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暴風にも似た波が渦巻く。
「きゃ……」
「おっと」
波に揉まれ、吹き飛ばされそうになる冴来の細い手を掴んで引き寄せ、白露は青い瞳を丘の上へと向けた。
「子供が自暴自棄になってる……ってことでいいのかな?」
この世界に来たのは初めてだった。大暴れに暴れている子供の事情も、詳しくは知らない。けれど、
(宥めてみようかな)
気まぐれのように思い、足元に転がる蒼い鱗を手に取る。幾許か集めたそれを狩衣の袂に放り込む。
(痛いのは嫌だけど、ろっこんで自分の怪我は祓えるし)
近づいて落ち着くまで話しかけるのが、結局のところ最善手であるのかもしれない。
(話を聞いて、声をかけて、そばにいてあげる)
どんな存在が抱えた問題であるにせよ、それが一番の解決への道なのだと職を陰陽師とする青年は信じる。
「白露さん」
「大丈夫だったかい?」
壊れ物のように大切に抱え込んだ少女を解放し、周囲に視線を巡らせる。
集めた蒼い鱗を袂の中でシャラシャラと鈴のように鳴らしながら見回したその先の町の空、瓦礫の欠片で形作られた矢印を見つけ、白露は淡く微笑む。修が言っていた『合図』なのだろう。
矢印に従い町を駆ければ、丘の上に真直ぐ伸びる白い石段に行きついた。半ばから瓦礫の山と化した石段の先、畏怖さえ覚えかねぬほど巨大な大蛟のもとへ真直ぐに向かう修と美咲紀の姿がある。
「僕たちも行こう」
「ええ」
暴風じみて吹き荒れていた波がふと収まった。
「……と」
石造りの家々さえ崩す地揺れも失せたことに気づき、白露は青い瞳をもたげた。
「ああ……」
見れば、その気になって伸びあがってしまえば水の空のその先にも届きそうだった大蛟の巨躯が少しずつ縮もうとしている。
「今なら」
追いついたふたりを見止めて言った修の言葉に頷き、白露は冴来の手を引いて駆けだす。縮もうとしているとはいえ、それでも大蛟は大蛟。再び暴れ出してしまえば手を付けられないことに変わりはない。
(覚悟が必要だ)
どこか呆然として見える大蛟を見据え、修は眦を決する。
彼の孤独は絶望と同義。であるのならば、掴んだ手を決して離さず、彼と心中する覚悟が要る。
表面的な同情が無関心と同等の刃でしかないことを修は知っている。
それと同様に、帰属世界を滅びる体験をしたことのない自分たちが彼の気持ちを本当には実感出来ないだろうということも。
(けれど、このままには出来ないよ)
孤独を知る少年は、世界にただひとり残されようとしている幼い子供を見つめる。
「シュー君」
隣を走る修の横顔に酷く寂しいような表情を見た気がして、美咲紀は瞬いた。何でもないよと微笑む修の言葉を今は信じて、ユニへと視線を伸ばす。
美咲紀が思うのは、ユニを助けたその先。
(ユニ君自身が未来を求めてくれないと)
その先を生きて行くのはきっと難しい。
孤独に怯える子供に孤独ではないと知らせることも、きっと自分たちだけでは難しい。
(あの子の心の殻を破るだけの絶対的な信頼が必要だもの)
それはきっと、一番長く傍にいたアレス翁に違いない。
そのアレス翁に頼まれた通り、集められるだけの蒼い鱗を集めて来た。この鱗がどんな役割を果たすのか、今はまだ分からないけれど、
――尽力しよう
アレスの欠片であるところの小魚の言葉を美咲紀は信じる。アレス翁の鱗は、暴走状態にあるユニの注意を惹きつける存在にきっと成り得る。
足取りを遮る瓦礫の山を越え、時に水中に泳ぎ上がって避け、元は数十本もの白柱に支えられた巨獣の神殿に辿りつく。
壮麗だった神殿の見る影もなく押し潰された姿に、美咲紀は黒い瞳を歪める。
