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『somnium』へようこそ!
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メニューを見つめ、真央はしばし沈黙を守っていた。彼女が沈黙しているのは、実は結構珍しい事なのだが、もちろんそんな事は伊都子夫人には判らない。
書かれているのは幾つかの定番メニューと、後は夫人が毎日手書きしている日替わりメニュー。今は、夏みかんを使ったフェア限定のケーキが主だ。
真央が見つめているのは、その、夏みかんのケーキだった。夫人の田舎から送ってきた夏みかんを使っているせいもあって、まさにこの季節しか提供されない限定メニュー。
それらを見つめて真央はぽつり、深刻に呟いた。
「……この世には一期一会と言う言葉があるのだ」
「ええ、ありますわね」
おっとりと頷く伊都子夫人は、そんな真央の様子にも特に動じていない様である。さすがは年の功と言うべきなのか、或いはこうして店をやっていれば、そんな客も珍しくないのかも知れない。
ぐっと開いていたメニューを握り締め(端がちょっと寄れてしまった)、真央は思いを巡らせた。この世は須らく一期一会、この出会いは生涯に1回しかないのである。次に来た時に、なんて言っていても、次にはまったく別のメニューに変わっているかも知れないし、そもそも次があるかも判らない。
ならば。
「出会った以上、チャレンジせねばならぬのだ! おばちゃん、夏みかんフェアの商品全部なのだ!」
「あら、おばちゃんなんて、若く見て下さって嬉しい事。商品を全部ですね、今は何がご用意出来たかしら。お飲み物は如何?」
力強く、声も高らかに宣言した真央に、やっぱりおっとりと頷いた伊都子夫人は、にこにこ笑って嬉しそうにケーキケースへと戻って行く。そんなやり取りを、すぐ隣の席で聞いていた待雪は「すごいなぁ」と感心した。
夏みかんのお菓子やケーキは、確かにどれもこれも美味しそうだから、一体どれにしようか迷ってしまう。その日の材料で作るものが変わるのだと、聞けば尚更どれがいいかと迷ってしまって、なかなか決められなかったのだ。
すごいねと、向かいに座る美桜に話を振る。
「全部、だって。鬼久保さん、もっと頼む?」
「ん……いい、ジュレ美味しい」
そうして尋ねた待雪に、美桜は少し考えた後、ふる、と首を横に振った。その言葉が嘘ではない証拠に、美桜の前にあるガラスの器に入ったジュレは、もう半分ほどがなくなって居る。
よかったと、微笑み待雪は夏みかんのジュースを一口、飲んだ。そもそもは雑貨が目的でやってきたのだけれども、せっかくだからお茶でも、と誘ったのはこの、絞りたての夏みかんジュースが気になったからでも、あって。
夏みかん色の液体が揺れる、ガラスのコップはよく見るとうっすら模様が彫り込んであって、何だかお洒落だ。お洒落には詳しくない待雪だけれども、良いな、と感じてちょっと嬉しくなってしまう。
「鬼久保さんのカップも、何か良い、よね。全部一緒、じゃなくて……全部、何か、良い感じで」
「ん、カップ……有名な所のもあるし、有名じゃないけどいいのもあるね……」
そんな待雪の言葉に、美桜は自らの手の中のカップを見て、それから周りのテーブルを見回し、こくり、と頷いた。実家にも色々な骨董品はあったから、そこそこ審美眼はある美桜だ。
『somnium』で並ぶ食器やグラスは、価値のあるブランド物から、探せばその辺の雑貨屋で売ってそうな物まで。もしかしたら、手作りの物だって混ざって居るかも知れない。
そういったものを気負いなく、当たり前に実用品として、お客様の前に出す。そうして待雪や美桜を含む、お客様が美味しそうに食べるのをただ、嬉しそうに見て居るだけ。
そんな店主夫婦に、待雪が目を細めて、言った。
「お店の人。お年寄りだけど、こうやって好きなことをできて、嬉しそう。あんな風に幸せそうなのって、やっぱりいいよな」
「ずっと、好きな事できると……幸せだとおもう」
こくり、美桜も頷きを返して店主の老夫婦を見る。彼らの気持ちが何となく、美桜にも判るような気がした。
寝子島に居れば自由に、好きな事をしていられる。それは幸せな、幸せな事だ。どんなに豊かに物を与えられても、たった一つ、自由がなければ途端に世界は牢獄に塗り変わる。
