならば、本当に食べられてみよう。
(だって口の中の方が頭に近いから)
きっと声も届きやすいはず。
水を震わせ近付くものを押し流そうとするほどの声量に知らず震える足を掌で叩き、智瑜はまっすぐにユニを見つめる。
自身の願いにより、ろっこんを意識的に発動させる。
「ユニくんの想いを教えて」
今の彼の、本当の想いを知りたかった。本当の願いを知りたかった。
悲しいばかりの咆哮の裏には、死にたいと願う暴走の裏には、きっと希望があるはずと智瑜は信じる。それが叶えられないからこその絶望なのだと。
絶望と痛みに埋め尽くされた蒼い瞳の、その奥――
青が、見えた。
今自分たちを押し包み閉ざす水の蒼ではなく、どこまでも明るく透き通り、どこまでも落ちてゆけそうな、どこまでも昇ってゆけそうな、青。
その青が何の青なのか、智瑜が思い至るよりその先、ユニが鎌首をもたげた。嫌々をするように頭を激しく振る。足元に立つ智瑜も若菜も、水中に浮かぶ月詠も、誰も彼もを遠ざけようとするかのように再び暴れる。
「ユニくん……!」
蛇身が起こす波に皆が巻き込まれそうになった、その刹那。
哀しく濁る蛟の咆哮さえ包み込んで、高く澄んだ歌声が響き渡った。生きとし生きるすべてのものへの慈悲を優しく謳うそれは、異国の子守唄。
「……あ、あれ?」
襲い来る衝撃に身を固め塞いでいた目を、智瑜は恐る恐る開く。己の周囲には間違いなく荒れ狂う波が巻き起こっているはずなのに、重そうな瓦礫さえ水中に押し上げられているのに、自分の周囲は風ひとつない。自分の身を傷つけるものはひとつもない。
見えるか見えないかの半透明の障壁に、守られている。
自分だけではなく、能美子や若菜、月詠も同じ力に守られていることを確かめ、智瑜は安堵の息を吐く。見回せば、積み上がった瓦礫の天辺、赤銅色した髪の少年が凛と立っていた。
榛の瞳にその場に集った人々を映し、少年は高く低く歌う。歌い続けることで守りたい人の周囲に障壁を作り出す。
集めては胸に抱いてきた蒼い鱗を水中に放ち、歌声を朗々と放ち、悠月は吼える蛟を見つめる。
視界の全てに捉えた守るべき人々を力の限りろっこんで守りながら、
(落ち着け)
見境失くして皆を傷つけようとする少年に届くように歌う。滅びを迎えた町中に響かせるように歌う。
蛟の姿した少年に、誰かを傷つけさせたくなかった。いくら正気でなかったとしても、傷つけてしまった人を前に素直になることは難しかろう。
だから悠月は歌い続ける。せめて己の瞳に映せる人々だけでも護るために。
(青)
悠月の声に、智瑜はユニの想いの中に見た青の色を想う。どこまでも透き通って青い、その色。
(青い、……空)
光に満ちた青空を想わせる少年の歌声に、智瑜は声を合わせる。異国の言葉は分からないけれど、旋律は知っていた。小さい頃、こちらの言葉で歌ってくれたひとがいる。覚えて一緒に口ずさめば、嬉しそうに笑ってくれたひとがいる。
(この世界の子守歌とは違うかもしれないけど)
青空の声して歌う彼のように、誰かを護る力にはできないけれど。
(ユニくん……!)
少年と少女の、言葉は違いながらも同じ子守唄を耳にしながら、月詠は片手に握りしめていた一枚の紙を開く。根気強く、ユニに語り掛ける。
「私達は、君の話相手になりたい」
魚座のマークを描いたその紙を思い切りよく破る。
途端、紙の内に封印されていた蒼い鱗が溢れだした。皆が集め、ユニを想って此処に放ち、水中に一筋の水流のかたちして舞っていた数え切れぬほどの蒼い鱗が瞬きの間に収束する。老いた大蛟の姿となる。
シャラシャラと鱗が鳴る。アレス翁の正体である大蛟は、彼からしてみればまだまだ幼く小さな蛟の傍へと近づき、抱きしめるように身を寄せた。語り掛けるように頭に頭を寄せた。
ユニの慟哭が消える。
それと同時、大蛟は水の空へと躍り上がった。大蛟のかたちが崩れる。水流のかたちして、町へ垂れ落ちようとしている『水』を結界の外へと押し出す。町を護る結界に走った亀裂へ隙間なく貼りつき、『水』の侵入を防ぐ。
「ユニ君」
ユニの心が戻っているのかいないのかも確かめぬ間に、月詠は微塵の躊躇いもなくユニの頭にまで泳ぐ。顎を開けば即時食いつかれることすら構わぬ動きで両腕を広げ、振り落とされぬようしっかりと蛇身の頭に抱き着く。蛟からしてみれば小さな小さな手で、撫でる。
「大丈夫大丈夫」
そっと囁きかける。
(どうしたらいいのかわからないだけだ)
突如として得た力の使い方も分からない上、周囲には力の使い方を教えてくれる者も誰も居ない。寂しくて、悲しくて当然というもの。
(落ち着くまでは傍にいてあげよう)
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担当ゲームマスター
阿瀬春
前回シナリオ
水底の廃墟
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年12月15日
参加申し込みの期限
2017年12月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年12月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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