元の大きさより大分小さくはなったものの、それでもとぐろを巻き鎌首をもたげる蛟は見上げるほどに大きい。
「怖い事をするつもりは何もないわ」
集めた蒼い鱗を掌の中から零しながら、冴来はまるで生贄の巫女のように蛟へと歩み寄る。
「どうか落ち着いて。一緒にいるから」
縮む身に途方に暮れるが如く動きを止めていた蛟が身じろぎする。
聞かぬ声を耳にしてか、ザラザラと鱗を鳴らし首を傾げる仕草を見せる。未だ混乱気味の蒼い瞳に警戒の色を灯し、威嚇の声をあげる。顎を開き、呑みこもうとするような仕草さえ見せる。
それだけでは足りず、鞭じみた尻尾を振り上げる。躊躇うことなく振り下ろす。
「花風!」
咄嗟に飛び出した修の身ごと、華奢な少女の身が打ち据えられる。ふたり揃って吹き飛ばされ、人形のように転がる。
「シュー君!」
悲鳴を上げる美咲紀に大丈夫だと片手を挙げ、修は石の上に叩きつけられ痛む身を起こした。
「花風」
「……いいの」
血の色に汚れた金の髪を乱し、冴来はよろめきながら立ち上がる。
「何処に行ってもずっと独りぼっちだと思うと、辛くて悲しくて、死んでしまいたくなるわよね……」
泉の色の瞳が悲しく歪む。
死を選ぼうとする思いが間違いだとは思えなかった。悪いことだとは決して言えなかった。
(分かるもの)
冴来自身がそうだった。立ち塞がる孤独に怯え混乱し、うずくまってしまう。死んでしまえば楽になれる、孤独を感じずに済む、そう思ってしまう。
「だけど、……だけど、少し待って欲しいの」
蛟に身を捧げるように冴来は両手を差し伸べる。
少女の周囲、蒼い鱗の一枚一枚が意志持つ魚のようにゆらゆらと揺らめき動き始める。
「貴方が思っているよりも、世界はきっと、ずっと優しい」
(少なくとも、貴方には)
視線を巡らせなくとも分かる。水の空にも、水底の町のあちこちにも、彼を助けようと今も奔走している人々が居る。
「貴方は今も独りじゃない。貴方のその身に宿った力は巨獣から齎されたものなのでしょう?」
なら、と冴来は言葉を紡ぐ。
「その力は、巨獣の想いそのもの。貴方の巨獣は、今も貴方と一緒にいるの」
蛟の蒼い瞳が揺らぐ。近づくなと言いたげに牙を剥き、じりりと後退る。剣呑に細くなる蛟の瞳に、今にも攻撃にかかりそうな気配を読み取り、白露が冴来の前に立った。緩く手を広げる。冴来を庇い、蛟に手を差し伸べる。
「話をしよう。僕たちは君を助けに来たんだ」
どこまでも明るく柔らかく微笑む。
「でも、……」
笑みを絶やさないその癖、――否、絶やさないが故に感情の読めぬ顔で、陰陽師姿の青年は自分たちに続いて丘の上へ辿りついた人々を振り返る。
「ユニさん!」
必死の声で蛟の名を呼ぶ銀の髪に青い瞳の少女を見遣り、傷ついた冴来の肩をそっと抱く。
「彼女たちの方が適任かな」
呟き、冴来の背を翅のように軽く叩く。よくがんばったね、と白露から言葉を掛けられ、冴来は蛟を見つめたままぺたりとその場に座り込んだ。
「ここに居させて」
「いいよ」
蛟が再び暴れ出せば攻撃を受けかねない位置に、冴来と白露、修と椿は立ち続ける。
「ユニさん、落ち着いて、話を、しましょう!」
ここまで駆けて来て切れ切れになった息を整える余裕もなく、璃亜は蛟の前に立つ。伸ばしても伸ばしても届かぬ蛟の頭へと伸ばす手から、此処に至るまで集め続けて来た蒼い鱗がひらひらと零れて落ちた。
「ユニ」
竹刀を片手、遥斗が駆けてくる。返事があるまで呼びかけ続けようとする不屈の意志を籠め、少年の名を呼ぶ。
シャラシャラと蒼い鱗が宙に舞う。
ザラザラと、ユニを鎧い蛟のかたちに閉ざす蒼い鱗が鳴る。
「君、は――」
押し潰した神殿の上にとぐろを巻く蛟に向け、月は緋色の瞳を向ける。
(君は、どうだったんだろう?)