だから美桜は、自由で居られる寝子島が、好きで。きっと夫妻もそんな気持ちなんじゃないかと、思って。
そんな風に、考えてはまたジュレを口に運ぶ美桜達を、月詠は様々の色鉛筆を使いながらスケッチした。彼らだけではない、月詠の目の前にあるケーキもだし、カップやお皿もスケッチしたし、店内の様子だって、心惹かれたものは息をするようにスケッチをしている。
どんなものだろうとも、すべてが芸術になるのだと、月詠は思っていた。カップにシルバーを沿える、ちょっとした色合いや角度。ティーポットにお湯を注ぐ動作。ポットの中で踊る茶葉。ケーキに添えたクリームの色や形。焼き菓子の微細な色合い――
ぱくり、クリームをたっぷり載せたシフォンケーキを口に入れる。蕩けるような舌触り、幾つもの甘みが絡み合って1つの調和を生み出す様。紅茶を1口含むと、豊かな香りが広がってケーキの味を引き立て、けれども自ら主張はしない。
そんな味わいもまた、芸術的。それらに舌鼓を打ち、嬉しそうに、幸せそうに、満足そうに微笑む人々の笑顔もまた輝いて見えるし、雑貨を見ながら顔を輝かせる人々の笑顔も素晴らしい。
ゆえに月詠はスイーツを存分に味わいながら、スケッチを重ねる。柔らかな店内の空気に合わせて、柔らかな、暖色のポップでファンシーな絵柄で。けれどもどこか中世的で、ふわりと妖精でも飛んで居そうな雰囲気で――
そうして色鉛筆を走らせる、クラスメイトをちらりと見ていた能美子に気がついて、葵が「おやー?」と声を上げた。
「弘明寺くんも絵を描くのかなー?」
「え!? ぇ、ええ……私は芸術科だから。あ、貴方は……?」
「私は普通科なんだよー。絵が上手なのかなー、うらやましいんだよー」
「げ、芸術科だもの。その、三ヶ島さんは同じ高校の人、なのよね。クラスは……?」
葵の言葉に、半ば必死に能美子はそう言葉を返す。端から見ればさぞかし、ぎこちなく見えるのだろう、という自覚はあったけれども。
そんな能美子に葵は頷いたり、時には感心したり、こちらから話しかけてみたりする。新聞部としての習性というよりは、せっかく相席になったのも何かの縁、どうせなら楽しく過ごせた方が良いだろう――と思うのだ。
けれども実際、能美子と話すのは楽しかった。彼女は案外博識で、葵の知らない色々な知識を教えてくれるのだ。
「このケーキはフルーツに酸味がある分、スポンジを甘めにしてバランスを取っているんだと思うわ。でも、ただ甘くしても酸味が立つから、作った人のバランスが良いんだと……」
「なるほどー。夏みかんとなると、タルトとかも美味しそうだねー」
「そうね。タルトは実は型が一番難しい、って知り合いから聞いたことあるけど……そうそう、この時期はダージリンのセカンドフラッシュの時期で、アイスティーが美味しいのよ」
「ふー……そうなんだねー。紅茶とかも知ってるなんてすごいよー。私はあんまり詳しくないからねー……」
能美子の言葉に、葵はついに感嘆の息を吐いて天を仰いだ。それに「そ、そんなことないわよ……ッ」とちょっと顔を赤くして焦る能美子からは、普段のツンドラぶりは想像も出来ない。
何しろ能美子は必死に、とりあえず思いつくままに喋っていただけで。何とか、葵とコミュニケーションしようと頑張っていただけで――
(ふむ)
そんな様子を、今度は逆に見ていた月詠が、スケッチブックに2人の姿も描き留める。けれどももちろん必死の能美子も、葵も気づくはずはなく、互いに手探りで、けれども楽しく言葉を重ねていたのだった。
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担当ゲームマスター
蓮華・水無月
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
30人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2013年06月10日
参加申し込みの期限
2013年06月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2013年06月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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