満たされたものが多いほど、それがなくなったときに辛く感じる。少なくとも、己がそうだった。立っていられなくなるほどの悲しさと寂しさに圧倒され、潰された。
(悲しくて悲しくて、それでこれだけ暴れたんだ)
「此処は、『町を護る巨獣』は、君にとってとても掛け替えのない大切なものだったんだろう?」
だからこそ、と月は訴えかける。
「満たされた時の思い出があるのなら、それを傷つけるような事はしちゃ駄目だ……とても大切だったんだろう?」
蛟の蒼い眼が月を見る。己が泣き喚いて破壊し足蹴にした神殿を見る。その半ばが瓦礫の山と化した町を見る。
『町を護る巨獣』から受け継いだ力で以て、――アレスの想い宿した力で以て見る影もなく無惨に壊した、本来ならば己が護るべき町。護るべきだった、今はもう誰も居ない水底の町。壊してしまえば修復できるはずもない、大切だった場所。
『う、あ、……』
蛟の顎から、幼い少年の声が零れ落ちた。
『あ、ぁあ、うあ、ぅあぁあああぁああッッ!』
絶叫となる。『町を護る巨獣』でありながら守るべき町を破壊した巨獣の瞳に狂気にも似た光が灯る。
「ユニさん! ユニさんっ……!」
蛇身を仰け反らせるユニに、その顎にかかることも顧みぬ動きで璃亜が駆け寄ろうとする。
蛟が咆哮する。牙を剥く。己を助けようと手を伸ばす少女の折れそうに細い身を鱗に覆われた頭で打ち据え吹き飛ばす。
「ッ……!」
瓦礫の山に叩きつけられた痛みに声さえ上げられず悶絶しながら、それでも璃亜は眩暈に揺らぐ視界の中で懸命に手を伸ばす。
諦めたくなかった。だって今、この場に呼ばれたのだ。ここに呼んだのがアレスなのかユニなのか、それはもうどちらでも良い。呼ばれたのであれば、助けてと求められたのであれば、どうにかしてあげたかった。そのためにはどれだけだって足掻こう。足掻いて足掻いて、足掻き続けよう。
「ユニさん! お願い、何だってしますから――!」
絶望に呑まれたユニが町を護る結界までも破ってしまえば、かつて町の住人を、世界中の命を全て『溶かした』水が流れ込んでくる。その前に、どうにかして落ち着かせなくてはならない。
それなのに、痛む身体は言うことをきかない。起き上がろうと地面についた手が血で滑る。
「ユニさん! ユニさん!」
声の限りに叫ぶ璃亜の歪む視界の中、蛇身が伸びあがる。元より半分には縮んだはずのその身が発条のように跳ねる。蒼い矢の如く水中高く跳んだ『町を護る巨獣』は、その一跳びだけで町の空を半円に覆う透明な『結界』を打ち砕いた。
空に走るヒビを、遥斗は確かに見た。そこからどろりと流れ込む、薄赤い色帯びた青いナニカを。
竹刀を構え、両手で強く握る。黒い瞳に強い意志滾らせ、
「――ッ!」
剣士は裂帛の気合いで竹刀を振り下ろす。
ろっこんが発動する。巻き起こった一瞬の豪風が水の空に吹き上がる。落ちてくるユニの蛇身を掠め、見えぬ結界に轟音たてて烈しくぶつかる。侵入してこようとする粘性帯びた『水』を押し戻す。
神殿の上、ユニが墜落する。衝撃に瓦礫が吹き飛ぶ。
防御の姿勢に竹刀を構えた遥斗をも、その場に居合わせた人々をも吹き飛ばして尚、『町を護る巨獣』は血に塗れた蛇身をのたくらせ続ける。慟哭に似た咆哮を撒き散らし続ける。
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グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年12月15日
参加申し込みの期限
2017年12月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年12月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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